生活者環境の変化
2023年5月、ようやく新型コロナが5類に分類され、日本の生活環境が依然と同じような暮らしぶりに戻ってきた。
総務省の「家計調査」(2人以上の世帯)から、22年はコロナ禍3年目という状況下、消費支出は349万円(前年比4.2%増)、このうち食料費は98万円(同3.1%増)と、22年の値上げが反映されていた。
月別支出推移を消費支出、食料費支出で見てみると、それぞれやや回復傾向にあることが伺える。
特に毎年12月の消費が、20年315万円、21年317万円、328万円と年々増加しており、確実に消費が戻りつつあることが伺える。家計調査(二人以上の世帯)名目増減率の公表値を見ると、22年4.2%増、食料3.1%増という結果が出ている。
次に野菜、肉類、魚介類、調理食品というカテゴリ分類別の支出を見てみると、生鮮三品は横ばいからやや微減な流れに見えるのに対して、調理食品は年々支出金額が増加している事が見て取れる。
22年の家計調査(二人以上の世帯)名目増減率では、野菜・海藻-0.8%肉類-0.1%、魚介-2.5%に対して、調理食品3.8%増と言う結果が出ている。
肉類の品目分類別の消費金額を見てみると、年間通して消費金額が高い豚肉はほぼ横ばいで23年にやや微増傾向であるが、特に牛肉は明らかな減少傾向にある事がわかる。2020年コロナで量販店に特需がやってきたと騒いでいた頃、肉類の名目増減率を見ると20年10.9%と大きく伸びていたことが伺えるが、21年22年と年々減少している。
大きく躍進をしている調理食品であるが、もう少し分類を分けてみると、主的調理食品(米や麺類、パン類などを含んだ調理食品)がやや微増、弁当やすしは、ほぼ横ばいであるのに対して、他の調理食品の項目が伸びている。
他の調理食品は、主的調理食品に分類されない調理食品のことで、肉に関係するメニューでは、カツレツ、しゅうまい、ぎょうざ、やきとり、ハンバーグなどが当てはまる。
そのほかにもサラダ、天ぷら・フライなども含まれる。
惣菜コーナーを見てもわかる通り、主力の天ぷら・フライは圧倒的に売上の核となっている。
天ぷら・フライにはえび天ぷら、串カツ、ハムカツ、メンチカツ、ささみチーズカツ、から揚げ、フライドチキンが含まれている。この数年を見ていても、から揚げやフライドチキンのバリエーションが増えている事で、数字を延ばしていると言っても過言ではない。
天ぷら・フライを除いた他の調理食品の品目分類別支出金額推移で、最も動きが活発なのがやきとりで、季節要因が強く出ているメニューと言うことが伺える。
とくに夏場に需要が高く、秋冬に需要が低くなる傾向にある事が伺える。次に、カツレツが年々増加傾向にある。カツレツの項目に、トンカツ、ビーフカツ、チキンカツ、ささみフライなども含まれている。
一方で、無人店舗なども増えている影響なのか、ぎょうざは年々鈍化傾向。
ハンバーグ、しゅうまいは横ばい、もしくは微増である。焼売はバリエーションも少なく、惣菜でなくても、日配品や冷凍でも冷凍食品でも
販売されており、こだわりが必要であると考えられる。
ハンバーグに関しても同様、新商品が出ていないのが、横ばいの原因とも捉えられる。
伸びている他の調理食品を狙うミート惣菜
前章で裏付けされた通り、家計調査の他の調理食品の分類を今年は伸ばしていくことが、効率よく売上を作ると言うこと他ならない。
最も動きの良い「天ぷら・フライ」の分類では、定番の鶏唐揚げの売り込みは必須となる。
【銘柄鶏モモ大粒から揚げ】
惣菜で販売する鶏唐揚げは、醤油ベースの定番から塩麹、明太味など、味のバリエーションもしっかりと品揃えしている。
そのため、ミート惣菜では、肉そのものの素材を生かした、銘柄鶏使用お肉屋さんのこだわりから揚げの展開が良い。銘柄を謳うことで、精肉の銘柄の浸透にもつながる。
また、ブラジル産鶏モモ切り身では25/30などの大きさを使用する事が多いため、特徴を出すために40/50など大きめの切り身を使用するなど工夫することもポイントとなる。大きい切り身は家庭では、中心まで綺麗に火を通す事が難しく、購入するきっかけとなる。
【銘柄鶏半身揚げ】
惣菜では生々しく定着しにくい商材で、精肉のミート惣菜だと美味しそうに見えるメニューの一つが「国産銘柄ひな鶏半身揚げ」である。
若鶏中抜きを使用すると、大きすぎて火を通すのに時間が掛かるだけで無く、食べにくく、価格も高くなってしまう。
そこで、ひな鶏や中雛を使用した半身揚げにすることで、価格も1000円以内に抑えることができ、売場も大きく取る必要がない。調理もスチコンで仕上げるか、フライヤーで素揚げにしてから味付けをするか、店舗の機材とオペレーションで決めることが出来る。
味のバリエーションは、素材の味を生かした塩味、照り焼きに仕上げたローストチキン、バーベキューラブを揉み込んだバーベキュー味、味付けの定番山賊焼など展開可能である。
【串なし焼鳥】
天ぷら・フライを除いた他の調理食品の品目分類別支出金額推移で、最も動きが活発な焼鳥を避けることは出来ない。
惣菜では、品揃えとして安い中国産やタイ産の焼き上げ焼鳥串を販売することが多い。スチーム串や焼き揚げの焼鳥は、串にお肉が引っ付いてしまって食べにくい場合も少なくない。
そこで、おつまみにも使うことが出来、数人でもシェアすることが出来る、串なしタイプの焼鳥を販売する。
さらに、惣菜との差別化として、こだわりの銘柄鶏を使用した焼鳥を販売する。店内で焼き上げることで、ジューシーでふっくら仕上がる。販売時間が長くなると、水分が飛んでお肉がカピカピになることも想定して、塩味にもオイルのコーティングを施すことで、持ち帰った後でもジューシーに食べる事が出来る。
タレと塩以外にも炭火風なども見た目が変わり、購入動機につながる。
種類としては、タレと塩で、ねぎま、皮、つくね、炭火焼風親鶏、にんにくモモ、砂肝、レバー、せせりなど、ほぼすべての鶏肉の部位を活用することが出来る。食品ロス削減、余すこと無く食材を使う、サステナブルメニューと言える。
【ベーコンポテトサラダ】
他の調理食品で忘れてはならないのが「ミートサラダ」である。
なめらかなポテトサラダと葉物、脂肪の少ないカットベーコンに、ピリ辛ソースを少しかけた1P300円以内の軽いサラダをミート惣菜で販売する。1人前300円以内のミートサラダは、小のおかずとして購入しやすく、葉物野菜のサラダだけだと物足りないという生活者が手に取りやすい商品である。
お肉のバリエーションとしては、店舗で品揃えのあるローストビーフやローストポーク、サラダチキン、焼豚、チャーシュー、蒸し鶏、串なし焼鳥など、見た目の異なるアイテムを入れ替えるだけでも、1週間毎日異なるおかずを楽しむことが出来るようになる。
量販店の購入者の多くは女性で、主婦だけでなく会社帰りの買い物を楽しむ方も多い。
仕事帰りとなると、軽いサラダだけでは物足りないため、少したんぱく質を入れたサラダがポイントとなる。ターゲットを女性に絞ると、見た目や内容量も絞られる。透明カップで内容が目で見てわかり、かわいいこと、システムトレーではなく、コンパクトであることも、商品を手に取るかどうかのポイントとなる。
【ローストビーフ寿司】
寿司カテゴリは横ばいであるが、ローストビーフ寿司は確実に売れ筋となっている。
実は日本人の魚離れは、寿司にも影響しており、肉を使用した寿司の売れ行きは急速に上がっている。ローストビーフが好きな消費者は多く、味を知っているため、新商品としての冒険リスクは伴わない。
そのため、発売開始後に一気に売れ筋となっているパターンが多い。
オペレーションも簡単で、シャリに薄切りのローストビーフを巻き付け、塩だれ、刻みネギを乗せるだけで完成する。
塩だれ以外にも、ローストビーフソースやジェルポン、照り焼きダレなど味違いも容易である。
ミート惣菜でローストビーフ巻きやローストビーフ丼なども展開することも、ローストビーフバリエーションとして面白い。
惣菜コーナーと売れるミート惣菜
精肉で作るミート惣菜は、惣菜コーナーと異なり、素材を精肉で販売している銘柄を使用することで、商品に対するアドバンテージを惣菜コーナーの肉惣菜よりも持つことが出来る。
惣菜と商品が似通っていて、区別が付かなくなっているミート惣菜は、価格だけで店内競合となっていないだろうか。
ミート惣菜で販売する商品は、精肉で販売している安心感のある素材を調理した惣菜と位置づけるならば、明らかに惣菜コーナーの商品とは異なる。
2024年ミート惣菜が成功する鍵は、そのまま食べることが出来るメニューとして提供出来ているかどうかである。実は、ものすごく簡単なことであるが、ミート惣菜やおつまみコーナーが売れていない店舗の多くが出来ていない。
売れるミート惣菜は、その商品だけでメニューが完成している。
近年の傾向として、自分で味付けをして楽しむというよりも、美味しく味付けされたものを、手間無くそのまま食べることが出来る商品が選ばれていると言うことである。これは、美味しい商品が当たり前に販売されていて、その美味しい商品を最終的に選ぶという作業を売場で行なっているためである。
例えば、以前は蒸し鶏ほぐしをトレーに入れて販売していれば、消費者が冷やし中華に入れてくれたり、棒々鶏にしてくれたり、アレンジを自分で楽しんでくれていた。
しかし、いまでは、蒸し鶏は単品では売れなくなっている。代わりに、きちんと棒々鶏になっている商品は売れている。
売れるミート惣菜を展開している店舗の売場は、売場が茶色一色になっていない。先にも述べたように、それぞれのトレーやカップの中で、メインディッシュや小のおかずなど一品が完成している商品を販売していれば、必然的に、副菜や彩りの野菜、トッピングなどもされているため、単純に揚げたて惣菜の惣菜店とはなっていない。
商品の特徴や銘柄特徴コトPOPなども掲示されており、購入したくなる売場となっている。自社の売場を客観的に見たときに、惣菜コーナーと同じになっていないか、今一度確認してもらいたい。
体験価値が売上を作る時代へ
ミート惣菜は、精肉で購入したことのあるお肉(素材)を使用した惣菜出あれば、すでに体験した経験があるため、即売上につながる。購入する動機の障壁が1段低い。
食べたことのある体験済みのメニューが、自分が知っている素材で作られていれば、さらに障壁は低くなる。価格は低ければなお良い。1品300円くらいならば、会社帰りの女性や、酒の肴におつまみを欲している男性も、気軽に購入に至る金額である。見た目が良ければ、手に取ってしまう。美味しい体験をすれば、リピートしてさらに300円の売上につながる。
一度美味しい体験をすれば、1回の購入だけでなく2回目、3回目に繋がり、大きな売上につながっていく。体験価値が売上を作る時代に入っている。
美味しいことは当たり前。価格は相対評価ではなく、商品価値に相応な値段をつけることで、消費者は納得して購入に至る。食体験させることが、売上のすべてを握っている。