重視すべき数値

精肉部門を運営するうえで、重視すべき数値と言えば、まず売上がある。次に、製造小売業という部門特製で、鮮度の問題から在庫などの管理が数値として重要なチェックポイントとして考えられる。

今回は、すぐに改善できる売上に直結する、客単価、買い上げ点数と、鮮度に関わる在庫回転日数、ロスについてまとめた。

1.売上に直結する数値

どの部門でも売上は求められることであるが、精肉部門では売上をさらに買い上げ点数、客単価に分解して、売場でコントロールすることが出来る。

売上高=客数×客単価

で求められるため、客数を増やすか客単価を上げることで、売上高を増やすことが出来る。

客数は、店舗に来る入店客数や来店頻度に影響する。客単価は以下の式で求められる。

客単価=一人当たりの平均買上点数×商品一つ当たりの平均単価

そのため、買い上げ点数と平均単価(精肉部門の客単価)を上げることが、直接売上につながることに他ならない。

精肉の売上高は当然店舗によって異なるが、おおよそ精肉の売上高構成比は、客単価のうちの10%近くを占める。

平日の客単価が3000円だった場合、精肉の構成比から考えると300円、週末で6000円だと、精肉で600円使っていることになる。精肉の平均単価は店舗によって異なるが、平日だと350円前後、週末だと700円前後くらいが一般的ではないかと想定される。

買上点数に関しても、店舗や時期によって大きく変わるため、一概には言えないが、平日で0.6~1点/客、週末で2~3点/客程度になると思われる。

平日の来店客のうち、6割以上が1点購入するイメージである。

課題は上記の一般的な数字や適性水準ではなく、各店舗の精肉平均単価と平均買上点数を把握しているかという部分である。

この部分が把握できていなければ、自店の問題点は解決できず、売上も改善しないということである。

【解決策】

売上が芳しくない場合、精肉の平均単価が下がって売上が下がっているのか、買い上げ点数が下がって売上が下がっているのかをまず把握する。

  • 買い上げ点数が変わらず、精肉の平均単価が下がっている場合
    単純に言うと平均単価を上げるインストアプロモーション(インプロ)を実施するという事である。
    POSで平均単価の金額を確認し、均一セールを実施する。豚肉480円均一セールや牛肉580円均一セールを実施する。
    平日では、定番の小間切れや豚切身などの日常使い出来る商材を選択すると、即売上につながりやすい。
  • 平均単価はあまり落ちていないが、買い上げ点数が落ちている場合
    買上点数を上げるために、よりどりセールを実施する。1P380円、よりどり3パック980円均一は消費者にも認知された特売で、効果も高い。
    1パック当たりの量目は定番の単価に近付ける代わりに、3パック買うとお買い得というお買い得感を演出する。
    ただ、競合他社の価格よりも高く乖離が大きい場合は、価格も見直す必要があるかもしれない。
    また、プラスαのパックをとってもらう手段として、タイムサービスは有効である。タイムサービスの場合、有効に売り上げにつなげるために、価格訴求が必要となる。
    平均単価を下げると下げると意味がないため、パック単価を平均単価よりも上に設定する必要がある。
  • 買い上げ点数、平均単価ともに落ちている場合
    かなり重症なケースである。まずは、価格設定が競合他社と比べて高くないか確認する必要がある。
    価格が高いのであれば単価の見直しで、改善が可能となるが、売価も高くない場合は、商品鮮度や商品化に問題がある可能性が高くなる。
    店舗の売上に対して精肉の売上が5%に近くなっているのであれば、店舗の問題でなく、精肉部門として基礎から立て直す必要がある。
  • 買い上げ点数が高い場合、平均単価が高い場合
    買上点数が高く、売上が達成できない場合は、安売りしすぎていないか確認する必要がある。よく売れて作業が多いのに、売上が全然達成しないパターンである。
    これは作業効率も悪く売上の作り方の見直しと、パートやアルバイトにも負担が大きくかかって作業場の雰囲気も悪くなることが想定される。
    逆に、平均単価が高く、売上が芳しくない場合は、パック単価の見直しが必要となる。売価設定は企業によってきめられており、バイヤーとの話し合いが必要となるが、1パック当たりの売価を下げることは店舗でも可能である。
    作業効率は良くなるが、売れなければ意味をなさない。
    いづれも、バランス感覚を失った状態であるので、チーフのマネージメント能力が重要となる。

2.鮮度管理と直結する数値

生鮮部門では、グロサリ部門のように単純に商品を仕入れて販売するという商いではなく、製造販売業であるため、消費期限だけでなく鮮度にも意識を働かさなくてはならない。販売量が減ると在庫が残り、鮮度劣化が売場に反映してしまうことが問題となる。

適正在庫で在庫管理していくことが鮮度や結果的に利益につながるのである。

  • 在庫回転率と在庫回転日数
    在庫管理は、単純に数字では表せない。現物の商品をしっかりと確認し、必要な在庫は数字に関わらず準備する必要がある。
    そのうえで、数字の管理を行うとよい。在庫量に関わる数字としては、商品回転率(在庫回転率)がある。商品が何日で循環しているかを表す指標である。

    商品回転率(在庫回転率)=売上高÷平均在庫

    精肉では、棚卸のときに商品回転率を求めることが多いが、日頃から確認しておくと状況はもっと細かく把握することが出来る。
    平均在庫は、「(期首棚卸高+期末棚卸高)÷2」で求められるので、在庫が常にどれくらいあるか、把握しておくことがポイントとなる。
    商品の回転率を上げれば、それだけ商品は循環して鮮度も維持できているという事になる。
    例えば、売上高2000万円/月で期首在庫100万円、期末在庫100万円だった場合、商品回転率は20となる。商品が売れておらず期末在庫が200万円になってしまっていた場合、13.3となる。
    商品回転日数=月の稼働日数÷商品回転率
    具体的に商品回転日数を計算するには、上記の式に当てはめると良いので、月30日だった場合、前者は1.5日、後者は2.25日という計算になる。
    前者は月30日で20回転しているという計算、後者は30日で13.3回転しているので、回転日数は2日より多くなる計算である。
    商品の回転率を上げるには、商品をたくさん売るか、在庫量を減らすかのどちらかである。
    例えば、上記在庫が期首と期末で80万円だった場合、商品回転率は25、商品回転日数は1.2日となる。在庫が20万円分減るだけで、回転日数は0.3日短くなるのである。つまり、0.3日分鮮度がよくなるという事である。
    そのため、チーフが「在庫を減らせ」というのは、間違いではない。
    ただ、むやみやたらと在庫を減らすとチャンスロスになるので、店舗の適正な回転日数を把握することが大切である。
    一般的に牛肉などの高金額の在庫が、在庫回転数を押し上げるため、2日前後となることが多い。

  • ロスの削減
    厳密には、商品化する時の歩留りロスなども考慮する必要があるが、今回は店頭での値引き、売れ残りの廃棄について考えてみる。
    精肉のロスは、肉屋にとってグレーゾーンである。
    というと、ドキッとするチーフも多いのではないだろうか。ロスが増えると、粗利益が減り、商品部や店長からも怒られるので、見ていないことにして廃棄していないだろうか。廃棄分くらいは、商品化時の歩留りを上げることで相殺できると考えているチーフも少なくないのではないだろうか。
    実際、データとして上がっているロス率は、売上に対して3~4%で、ロス予算として6%程度を設定していることが多い。
    しかし、実際には万引き等も含めた不明ロスもあり、6~8%程度出ても不自然ではなく、販売方法(鮮度維持のための値引き等)によっては20%近くになることもあるようだ。
    最終的に利益が残れば問題はないので、トータルで見るべき数字というべきかもしれない。しかし、売上2000万円の10%というと、200万円であるので、6%に圧縮できれば120万円になるので、80万円分の粗利益が抽出できることになる。そう思うと、今からでも改善できる数字という事になる。

    ロス高=値引き高+廃棄高+不明ロス高

    万引き等の不明ロスは改善するには精肉だけでは解決しないが、値引きと廃棄は精肉でも解決できる問題である。鮮度管理、売り切りのタイミングは、学生アルバイトに任せず、しっかりと指示を出して、社員も帰宅するように心がけると良い。

基本の数字が最も重要

売上、客単価、買い上げ点数、在庫回転日数、ロス、どれも新入社員が入った時に勉強するもっとも簡単な数字である。

机上では簡単に計算できる内容かもしれないが、これを現場に落とし込めるのかという部分が課題である。机上で在庫回転日数を2日以内にしてくださいというのは、本当に無責任な発言で、状況によって全く回転日数は変わってくるだけでなく、言われた通り2日にしたがために、リードタイムと合わず商品が欠品してしまったという事もありうる話だ。

数値管理は、店舗によって適正な幅があり、そこに合わせることが重要である。

そのために、言葉の意味と中身をしっかりと理解してほしいと思う。計算式を覚えることほど無意味な作業はない。しかし、計算できないと、発言の根拠もなければ説得力もなくなるので、基本的な計算と中身だけは体に染み込ませておくと良い。

ただ、同じ店舗の精肉担当者内での基準は作り、在庫は多くても鶏肉で30万円、牛肉が50万円までに抑えるようにしようと、意思疎通を図ることは重要である。

売上も同様で、毎日の売上目標が全員に共有されていることで、パートからアルバイトまで目的意識を持った仕事をすることが出来るようになる。