「精肉」というのは、原料肉を加工し、「料理ができるようにした肉」という意味で、英語では、「テーブルミート」と呼ばれる。
骨付きの原料肉を、精肉に加工するための「部分肉」を、「カットアウト」という。 米国には「アメリカ式カットアウト」の部分肉、豪州には豪州式のカットアウトの部分肉があり、ヨーロッパは、「フランス式・ドイツ式」などの、それぞれの国に、独自の部分肉のカット方法がある。
 各国で、カットアウトの規格が違うのは、部分肉はその国の「肉料理」がそれぞれ違うからで、肉のカットは「料理」が基本になっているからである。
 各国が、料理が基本で有るのに対し、日本は100年余りの肉料理の歴史の中で、日本の部分肉は「解剖学的」なカットで、その基本は「解体」にあった。
 そのことが、外国は、直線的な部分肉のカットが主流であるのに対し、日本は、「しゃぶしゃぶ、すき焼き」などのスライス。これはスライサーが発明されて60年。「焼肉」がホットプレートや、「つけタレ」が発明されて50年、輸入牛肉の流通が拡大し、「ステーキ・ローストビーフ」などを食べるようになって30年。と、実に多様な肉の食べ方があるのが日本の肉料理の特徴である。
 日本に、近江の「味噌漬け」以外に、主だった土着の「肉料理」が無かったが、近年、一気に「肉料理」の多様性を生んだことが、日本の肉料理の大きな特徴といえる。  従って、現在でも日本の肉料理は進化している。
「冷しゃぶ」に代表されるように、「サラダ」にまでその範疇を広げており、食肉消費は、肉料理が年々開発されるにしたがって伸びてきているといえる。
 精肉のマーチャンダイジングの完成品は「料理」で、素材から「料理」という完成品を作るまでの加工度が違うステージのアイテムの提案が、MDで、これからの精肉部門にはこれが大きな課題となり、これから、ますます、精肉の商品化が、惣菜や、惣菜化していく提案が増えて行くことになる。

精肉の「肉惣菜」は、自社ブランドで提案

精肉のカテゴリーで販売する「お肉屋さんの惣菜」の基本は、その精肉部門で取り扱っている精肉を原料としたもので提案することにある。
総菜部門の「肉惣菜」との違いも、その点を明確にして、取扱品目を取り決めなくてはならない。
つまり、「ローストビーフ」で有れば、精肉で取り扱っている「牛肉」(この場合、自社でブランド化しているもの、ブランド牛を原料としているもので、これは、国産・輸入牛肉を問わない)を原料として、ローストビーフを作ったものに限る。

また、「ポークトンカツ」で有れば、黒豚や、ブランドポーク(これも、国産・輸入豚肉を問わず、精肉の部門で販売しているものに限る)から作った、「トンカツ」に限る。

「鶏肉唐揚げ」も、精肉で取り扱っている「鶏肉」からの「唐揚げ」である。ただし、ブラジル産の「鶏モモ肉」を精肉で取り扱っているからと言って、「お肉屋さんのお惣菜」として販売すると、多くの惣菜は、ブラジル産鶏モモ肉を原料とした、「鶏モモから揚げ」や、プリクックした「鶏唐揚げ」を販売しているので、店内競争となってしまう。

「焼鳥」にしても、惣菜で中国やタイ産の、調理済みの焼鳥を販売することが多いが、「お肉屋さんの肉惣菜」では、取扱いの鶏肉を串にさし、価格は高くても、国産のブランド化した鶏肉原料で提供していかなくてはならない。 惣菜と価格競争をしたり、同じ商材を同じ形で販売することは避けなくてはならない。

裏を返せば、惣菜他他店と価格競争になるような商品に関しては、オペレーションコストを無駄に割く必要がないため、加工度の低いものはアウトパックにしてしまう程度で十分というコトである。そうすれば、より加工度の高い美味しいものを店内加工して荒利益も稼ぐことが容易になると言える。


「お肉屋さんの肉惣菜」は、取扱い素材の「肉」料理の提案

精肉で取り扱っている「肉素材」を、“このようにすれば、さらに「美味しい肉料理」になりますよ。”“この肉惣菜は、皆さんにいつも食べて頂いている精肉素材でできたもので、料理の時間や手間を省けて、簡単便利に食卓に並べられますよ。”という、ベーシックな、料理を、主婦が作る以上に美味しく・美しく、提供することが第一であるが、「美味しい肉惣菜」ばかりでなく、新しい肉料理を提案することも重要である。
新しい肉料理提案をすることで、新しい需要を開発することができ、潜在需要の開発には不可欠なものである。
特に購入頻度の高い豚肉に関してはメニューの幅を広げることで、生肉の売上も増やすことが出来る。豚ブロック肉やスペアリブが美味しく調理することが出来れば、作業性もよく効率的に売上を稼ぐことにもつながる。

肉の消費は、肉料理の開発と両輪である。
また、「マンネリ」を防ぎ、「飽きる」ことがない提案をすることである。
「揚げ物・焼きもの・煮込み・サラダ・オツマミ」と、食べるシーンに対応したアイテムを、それぞれのカテゴリーに対して、アイテムを提供していかなければならない
。 そうでないと、単なる「揚げ物屋」になり、「焼鳥屋」になってしまうからである。
売れないから、時間がなくてアイテムが作れないから、と言って偏った品揃えになれば、「お肉屋さんの肉惣菜」にはならない、その店の精肉部門の肉料理提案にはならないので、注意しなくてはならない。


「レストラン」より美味しい味を試食して頂く「お肉屋さんの肉惣菜」

外食では、ファミリーレストランで「ステーキ」メニューが多く出てきている。
「ステーキガスト」など、ステーキをかんむりに掲げた店舗や、「ステーキとサラダバー(ブロンコビリー)」、「ステーキとスープバー(ステーキ宮)」などの、「ステーキ」をメインにしたファミレスも好調である。 「立ち食いステーキ」や、自分で調理して食べるステーキレストランなども増えてきている。
「焼肉レストラン」の業績もよく、特に、ファミリー向けの焼肉店が増えている。 このことは、「ステーキ」も、「焼肉」も家で食べることが少なくなっているという事で、「ハレの日」の、テーブルミート需要が苦戦する要因になっている。 スーパーも、「プルコギ焼肉」で、味付けしたものなどを多く提供するようになっているが、その「プルコギ焼肉」が、レストランと比較して、「美味しい!」とお客様は思って頂いているのだろうか、外食に負けないくらい美味しいプルコギであろうか? と言われたときに、自信を持って「こちらの方が旨い!」といえるだろうか。
精肉の現場も、「プルコギのタレ」をかけたから「プルコギ焼肉」というだけで、その味がファミレスや、焼肉屋より「美味しい味」か、どうかを検証して、自信を持って試食をしてもらいながら販売し、「ハレの日」の需要を取ってもらいたい。
そのために、試食は、非常に重要なポイントになる。
「お肉屋さんの惣菜コーナー」で、プルコギやステーキを焼き、その美味しさを実感して頂くことで、ハレの日のテーブルミート需要を掘り起こせるはずである。
外食に負けない、美味しさを確かめて頂くのは、「試食」が最も説得力があるからだ。
試食も「お肉屋さんの肉惣菜」での試食が、食べるシーンの演出に最適である。
素材の試食⇒味付けの試食⇒完成品の販売、 と繋がっていく。

鮮魚では、「魚屋さんのお寿司」というのが定番コーナーになっている。惣菜でもお寿司はあるが、魚屋のお寿司で有ることが、プロショップとして認知されやすいからだ。
「お肉屋さんの惣菜」でも、惣菜と区分するために、例えば、「陳健一レシピの四川マーボー豆腐」は、丼や、セットに入れたものは惣菜部。

マーボー豆腐のルーは精肉で、という場合もあるが、魚屋の寿司では、シャリを握った惣菜と同じ寿司が並んでいるので、お肉屋さんの惣菜でも、販売している精肉素材を使った、「ステーキ弁当」や「焼き肉丼」などを提供していく方向がよい。
「山形牛ステーキ弁当」など1パックが2980円とか、高額な弁当や、高額な肉惣菜などは、肉のプロショップで販売する方が売りやすいからだ。


「肉の香り、シェフの動き、シズル感」の“ライブ感”

鉄板を使って肉を焼けば、肉の焼けた美味しい香りが、売場に充満する。牛肉の焼く香りは、特に人を幸福感に満たせる効果がる。近年、惣菜のライブ感のある鉄板焼コーナーが人気を呼んでいる。対面コーナーのガラスの向こうの鉄板で焼いているものは、焼きそばやお好み焼きなど、比較的簡単なものが多いが、好調な売れ行きである。

縁日の屋台を思い浮かべるライブ感は、“作りたて”を売場で表現している。焼いている最中にも香りが店頭に充満し、食べたくなる衝動に駆られる。最近ではほとんどの量販店で、こういったライブ感のある場所が設けられ、試食販売が行われている。「キッチンスタジアム」などのネーミングで、店頭で専属の調理スタッフが、メニュー提案を行い、レシピを語りながら試食販売するスタイルも珍しくない。

肉惣菜は特に、調理しながらいただくと美味しいものが多い。ステーキや焼肉は鉄板や網から直接肉を食べるのも、最も美味しい状態で食べることが出来ること他ならない。そのライブ感をお肉屋さんの肉惣菜でも実現することで、肉の香りとシズル感を演出することが可能となる。まさに今シェフが調理したお肉惣菜であれば、なおさら食べたいという衝動に駆られるわけである。

海外のレストランに行くと、シェフがナイフとフォーク、シーズニングボトルなどを大道芸人のようにパフォーマンスをしながらステーキなど焼いてくれることが多い。日本の店頭でナイフを振り回してパフォーマンスをすると危険なため、ここまで動きのある販売スタイルは難しいが、黙って立って販売しているマネキン販売員よりは、動きや音のあるキッチンを演出する方がライブ感が出る。そんな意味では、海外の方が食べる楽しさやエンターテインメント感のある食を楽しんでいるように思う。


美味しいものは絶対売れる!

消費者は少しお金を出しても美味しいものは購入する。私たちの仕事と同じで費用対効果が良ければ購入するというコトである。調理時間のかかるようなメニューも同様に、売りやすい。また、女性は貧血になりやすいこともあり、店頭で鶏レバーを探していることがよくある。しかし、レバーを手に取って、どのように調理すればよいのかわからなかったり、どうせ少し臭いしパサパサになって美味しくないという漠然とした印象から、結果的に購入に至らないケースもある。レバーの内容量が購入したい量とは違い、多すぎるというのもあるかもしれない。 しかし、肉惣菜でしっとりした網焼きレバーを試食して、しっとりして美味しいアイテムであれば、購入に至るし、リピートにもつながる。最終的には生鮮のレバーも購入して定番売上にもつながるようになる。

特に、売れるとさらに売上につながるような、鶏内臓関係、豚ブロック関連などを使ったメニューが売れると、先々の売上が楽に稼げるようになる。特に豚ブロックが売れると何よりも、高利益商材であり、作業性も良いことから仕事も楽になる。 現在の日本の食は、ある程度美味しいものを普通に食べることが出来る状態である。それは、90年代から発展してきた量販店の惣菜コーナーの発展によって、容易にReady to Eatのものを購入することが出来るようになったことも一つの要因である。「普通に美味しい」というメニューはたくさんあるので、このスーパーのお肉屋さんの惣菜は「格別美味しい!」というものに変えていかなくてはならない。 “他社にはない自社ブランドのお肉を使ったお肉惣菜を、ライブ感のある売場で提供する”ことによって、今後の精肉の売上を左右するようになり、売上の核を作ることになるのである。


ケーススタディー


精肉 精肉アイテム 精肉価格 肉惣菜アイテム 肉惣菜価格
山形牛 山形牛カルビ焼き肉 130g980円 山形牛 牛メシ 1P980円
芝浦市場直送牛(国産牛) 芝浦市場牛切り落とし(国産牛) 100g298円 芝浦市場牛 牛丼 1P680円
USビーフチャックアイ 牛肩ロースステーキ 100g178円 チャックアイ一口ステーキ 1P380円
USビーフショートプレート 牛バラ味付き焼肉用 100g128円 プルコギ焼肉 1P298円
秋田桃豚 ヒレブロック 100g380円 桃豚ヒレ一口カツ 1枚120円
秋田桃豚 ロース切り身 100g258円 桃豚ローストンカツ 1枚350円
カナダ産旨味三元豚 肩ロース切り身 100g98円 旨味三元豚肩ローストンカツ 1枚238円
青森県産ホワイトチキン モモ肉唐揚げ 100g118円 ホワイトチキンモモ肉から揚げ 100g198円
青森県産ホワイトチキン ムネ肉唐揚げ 100g78円 ホワイトチキンムネ肉から揚げ 100g148円
鎌倉ハム 厚切りベーコンスライス 100g158円 ベーコン炙り焼き 1P280円
鎌倉ハム ボロニアソーセージ 100g158円 昔ながらのハムカツ 1枚98円


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