9月に売込むこの商品
食肉、国内外問わず食肉加工品も含めて、値上げ要請が止まらない。
新型コロナに始まり、人員手配、物流混乱、さらにはロシアによるウクライナ侵攻によって、穀物相場が上がり飼料価格が上昇し続けている。
現時点、相場が下がる要因が全くなく、安売りでの集客からの脱却の時がやってきたと言わざるを得ない。
特に輸入肉に関しては、「牛・豚・鶏・羊肉」どの畜種に関しても相場が上がっているだけでなく、調達そのものが困難になりつつあることを量販店も深刻に受け止める必要がある。
いかに困難な状況を打破するかは、持続可能な商売のスタイルを作り上げること他ならない。
精肉
9月6日の「黒の日」には黒毛和牛の焼肉を販売する。
全体的に相場が高い中、やや落ち着きを取り戻しているのが黒毛和牛。
輸入牛肉が高騰しているため、相対評価として、国産の値上がり幅が、輸入牛肉よりは、小さいので、販売しやすい。
「和牛モモ部位」や「肩、バラ部位」などは、比較的安く販売でき、取り扱いやすくなる。
部位の重量構成比率が高い「バラ、モモ部位」を小割して、「三点盛り」などで展開することで、単品の価格の価格というよりは、1パック当たりの購入価格が全面に出るので、販売しやすくなる。
最近は「4分の1セット」や、部分肉の、小割り・分割での納品も増えていることから、少量ずつを焼肉用やスライス材としても使うことが容易になった。
セット納品している場合は、価格メリットが出やすいため、「モモ・肩・バラ部位」の活用がポイントとなる。
9月に入ると、外気温は高いながらもしゃぶしゃぶの売り場を少しずつ作り始める必要がある。
単品のしゃぶしゃぶ用のほかに、盛り合わせを販売する。
最近は、単品よりも盛り合わせを主力に販売する企業が増えている。
単品の値上げを目立たせなくすることも一つの工夫である。
トレーも価格帯が上がっていることから黒金のトレーなどを使用することで、価格に見合った商品化となる。
商品化は、切り落としタイプやスライス取りでの商品化よりも、「花盛り」など綺麗に盛り付けることがポイントとなる。
オペレーションとしては、時間がかかってしまうが、それなりの金額を回収することが出来れば、メリットがある。
関連販売のしゃぶしゃぶのたれは、盆明けから「冷しゃぶ」から切り替わっているため、売り場は作りやすい。
新学期が始まる9月はお弁当商材や新たな気持ちで夕食を作り始める人も多い。
また、単身世帯向けの役だけ簡単メニューとして、味付け商材を充実させるとよい。
精肉で流行中の「ふぞろい焼肉」シリーズで、オペレーションも簡単に展開を増やす。使用する豚肉は、輸入豚であれば、仕入れている国の肩ロースやバラ、ピクニックなど使用する。
通常使用している部位を、横展開することで、仕入れリスクを減らし、在庫を確保することもできる。国産豚肉を使用する場合は、安価な豚肩や豚モモを使用するのも面白い。
今まで切り落としや小間切れにしかなっていなかった部位を、やや厚めにスライスして味付けすることで、安価な味付け商材となる。
味付けは、レモンペッパーや山賊は定番であるが、豚みそなどのみそ漬けで使用している味も、焼肉用で使用することが出来る。
【ミート惣菜】
「若鶏半身揚げ」がミート惣菜で人気となり、精肉のミート惣菜や惣菜売り場で定番化してきている。
この若鶏半身を、グリルにすると別メニューとして展開可能となる。
グリラーがある店舗はほとんどないが、スチコンのコンビモードで加熱すれば、パサつくことなくグリルすることが出来る。
数十秒フライヤーで素揚げすること、皮目がカリッと揚がることから、揚げ工程を入れる店舗もあるので、試してみる価値はある。
見た目の焼き目が購買力に大きく影響するため、焼き色が足らない場合は、バーナーでつけることも必要となる。
「若鶏半身シリーズ」は、クリスマス需要でも大きく貢献できる商材である。
お店オリジナルのおいしい調理方法で、固定客をつけることが出来れば、確実に囲い込みが可能となる。
ローストチキンをホールで販売することは、コストコがロースターでおいしい商品を販売したことで定着させ固定客が確実についている。
今やおいしいは当たり前で、このおいしいを進化させているのが若鶏半身といえる。
揚げからグリル、ローストなど展開を一気に攻めているため、時代に乗り遅れないためにも、仕入れを強化して販売するとよい。
全食肉が高騰する相場に対応することが2022年の大きな課題となる。
特にロシアのウクライナ侵攻による影響が、家畜の相場に出始めるのが2022年秋。
さらなる円安が生じれば、さらに相場の高騰が発生する。
現状よりも、相場が上がることが確定しているため、利益確保を狙った戦略で、安売りによる売上確保を行なわないことが重要な鍵となる。
安定供給が可能な国への調達網の拡大、国産品へのシフト、安売りから付加価値提案への移行を行なうことで、この未曾有の危機を乗り切る。
【2022 ミートシフト 3大ポイント】
- 輸入肉は調達先を拡大し、安定供給のリスクヘッジを実施
- 国産肉、地産商品の発掘と持続可能な調達網の確保
- 安売り販売から商品の価値販売へ提案シフト
ついに登場!「冷凍焼き上げステーキ」
冷凍コーナー強化が数年喫緊の課題として取り上げられ、冷凍棺桶とも呼ばれていた売場が劇的に進化を遂げている。
かつて冷凍コーナーは、「冷凍 牛すじ串」や「ロールキャベツ、結着サイコロステーキ」などがトレー販売されていたが、夏場は冬眠状態が続いていたため、トレーに霜がびっしりと付いていた状態で商品を販売していた。
今となってはこのような売場は見なくなった。
第一世代「冷凍半製品」の襲来。
メーカーが作る衣付き半製品のコンシューマ商品が、お弁当商材の注目を集め、ハッシュドポテトやアメリカンドッグなどお肉製品ではないカテゴリの商品の販売で、売上を作り始めた。
第二世代「冷凍真空タレ付け肉」の台頭。
焼肉ブーム、ジンギスカンブームが到来し、真空タレ付け焼肉やジンギスカンなど販売されるようになり、さらなる進化を遂げる。
第三世代「冷凍ジャンボパック」の売場占拠。
ジャンボパックやメガパックにより、パック単価が劇的に上昇した冷凍コーナー。ブラジル産鶏モモなど脱気パックが冷凍コーナーに展開されるようになる。
第四世代「バラ凍結肉」による冷凍時代の革新。
精肉商品も家庭では冷凍されることを先回りして、冷凍庫保存用にチャック付きの「バラ凍結肉」が販売される。包装形態がスタンドパックや三包シール包装など、メーカーの新しい取り組みが先行して売場を席巻。
「パラパラミンチ、バラスライス、ロース生姜焼きポーションカット」など展開した。この頃、オーガニックビーフステーキのポーションカットなども販売されはじめ、冷凍コーナーが飛躍的に活性化し始めた。
第五世代「冷凍ミールキット、冷凍焼鳥」来襲。
袋を開けて炒めるだけ、焼くだけ、湯煎だけで1食完成するような、簡便食の冷凍化が進む。冷凍技術が一気に進歩し、冷凍=不味い という一線を一気に飛び越えた、冷凍の革新が起こる。
第六世代「冷凍焼き上げ肉」の登場。
冷凍技術が進化した事で、焼き上げ商品も冷凍することが可能に。
焼きあげ状態の香ばしさを残しつつ、食事前に簡単に加熱して食べることが出来る。
現状の完成度からすると、まだまだ進化することが予想される。
現時点のレシピでは、フライパンで軽く焼くという行程を挟んでいたりするため、焼き上げ完全体ではない。しかし、低温調理した商品などバリエーションが急拡大し、売場を広げている。
次なる進化として、レンジ調理で1食(1食分のカロリーやたんぱく質など摂取でき)食べることが出来る、管理栄養士監修弁当タイプの冷凍商品が近未来の主流になる。
これは、現在の冷凍食品コーナーにすでに登場し始めており、このシリーズがごく一般的に浸透してしまった場合、生鮮食料品の売上は格段に下降することは間違いない。
ミレニアル世代やZ世代が社会に出始め、フライパンもまな板も包丁もない世帯が増えていることにある。
そんな世帯でも電子レンジは完備している。
そのため、冷凍食品でも1食食べることが出来る商品があれば、その商品に飛びつく可能性は高い。
ただ、幸いなことにZ世代は、マスで動くことが少ない傾向にあるようで、全体が電子レンジ調理に依存するわけではなさそうだ。
押さえておきたい最新動向「肉塊」
輸入牛タンの価格が高騰し、容易に値上げをすると消費者から信頼感がなくなってしまう。
そのため、商品化を変化することでできるだけ、同じ商品群の価値を下げないようにすることがポイントとなる。
牛タンは焼肉用の商品化が通常商品であると思う。そこで、牛タンを半分にカットして肉塊販売を行なう。
商品化のポイントは、牛タンを真横水平切りして、下半分(タン下側)を肉塊として販売する。価格は安価に抑え安さを演出。
残った上半分は、タン下よりも柔らかいため、価格を上げて販売する。
タン元は上タン用で厚切りカット、タン中側は5mmカットをして魅力ある商品化を行なう。
同じブロック販売でも、ブロックを取る場所と残った部分と合わせて販売し、マージンミックスして粗利が残る合理的な販売方法に切り替えると良い。
単純に、牛タンを効率的にブロックはブロック用、焼肉は焼肉用と切るだけでは、同じ量を製造しても、儲けは出ないので、注意が必要である。
「精肉情報戦」の時代へ
精肉販売の仕事は今や世界を巻き込んだ情報戦となっている。
地方のスーパーだから関係ないという他人事ではなくなっており、相場は世界情勢に左右され、販売する商品すら安定調達できないのが、今の日本の流通業となっている。
裏を返せば、安定調達できる場所から商品は調達することで回避できる。
仕入れ先は、いつも同じ場所という今までの固定概念からの脱却が、今を生き抜く精肉の知恵である。
調達や販売方法に工夫をするだけで、競合よりも一歩前に出ることが出来る。
外部環境は、たくさん食べる消費者ではなく、適正量を適量食べる風潮へ変わり始めているため、量ではなく、食べ方を地域に合わせて提案していくコトが重要である。