ブランド化による競争力の強化で、TPPで急増する輸入食肉との棲み分けを計れ
農林水産省試算 TPPで壊滅する畜産業者
TPP(環太平洋経済連携協定)は、アメリカ、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイの計11カ国が、全貿易品目の関税ゼロと各種非関税障壁の撤廃を目指して交渉している。
このうち、精肉が扱う輸入国としては、牛肉では「アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド」。豚肉では「アメリカ、カナダ、チリ」。鶏肉は「アメリカ」が主な対象である。とりわけ、牛肉に関しては中でも「アメリカ、オーストラリア」からの輸入がポイントとなる。
農林水産省が国境措置撤廃による農産物等への影響試算について(品目別)生産量減少率と生産減少額をまとめている。
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/renkei/fta_kanren/pdf/19_hinmoku.pdf
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生産量減少率(%) |
生産減少額(億円) |
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牛肉 |
75 |
4500 |
4等級及び5等級は残り、3等級以下は置き換わる |
豚肉 |
70 |
4600 |
銘柄豚は残り、その他は置き換わる。 |
鶏肉 |
20 |
1900 |
業務・加工用の1/2が置き換わる。 |
鶏卵 |
17.5 |
1500 |
業務・加工用のうち弁当等用と加工用の1/2が置き換わる。 |
これによると、生産減少額が圧倒的に多いのはコメである。減少額は1兆9700億円に上る。
そして豚肉、牛肉、鶏肉、が、それぞれ4600億円、4500億円、4500億円の減少である。生産量減少率は順に70%、75%、20%。となる。
これは、あくまでも「量」の減少で「金額」の減少ではない。農水の分析によると、牛肉は4等級と5等級が残り、そして豚肉は銘柄豚だけが残り後は全て輸入品に置き換わるという。さらに牛乳乳製品の品目では、鮮度も考慮されるであろう飲用乳でさえ2割が置き換わると見込んでいる。
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/renkei/fta_kanren/pdf/siryou3.pdf
結果、TPPにより、米国・豪州からの輸入食肉は増大し、国内生産に深刻な大きな影響をあたえることになる。それは、畜産物の内外価格差が大きく、日本の畜産の仕組みではなかなか、その価格差を克服出来ないからである。
しかし、ブランド化や、日本の畜産物の安全性・食味の優位性、等を訴求することで、競争力を付け、新しい「棲み分け」で、顧客を獲得することが必要になる。