加工肉のコーナーカテゴリー化を明確にする

WHO報道での加工肉の売上激減

「世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)は2015年10月26日、ハムやソーセージなどの加工肉を「人に対し発がん性がある」物質に指定した。」との報道がなされ、年末商戦を前に加工肉の売上を直撃した。
総務省統計局の家計調査(全国二人以上世帯)のデータを見ると、加工肉の売上金額は10月(前年同月比)95%、11月89%、12月98.2%と推移した。1月2月は前年同月比100%を越しているものの、今年に入ってからも軒並み前年同月比で100%を割る実績となってしまっている。

加工肉売上金額対前年比推移

加工肉売上金額対前年比推移
WHOの発表があった時期も「年末商戦」にあたり、お歳暮商戦に大打撃を与えたことは記憶に新しい。
特に売上金額の大きい年末に前年90%近くまで下がると極めて大きな売り上げがなくなったと言っても過言ではない。

ターゲットを明確にした売場作り

今までの加工肉売場は、ソーセージ、ハム、ベーコン、ブロック(焼き豚、煮豚、ロケットハム)、ナゲットやハンバーグとお弁当用ミニウィンナー関連を、なんとなく集合陳列していた。
しかし、今回の報道を機会に、量販店でもしっかりとした加工肉売場が出来始めてきている。

【健康志向消費者向け】
加工肉売場に塩分30%カットの「減塩」や「糖質ゼロ」、塩漬工程で発色剤を使用しない「無塩漬」など、健康志向イメージでコーナー化を行なう企業が多くなってきたことは一つの変化である。
これは、発がん性報道だけでなく、健康増進法が制定され、メタボリックや糖尿病に対する意識付けが行なわれてきたことにも影響する。
以前よりメーカー各社では、「減塩」や「糖質ゼロ」などの商品は出していたが、量販店側が大きなメリットを感じず、品揃えの一つとして商品を陳列していた。
同じハムやベーコンを食べるなら、減塩や糖質に気を使おうという消費者の意識と健康志向商品のシリーズも多く品揃えされたことにより、売場でもカテゴリー陳列しやすく単なる品揃えのくくりから脱却した加工肉の売場を作り始めたという事である。

【嗜好品を求む消費者向け】
加工肉売場でここ数年、様変わりしてきているのが、輸入畜肉加工品である。
例えば、イタリアの食肉加工品の日本への輸出量は、2015年3,358トン(3,420万ユーロ≒44億5千万円、1_=130円)で、前年と比較するとやや減少(輸出数量4.6%減、金額2.6%減)しているものの、7年~8年で2倍に伸びている。
この内訳をみると、イタリア産食肉加工品の46%は生ハム、パンチェッタ(24%)、サラミ(15%)、モルタデッラならびにソーセージ(10%)、熱処理されたハム(3%)となっている。
特に「生ハム」は消費者にとっても、ハムやベーコンとは別の食べ物のような扱いがされているので、生ハムコーナーの充実は加工肉の売上アップに貢献できると考えられる。
以前にも増して、ワインなどの嗜好品を家で楽しむ機会も増えてきており、生ハム需要が高くなっているのは言うまでもない。
ワインとのマリア―ジュとしては、生ハム、チーズ、サラミなどが同じカテゴリーで販売しやすいため、マリア―ジュコーナーなども売場作りとしてはセンスが問われることとなる。
イタリアの食肉加工品の日本への輸出量
イタリアの食肉加工品の日本への輸出量

過去にとらわれない売場作りが必要

量販店は加工肉の売上を回復させるため、売上を上げるために様々な取組を行なってきた。
加工肉売場が何十年も前から売場は変わっておらず、価格だけで勝負していた事を考えると、変革のタイミングであると言える。
商品に対する価値や用途を知り、陳列を熟考して売場作りを行なう必要がある。

システムトレーと違い、商品によって横幅の大きさなどが違うため、綺麗な縦陳列が難しい加工肉は、棚替えなど行なった当初は綺麗に陳列出来ていても、それを継続することが困難である。
さらに、加工肉売場は狭く限られたスペースで縦陳列することは難しいと思われがちだが、POSデータからABC分析すると、「何が売れているか?売れていないか」どうかは明確に把握できる。まずはデータ分析を行なう事からスタートするとよい。

加工肉の売場作りは、構成比の高いソーセージ、ハム、ベーコンを主軸とし、「糖質ゼロ」などの健康志向コーナー、「生ハム」などのマリア―ジュコーナーなど、精肉のしゃぶしゃぶコーナーやステーキコーナーのように、分かりやすい売場作りをすることがポイントとなる。
通常アイテムと同じようにただ集合陳列するだけでは、同じ商品のメーカー違いや商品違いとして消費者はとらえてしまうため、縦POPや装飾など工夫して明らかに違う売場作りを行なうことで、商品力を上げることが出来るようになる。
今までの加工肉の売場は、たくさん陳列している方が売れると錯覚し、雑然とギュウギュウに商品を詰め込む傾向にあったが、トレンドをとらえて効率的に商品を売ることも、加工肉販売技術として、今後は身に付ける必要がある。

関西スーパー伊丹中央店の無塩漬コーナー