26年春夏「輸入肉マーケットの動向」
昨年にも増して、食肉の外部環境が大きく変化し、精肉部門でも先を読むことが極めて難しい状況となってきている。
特に今年に入ってからは、イランによるホルムズ海峡封鎖は、日本のみならず海外の原油、石化燃料の大きな影響をもたらしている。
今や精肉部門は疾病だけでなく、インフラも考えながらリスクヘッジも見当していかなくてはならなくなっている。
■エネルギー問題がもたらす供給網への影響
中東情勢の緊張に伴うホルムズ海峡封鎖リスクは、石油供給不安を通じて食肉流通全体に影響を及ぼしている。
燃料価格の高騰は輸送コストの上昇を招き、国内配送網の維持にも負担がかかる。
また、畜産現場では鶏舎や豚舎の空調・給餌設備にエネルギーが不可欠であり、コスト増は生産コストの上昇に直結する。
さらに、ナフサ由来の包材、トレー不足は商品供給や売場づくりにも影響を与え、サプライチェーン全体の不安定要因となっている。牛豚鶏の包装フィルム不足から、原料の納品も出来なくなる。
日本だけでなく、石油産油国ではない東南アジア、産油国でも世界中で逼迫する原油に対応して価格の上昇が起こっている。
特に、包材不足に陥ると、工場の生産がLPGで稼働できても、包材が手に入らず、パッキングが出来ない状態になってしまう緊急事態である。
■畜肉を取り巻く世界的な疾病リスク
現在、世界的に家畜疾病の発生が相次ぎ、食肉供給に不安定要因が増している。
欧州ではスペインを含む地域で「アフリカ豚熱(ASF)」の影響が続き、日本向け豚肉供給にも影響が及んでいる。
すでに、スペイン産生ハムやイベリコ豚の輸入がストップしているので、精肉でも00来な影響が出ている。
また、南米や東南アジアでは鳥インフルエンザの発生リスクが高まり、鶏肉輸出の不確実性が増している。これら疾病は突発的に輸出停止や供給減少を招くため、輸入肉の調達においては産地分散と代替調達の重要性が一層高まっている。
■円安と海外コスト上昇による輸入肉価格の構造変化
円安の長期化は輸入肉価格を押し上げる最大の要因となっている。
これに加え、海外では人件費の上昇や飼料価格の高騰が続いており、生産コスト自体も上昇している。
結果として輸入肉は、「為替」と「原価高騰」の双方から価格上昇圧力を受ける構造となっている。
従来のような「安価な輸入肉」という位置付けは変化しつつあり、スーパーマーケットにおいては価格訴求に依存しない「価値提案型の販売戦略」への転換が求められている。
1.輸入牛肉の動向
豪州産牛肉は、2025年生産量・輸出量が前年比15%増の154万6千トン(と畜頭数830万頭)で過去最高を記録し、2026年の生産量は285万トンで史上2番目の高水準となる見通しである。一方、アメリカのと畜状況は2026年1月下旬に、週53万5千と頭(前年比10%減)で、供給減が価格を下支えしている状況である。飼育頭数が70年ぶりの低水準になっている状況である。
「テーブルミート」で使用される冷蔵品は、輸入価格が引き続き高水準で国内需要は低調。
主要輸入先である米国産及び豪州産の輸入量の減少が見込まれ、3月、4月は大きく前年同月を下回る。3カ月平均でも、前年同期を1割下回ると予測される。
「加工・業務用」に仕向けられる冷凍品に関しても、輸入価格が引き続き高水準にあることから国内需要は低調であり、3月は、豪州産を除くほとんどの主要輸入先の輸入量の減少が見込まれる。
4月は、ほとんどの主要輸入先の輸入量の減少が見込まれ、前年同月をかなり下回ると予測される。
全体としては、輸入価格が高水準ある事や円安の影響で輸入牛肉の仕入れは高く、国内需要が低調なことが重なり、消費量が減ってきていると予想される。
牛肉輸入量 (単位:千トン)
| 牛肉冷蔵品 | 牛肉冷凍品 | 合計 | |
| 令和8年2月見込み | 10.3 (93.2%) | 20.1(109.9%) | 30.4 (103.6%) |
| 令和8年3月予測 | 11.8 (88.5%) | 16.8 (95.5%) | 28.6 (92.4%) |
| 令和8年4月予測 | 13.6 (91.7%) | 34.2 (89.5%) | 47.8 (90.0%) |
| 2月~4月平均 | 11.9 (91.0%) | 11.9 (95.9%) | 36.5 (94.2%) |
出典:alic牛肉の需給予測について(令和8年3月26日更新)
https://www.alic.go.jp/content/001284049.pdf
2.輸入豚肉の動向
「輸入豚肉冷蔵品」は、3月カナダ産、メキシコ産の増加が見込まれること、前年同月をやや上回る。4月は、前年のカナダ産が通関のずれ込み等を受け高水準となったことなどから、前年同月では下回った数字となる。
なお、3カ月平均では、前年同期を上回ると予測される。
「冷凍品」に関しては、現地相場高や為替相場の影響、国内の輸入品在庫が高水準にあることにより前年同月を下回って推移。
スペインのアフリカ豚熱(ASF)発生によるスペイン産豚肉の輸入一時停止措置の影響等もある中、例年3月に行われる通関保留が限定的となると見込まれ、3月は前年同月を大幅に上回る一方で、4月は前年同月を大幅に下回る。
3カ月平均では、前年同期を大幅に下回ると予測される。
令和7年11月28日にスペイン産豚肉等の輸入を農林水産省が一時停止し、スペイン産イベリコ豚や生ハムも輸入が停止し、外食店での提供も、在庫が無くなり販売休止のニュースも話題となっている。
豚肉輸入量 (単位:千トン)
| 豚肉冷蔵品 | 豚肉冷凍品 | 合計 | |
| 令和8年2月見込み | 33.6 (121.7%) | 34.5 (77.9%) | 68.1 (94.7%) |
| 令和8年3月予測 | 34.8 (104.0%) | 37.7 (116.0%) | 72.5 (109.9%) |
| 令和8年4月予測 | 35.4 (98.8%) | 39.5 (68.0%) | 74.9 (79.8%) |
| 2月~4月平均 | 34.6 (107.1%) | 37.2 (82.8%) | 71.8 (93.0%) |
出典:alic豚肉の需給予測について(令和8年3月26日更新)
https://www.alic.go.jp/content/001275115.pdf
3.輸入鶏肉の動向
農畜産業振興機構(ALIC)によると、輸入量は2月~4月増加する予測となっている。
要因としては、「輸入量は、前年のブラジル産の輸入量がブラジル国内及び他国向けの需要の高まりによる価格上昇により低水準であったことや現在の輸入品在庫量が低水準であること等から、2月はやや、3月はかなり大きく、いずれも前年同月を上回ると予測する。
なお、3カ月平均では、前年同期と同水準となると予測する。」とされている。
鶏肉輸入量 (単位:千トン)
| 鶏肉輸入量 | |
| 令和8年2月見込み | 48.4 (101.5%) |
| 令和8年3月予測 | 48.0 (111.2%) |
| 令和8年4月予測 | 52.4 (109.7%) |
| 2月~4月平均 | 49.3 (107.3%) |
出典:alic鶏肉の需給予測について(令和8年3月26日更新)
https://www.alic.go.jp/content/001275118.pdf
また、食品産業新聞社発行の畜産日報によると、1月の輸入鶏肉(モモ肉)の価格はブラジル産で600~650円/kg(前年390円/kg)、タイ産が630円/kg中心(同450円/kg)と、いずれも高水準となっている。
要因としては「輸入品は国内在庫が減少傾向にあるなか、市中ひっ迫状態が続き、高値に張り付いている。
現地オファーも強気にあるため、買付けを大幅に増やすような状況ではないようだ。」と報告されている。
夏場の最需要期に向けた各畜種のポイント
輸入肉を取り巻く環境は、価格高騰や供給不安など不確実性が増す中で、従来の価格訴求型販売からの転換が求められている。
特に夏場の需要期においては、焼肉・スタミナ需要を的確に捉えた「メニュー提案」や、タイパ、簡便提案の「味付け提案」が重要となる。
夏場の需要期に向けた牛豚鶏それぞれの販売ポイントを整理し、商品提案につながる売場づくりの方向性、考え方を提案する。
【輸入牛肉】
輸入牛肉は、米国産の供給減と価格高騰、円安の影響により、仕入れ価格が高止まりする厳しい環境下にある。
一方で豪州産は生産回復により供給増が見込まれるものの、世界的な需要の高まりから価格の下支え圧力は強く、従来の「安価な輸入牛」という位置付けは完全に変化している。したがって、夏場の需要期においては価格訴求ではなく“価値訴求型”への転換が必須である。
具体的には、焼肉・BBQ需要に対応した「メニュー提案」と「味付け提案」の強化がポイントとなる。
特に「バラ肉部位」の「ナーベル」や「ショートプレート」などの汎用部位を活用し、味付け肉として付加価値を高めることで、単純な相場連動型販売から脱却する必要がある。
また、少量・即食・簡便調理といったニーズに対応し、小容量パックやワンパン調理提案を強化することも重要である。
売場としては、「外食代替」「ごちそう感」「簡便性」をキーワードに、家庭内焼肉の提案を強化する。価格が高いからこそ“失敗しないメニュー提案”を行い、調理イメージまで伝える売場づくりが求められる。
【輸入豚肉】
輸入豚肉は比較的供給が安定しているものの、為替の影響や現地相場高により価格上昇が続いている。
また、スペイン産の輸入停止に見られるように、「疾病リスク」や「国際需給の変化」によって供給が不安定化するリスクも顕在化している。
さらに、米国の通商政策次第ではカナダやメキシコ産への需要集中が起こり、日本が買い負ける可能性も否定できない。
チルド品だけでなく、冷凍豚肉もうまく活用しながら売場作りを行なうことが重要な鍵となる。
このような環境下では、「安さ」だけに依存した販売から脱却し、部位特性を活かした用途提案と味付けによる差別化が重要となる。
特に豚肉は部位ごとの特徴が明確である。
定番の「ロース」や「肩ロース」部位は、「とんかつ用、生姜焼き用」の生肉提案は定番商品として、「ロースカブリ」や「バラ部位」など脂の旨みを活かせる部位は、「焼肉メニュー」の提案で、夏場の需要期において有力な販売軸となる。
また、家庭内調理においては“手軽に美味しく仕上がる”ことが重要視されており、「味付け肉の需要」は今後さらに拡大する見込みである。
数年ブームが来ていたアウトドアは、ブームが過ぎ落ち着いているため、メニュー提案はインドア向けの家庭内調理に重きを置くと良い。
バックヤードにおいても、「スライス・味付け工程」を標準化することで作業効率を高めながら、付加価値商品を安定供給することが可能となる。
売場では「焼くだけ」「失敗しない味」「スタミナ系」をキーワードに、夏場の食欲喚起を意識した展開が有効となる。
【輸入鶏肉】
輸入鶏肉は、「ブラジル・タイ」を中心に供給は維持されているものの、世界的な需要増加と在庫水準の低下により価格は高止まりしている。
特に中国や中東など新興国の需要拡大が輸出価格を押し上げており、日本市場においても従来の低価格商材としての位置付けが揺らぎつつある。
一方で、鶏肉は依然として他畜種と比較して「価格優位性」があり、「節約志向」の「生活防衛意識」の高まりの中で需要は堅調である。
特に、今年の夏場は、「焼き物・揚げ物需要」に加え、「スタミナメニュー」としてのニーズが、増々高まるため、「味付け提案」との相性が非常に良い畜種である。
販売のポイントは、「ボリューム感」と「簡便性」の両立である。
「カット済み・味付け済み」の商品は、調理時間の短縮と失敗リスクの低減につながり、タイパ志向の生活者に強く支持される。
また、バックヤードにおいても、規格化されたカットと味付けにより作業の平準化が可能となり、人手不足対策としても有効である。
売場では「がっつり系」「ご飯が進む味」「焼くだけ簡単」を軸に、食卓提案を強化することが重要である。
3章では、鶏モモ肉切り身を活用した山賊焼味の提案へと展開し、食欲を刺激する商品化へとつなげていく。
輸入肉の差別化を図るための「差別化提案」
輸入肉を取り巻く環境は、為替や相場高に加え、世界情勢など複合的な要因により「安さ」だけでは売れない時代へと移行している。
その中で重要となるのが、調理提案と一体化した“完成度の高い商品化”である。
「用途が明確で失敗しない」「すぐ食べられるイメージが湧く」ことが、売場での購買決定を左右するポイントとなる。
新商品という位置づけよりも、味が想像できて失敗しないということが、今の時代の売れ筋ポイントとなる。
生活者にとっては、献立を考える手間の軽減と調理時間の短縮が最大の価値であり、特に夏場は食欲減退や調理負担の軽減ニーズが高まる時期である。
そのため、“焼くだけで専門店の味”“スタミナがつく味付け”といった分かりやすい訴求が有効となる。また、味付け肉は食材と調味料の一体提案となるため、買い物時間の短縮にもつながり、タイパ志向に合致する商品である。
一方、バックヤードにおいても商品化の精度向上は重要である。
味付け肉は、あらかじめ原料の規格や歩留まりを設計することで、ロスの削減と作業の平準化が可能となる。
また、スライス厚やタレの配合を標準化することで、誰が作業しても一定品質の商品供給が実現できる。さらに、タレや副材を組み合わせることで単価アップが図れ、利益改善にも直結する。
売場づくりにおいては、「焼肉」「スタミナ」「ご飯が進む」といった夏場のキーワードを軸に、用途別にゾーニングした展開が効果的である。
牛バラの「プルコギ焼肉」は“ご飯のおかず提案”、豚ロースカブリやバラは“スタミナ焼肉提案”、鶏モモは“ボリューム系メニュー提案”といったように、畜種ごとの特性を活かしながら売場全体でメニュー提案を構築することが重要である。

豪州産牛バラ肉を使用し、味付けプルコギ炒め提案を行う。
納品価格が上がっていることもあり、仕入れが可能なブランドや牛肉を選択する。
以前よりも、輸入牛に対する安心感は上がっており、品種などを指定しなくても、丁寧な商品化、綺麗な商品化をしているだけでも消費者の購買意欲は高くなる。
牛肉は2mm圧でスライスしてタレを揉み込み、しっかりと混ざり合っていることがわかるようにする。
一度に製造する量を20パックなど大量生産することで、作業時間を短縮させる。上からかけるよりも揉み込まれている方が購入率は高くなる。トレーは発泡トレーではなく、内嵌合の蓋つきトレーを用いることで、液漏れすることなく、売場でも商品を立体的に陳列することが出来るようになる。

「サムギョプサル」に並ぶ有名な韓国の焼肉メニュー。半解凍した冷凍豚バラを焼肉サイズに柵取りし、スライサーで商品化することで、作業性がよく一気に仕事を終わらせる。
半解凍のパーシャルフリージング(-5~-2℃の範囲で、半凍結・微凍結状態)でスライスすると商品化しやすい。
プレーンの味なしで商品化するのと同時に、味付け商材を数アイテム商品かすることで、味付けコーナーが充実する。
「チリソース、ガーリックペッパー、山賊焼のたれ」が今年のブームとなっており、濃い味付けのタレが売れ筋である。
柵取り、をする前に、1枚長い状態で「サムギョプサル」の商品化も同時に行なうことで、バラ肉からいくつかの商品化を一度に行なうことができる。
*パーシャルフリージングは、冷凍庫から冷蔵庫へ移して、箱から出した状態で、丸一日0度で解凍すると中心温度が-5~-2℃の範囲に上昇する。冷蔵庫の大きさや風の当たり方、冷蔵庫の物量や開け閉めによる温度変化など、環境によって前日だと凍った状態であることもあるため、それぞれの冷蔵庫で検証して商品化すると良い。

豚ロースかぶりを使用した、にんにく塩味の提案で商品化する。
豚ロースや肩ロースでも商品化は可能であるが、豚ロースかぶりを使用することで、消費者の食べてみたいという期待感が高まる。蓋つきのきれいなトレーを使用することで、希少部位豚ロースかぶりの付加価値提案を行う。たれ付けにすると色が暗くなりやすいため、白ゴマや薬味ネギなどをトッピングするとより良くなる。

比較的安く仕入れることが出来る「ブラジル産若鶏モモ肉」を使用した、タレ漬け「山賊焼き」提案を行なう。
タレ漬け提案は、タレを混ぜるだけの簡単な商品であるが、混ぜ合わせる商材によって、値入れ率が大きく変わる。
特に、価格に大きく関わるお肉、3割程度混ぜ合わせるタレ、さらに、彩りにも必要な野菜の3拍子が揃うと、儲け商材となる。
仕入れが可能であれば、冷凍野菜でニンニクの芽やじゃがいもなど消費者にとっても、下処理不要で焼くだけ簡単、タイパ重視の商品となる。店舗によって混ぜ合わせる商品を工夫して、簡便メニューとして訴求するとよい。

「たれ付け商品」をつくると単品訴求になりやすいが、「たれ付け焼肉セッ」トにすることで、少量ずつの食べ比べセットになる。
夕食のメニューに広がりが出るだけでなく、お弁当商材にも活用できる商品となる。
原材料表示シールを貼る必要があるので、この部分は注意が必要であるが、消費者視点では購入したくなる一品となる。たれ付け商品を製造するタイミングで、一緒にセット商品も商品化してみるとよい。
外部環境が売場に直結する2026年夏商戦
2026年夏場に向けた輸入肉市場は、円安の継続、世界的な需給逼迫、エネルギー問題や疾病リスクなど複合的な要因により、不確実性の高い環境が続くと想定される。
従来のような「安価な輸入肉」に依存した販売は難しくなり、スーパーマーケットにおいては価格訴求から価値訴求への転換が不可欠である。
特に夏場の需要期においては、「焼肉」や「スタミナメニュー」を軸にした「味付け肉」の強化や「用途提案」が重要となる。
加えて、バックヤードの効率化と商品化精度の向上を図りながら、安定供給と利益確保を両立させる取り組みが求められる。
環境変化に柔軟に対応し、売場全体で提案力を高めることが、今後の競争力強化につながる。