昨年より特に注目が集まっている物流問題。
物流業界ではドライバー不足や燃料費の高騰、2024年問題(労働時間規制の強化)などの影響で、配送の遅延やコスト増加が深刻化している。あまり表だっていないが、物流会社ではトラックGメンによる勧告など指導が入っている企業も存在する。
店舗で働いているとあまり感じる事が無いかもしれないが、この勧告などが続くと、当然ながら業務停止となり、急に商品が届かない事態が起きてしまう。数年後には、地方都市を中心に商品が実際に届かなくなる事が起きようとしている。
商品が届いている間は、実感が無く他人事かもしれないが、身近な話で言うと、(全く状況は異なるが)「パートさんの年間の給料が103万円に近いので、もう私仕事が出来ません」という状況のようなもので、トラックドライバーが「時間外労働上限が960時間なので、私はもう運べません」と、人そのものがいなくなるのと同じ状況となる。
そうならないためにも、精肉売場においても、商品の安定供給を確保しつつ、効率的な販売戦略を立てることが求められている。物流問題に積極的に対応するために精肉売場で可能な具体的な対策を再度考えたいと思う。
1、発注と在庫管理の最適化
- 適正在庫の維持
物流の遅延や不安定な供給に備え、適正在庫を確保することが重要。
これには、企業努力も必要で、過剰在庫は廃棄ロスを増やし、逆に在庫が少なすぎると欠品につながるため、需要予測を活用しながら適正な在庫水準を維持する必要がある。
在庫回転日数を、極限まで減らすことを、今までは目指してきたと思うが、今後は、商品が届く曜日が限られたり、1日複数回配送が1日1回配送になるなど、在庫回転日数は確実に伸びる。その部分は、本社もしっかりと寛容に対応することが必要である。
鶏肉などの様に、賞味期限が短い商品は、在庫回転日数を短くすることは難しいが、賞味期限の長い輸入牛や輸入豚をうまく活用することで、物流問題にも貢献出来る。
☆1回の発注量を増やして、納品回数を減らす!(トラックの積載効率があがります) - リードタイムの見直し
物流の遅延を考慮し、通常よりも早めの発注、余裕を持った発注を行うことで、急な欠品を防ぐことが出来る。
特に繁忙期には、物流の混雑を避けるために発注スケジュールを前倒しにする工夫が必要である。特に、輸入牛や輸入豚は、船便で2~3週間かけて日本に到着するため、前日発注で修正が出来ていたのは、メーカーや商社の在庫と物流がしっかりとしていたためと、再認識してもらいたい。
☆発注精度を上げ計画的な仕入れを行なう(トラックの計画的な運行が出来ます)
2、無理な安売りと無計画な特売の撲滅
- 予算を到達させるための無理な特売
安く売れば売り上げが上がる。
その負荷は、今までメーカーや商社が原料を安く納品するということで、なんとか賄えていた。しかし、今後、物流面も考慮すると、無理な安売りは、物流の配送面で荷量が大きく変わるため、特売分は運べないというリスクが共合う。
☆計画的な特売計画とタイムサービス実施(トラックの特急便など無理な運行回避)
3、商品の品揃えと代替商品の活用
- 輸入品と国産品のバランス調整
物流の影響を受けやすい輸入精肉については、供給リスクを分散するために国産品とのバランスを考慮した仕入れを行なう。特に、輸送コストが高騰している時期には、国産品の比率を高めることで価格の安定を図ることが可能となる。 - 代替商品の提案
特定の部位が欠品した際に、他の部位や別の肉種(牛→豚など)を代替品として商品化できるよう、知識を強化することも出来るようになりたい。特に、ステーキ、焼肉、スライスは牛肉と豚肉を上手く活用して代替提案したい。また、POPやレシピ提案を通じて、消費者に新たな選択肢を提供することも重要。ただし、広告商品は代替できないため、発注精度を上げる必要はある。
4、物流負荷の軽減と仕入れ先との連携
- 共同配送の活用
メーカーの共同配送や地域のスーパーと連携し、共同配送を活用することで、物流コストを削減しながら安定した供給を維持することも、本社機能では検討を進める必要が出てきている。特に精肉は、冷凍、チルドなど他の常温便とは異なるため、検討の余地が残されている。
☆PCやTCの有効活用(メーカー、商社、量販店の配送網の効率化による、ドライバー不足解消) - 地場の食肉業者との連携強化
地域の食肉業者と直接取引を増やすことで、長距離輸送の負担を軽減し、安定供給を確保できる。輸入肉は日付が長いが、メーカーや商社が在庫を持ち、遠方から配送しなくてはならないため、地産地消を増やすことも必要となる。
物流問題に対応するためには、発注・在庫管理の最適化、品揃えの工夫、仕入れ先との連携といった多方面からのアプローチが必要である。特に、売場での対応としては、計画的な原料発注や代替商品の提案が出来ることも対応策の一つとなる。これらの対策を総合的に実施することで、物流の影響を最小限に抑えながら、安定した売場運営と売上の確保につなげたい。
売り上げは計画的に
物流問題を解決するには、計画的な仕入れと商品化、販売が必要不可欠である。かつては、商品が無くなったから持ってきて!とメーカーに無理を言って、商品を当日に持ってこさせるというのが当たり前だった時代もある。しかし、人手不足から配送する人員が確保出来ていないため、計画を綿密に立てるというのが必要不可欠となっている。
そのため、一つの部位から複数の商品を製造する能力や、毎日商品化する部位から焼肉セットを作り、付加価値提案するなどの、工夫や応用力が必要不可欠となってきている。
安売りして売り上げを作ってきていた時代から、頭を使って売り上げを作る時代へと、切り替えていかなくてはならない。環境が大きく変わっている今、いかに柔軟に対応していくかが、今後の売り上げ、仕入れの鍵となる。仕入れや商品知識、計画的な製造計画など、見直して、余裕を持った精肉を運営してもらいたい。