テーマ「精肉部門の基礎知識と仕事」
- そもそも、「精肉」とは何? 主な分類と代表的な商品(加工肉も含みます)
- 商品にはどのような特徴がある?(若干商品の調達先にも触れてください)
- 「さあ、今日から担当だ」、販売する身として何を心がける? 仕事人として最も注意すべき点(部門ならではの)
- 売場担当者に想定される仕事にはどのようなものがあるか?
- ライバルに差を付けるために「ココのスキルを磨け!」
- 代表的な売場の解説を100字前後で5つ程度(これについては、こちらで写真を探しますので主要な売場単位の陳列や販売のポイントについて)
以上①~⑤はそれぞれ約400字~600字
6.までのトータルで3000字前後にてお願いできればと存じます。
精肉部門で販売する商品
スーパーマーケットの「精肉部門」はグロサリーや酒類などと違い、製造小売業と呼ばれる形態で、簡単に言うと塊のお肉を仕入れ商品に製造して販売する業態のことである。
近年、様々な外部環境から商品を外部から仕入れ、売り場に陳列できるケースレディーミート(アウトパック)や、一箇所のセンターで商品をまとめて作るセンターパックなど、一概に店内でお肉を仕入れて加工製造するだけではないという事も、知っておきたい。
扱う商品は食肉で、主力となるのは「牛肉、豚肉、鶏肉」と「挽肉・加工肉」である。
そのほとんどがチルドの生肉である。
冷凍肉はドリップが出ることや冷凍スライサが量販店に設置していない場合も多く、あまり好まれない傾向にある。
そのほか、「羊肉」や「鴨肉、馬肉」なども販売されるが、まだまだ売上構成比は高くない。
加工肉は、取扱いが精肉部門に入る企業と、日配食品で取り扱う企業がある。加工肉には「ハム、ソーセージ」や「ベーコン、焼き豚」、海外からの「生ハム、サラミ、ソーセージ」などがある。
最近話題の「ライブ調理」のミート惣菜、精肉の「レンジアップ商品」なども精肉で販売する。
かつて生食(以前は牛たたきや牛刺身も販売していた)やタレ漬け商品がよく売れていたが、時代と共に出来立てミート惣菜やレンジアップの簡便調理品、おつまみに変わっていった歴史がある。
牛豚鶏と挽肉の商品特性
【牛肉】一般的に国産牛と輸入牛を包丁やスライサでカットしたオントレー商品を展開する。
国産牛には和種や交雑種、乳用種・ホルスタイン種などあり、輸入牛肉で多く流通しているものに豪州産や米国産がある。
国産牛は昔からの流れで産地に根付いた畜産業者や全国のブランドと取引がある大手メーカーから購入することが出来る。
輸入牛肉は大手メーカーなどから仕入れることが可能である。
【豚肉】多くの量販店で「黒豚、通常白豚、輸入豚肉」の扱いがある。
しかし、黒豚の需要が減っており売場から姿を消しつつある。
その代りに、スペイン産のイベリコ豚など特徴のあるハイグレードの豚肉の扱いも増えている。
通常豚は白豚ともいわれ、日本では三元交配した三元豚など流通している。輸入豚肉は米国産やカナダ産などがチルド豚肉として多く流通している。
イベリコ豚は冷凍で流通している為、商品化には冷凍スライサーや解凍してチルドスライサでスライスする必要がある。
国産豚肉に関しては大手メーカーからの仕入れをする場合が多い。特に輸入豚肉に関しては、大手メーカーや商社を通して輸入される。
【鶏肉】鶏肉は若鶏(ブロイラー)と呼ばれる50日程度で出荷される鶏を中心に販売される。鶏肉は全国に産地があるため、地元企業から仕入れることが出来る。餌などを独自のブレンドで与えた銘柄鶏は若鶏よりは付加価値をつけて販売することが可能である。地鶏や赤鶏といった品種の違う鶏に関しては、その土地でしか肥育されていないため、特定の業者からしか購入できない。
【挽肉】通常、牛豚合挽肉、豚挽肉、牛挽肉、鶏挽肉を中心に展開する。店内で牛肉と豚肉の商品化をする際に出たトリミング材を使った挽肉を作ることで、インストア店舗ではロス削減に取り組んでいる。
精肉の心得 3箇条
1.家族が食べるお肉を扱っているという意識
- クレンリネスは当然のこと、と心で思っていてもほとんどの精肉の作業場の衛生レベルは低い。
自分の家族が食べるものを作っているはずが、作業場の壁がカビだらけ、スライサーの機械の隙間には肉が詰まっている、まな板は茶色に汚れている・・・。
家族が食べる物を扱っている意識があれば、作業場が汚いわけがない。 - 家族が食べるものであれば、鮮度意識もUPする。まな板の上のお肉は20分以内に処理して予冷するのは家族の為。
挽肉に混ぜる豚のトリミングも家族が食べると思うと、都度冷蔵庫に入れる習慣がつく。
消費者の声を聴く柔軟な頭作り
- 精肉商品のほとんどが家庭で調理する素材。家庭によっては量目が多すぎる、逆に少ないから増やしてほしいなど、消費者によって要望はさまざま。
売場の商品も今までの経験と消費者の声から生まれた商品もたくさんある。その声をしっかり聴くことこそが売れる商品作りにつながる。 - 売場作りは消費者の声から出来上がる。
冬の「しゃぶしゃぶコーナー」、夏の「焼肉売場」は一般的であるが、施設(たとえばBBQ場など)によっても売場で売れるものが変わる。この消費者の声や環境を聞いて生まれたのが、レンジアップ商品やミート惣菜。時代や時期によって売れるものが変化するため、いち早く情報を収集したい。
3.「商い」をしている自覚
- 儲けが出ないと給料は出ない。ロスが増えると儲けが出ない。儲けがない量販店は淘汰される。豚小間切れ1パックまで丁寧に商品化して販売する意識作りが商いの基本という意識が大切。
精肉売場担当者の仕事
精肉売場の担当になると作業場、店頭、事務所での作業がある。お肉の仕入れから冷蔵庫の整理、商品化、値付け作業など細かく分類すると下の表以上に細分化される。
特に冷蔵庫整理はきちんと整理しなければ、日付切れの原料が裏から出てきたとか、売場で廃棄になった商品を冷蔵庫においたまま忘れてお肉が腐っていたなど、当たり前のことが現場ではできないものである。
店頭では商品出しや商品整理に加えて、値引き作業や商品劣化がないか品質チェックなどもしなくてはならない。
事務所では大手量販店では業務分業されている為、伝票処理をする必要はないが、中小企業では精肉担当者が、伝票をPCに入力することもある。
また、POPや広告の準備、タイムサービス用のPOPなども準備する必要がある。先々を考えると、常日頃情報を仕入れる必要があるため、牛肉や豚肉の相場や雑誌から新しい売り方や商品化の情報を収集することも重要な仕事である。
作業場 | 仕入 | 仕入れた商品の検品(重量チェック、納品価格チェック等) |
冷蔵庫 | 商品や備品の整理整頓、日付管理等 | |
商品化 | 牛豚を使用した手切り作業(ステーキ、焼肉、ブロック等) | |
牛豚を使用したスライス作業(しゃぶしゃぶ、スライス、生姜焼等) | ||
牛豚ミンチ用冷凍お肉をカットし挽肉にする | ||
販売準備 | 商品化した商品をラップ、値付け | |
店頭 | 販売 | 値付けした商品を店頭に陳列、商品整理 |
店頭での売込み販売 | ||
商品の品質チェック、日付チェック | ||
値引き(格下げ)による商品売り切り | ||
販促物 | POP設置・撤去、販促物設置、売場作り、装飾品飾りつけ | |
事務所 | 伝票 | 伝票処理 |
販促物 | POP(通常品、特売、広告等)準備、ポスター、パネル、のぼり準備等 | |
情報 | 日経新聞、流通新聞、流通雑誌での情報収集、相場確認 |
ライバルに差をつけるスキル
ライバルに差をつけるには、まず仕事の全体像をつかむこと!
仕事の全体像がつかめると仕事の先回りが出来るようになる。次にやらなければならない仕事を先に行うことで、ライバルとどんどん差が開くようになる。
今、手元の仕事を行うことでいっぱいいっぱいになってしまうのが始めの段階であるが、少し出来るようになると仕事の先回りをすることがポイントとなる。
ただし、今の仕事がきちんとこなせていないのに次の仕事をすると逆効果!丁寧に今の仕事を完成させてほしい。
【包丁技術】包丁を持って仕事をする仕事であるので、まずは手を切らないように十分気を付けて作業を行う必要がある。包丁技術は手の使い方がポイントとなるため、先輩の仕事をじっくり観察して、包丁使いを真似してみることがポイントである。
【スライス作業】スライス作業を行う上で綺麗な商品化を目指すことが一つの課題。スイッチを入れると誰でも同じスライスが出る為、そのあとの処理がポイント。切落しを綺麗に盛り付けることが出来ると、すき焼き用も綺麗に作ることが出来るようになる。
【清掃】はじめのうちは、お肉よりも鮮度やクレンリネスの勉強が必要となる。特に清掃時間は素早く丁寧に綺麗に清掃しなくてはならない。まな板にこびりついたお肉の脂肪は、簡単に除去できない。スポンジも縦横斜めと完全に綺麗な清掃は作業の第一歩。
精肉売場
売場の作り方は、時代と食生活、消費者のニーズによって変化する。
「牛肉、豚肉、鶏肉、挽肉コーナー」の他に、2016年の精肉売場は「ミート惣菜」が充実した売場作りが目立つ。家庭で調理する主婦が減っていること、単身世帯や2人世帯の構成比が高くなってきていることなどから、今後も需要が伸びるカテゴリが「ミート惣菜」である。
精肉コーナーの「Ready to Eat」商材としてミート惣菜がある。
ライブ感があり、目の前で調理するフライコーナーや写真のような、リブロースやイチボを使ったこだわりのローストビーフや、ミートローフ、おつまみ商材も店内加工した焼き豚や焼鳥が、既製品の冷凍惣菜とは全く味が違う。
外食店から流行し始めた「熟成牛肉」は量販店でも販売するようになった。専用の熟成庫で「ドライ・エイジング」を行い、周りの菌と表面のお肉を削り落として販売する。
ただし、お肉の管理や衛生管理が出来ない量販店では扱わない方が良い。
各季節ごとに、売れるメニュー提案コーナーは売場でマグネットとなる。
春先の「焼鳥」、夏の「焼肉・BBQ」、秋冬の「鍋やしゃぶしゃぶコーナー」は、縦陳列をきっちりとくくり、カテゴリ化することで消費者が買いやすいコーナーとなる。
精肉の主力である畜種の「牛肉、豚肉、鶏肉」に加えて第四の柱と言われている「羊肉」。日本では習慣的に羊肉を食べる文化が根付いていないが、世界的には広く一般的に食べられている畜種である。ジンギスカンや骨付きステーキはメニュー的にもわかりやすく売りやすい。
通称ハムソーコーナーと呼ばれる加工肉売場。
「ハム、ソーセージ、ベーコン、焼き豚、ハンバーグ」など、畜肉を使った加工肉が並ぶ。
健康意識が高くなってきてからは減塩や糖質ゼロ、安心感のある国産豚肉使用など付加価値の付いた加工肉も増えている。