オーガニック・ナチュラルの時代へ

イオンスタイルでは、オーガニックやナチュラルの商品を、大々的に販売をしている。
欧米では既に定着してきているオーガニックやナチュラルの商品が、日本でも販売が始まったといえる。
日本でオーガニックと言えば、農薬を使っていない野菜などで、価格が高い商品程度にしか思っていない消費者も多いが、精肉でもオーガニックやナチュラルは存在する。
簡単に説明すると、「オーガニック」は有毒な農薬や化学肥料、合成物質を使わず、環境や人体に優しい方法で生産した食品で、「ナチュラル」は肉類の生産に使用される家畜には、成長ホルモン剤や抗生物質、哺乳類動物・鳥類、水生生物由来の飼料を与えてはならないというルールがある。
牛肉に抗生物質を与えず、飼料なども完全なオーガニック商品を使うとなると、必然的に価格は高くなってしまう。
人間でも大人まで一度も風邪もひかず、予防注射もせず病気になったことがないという人に出くわしたことがないのと同様である。
碑文谷は東京都内の富裕層も住む地域が周りにあるため、市場調査を綿密に行ったうえでの品ぞろえであると思われるが、その価値を消費者が今後どう判断するかは注目したい。

obeオーガニックビーフ売場

オーストラリアのオーガニック指定された農場で出産~出荷まで飼育された牛肉を販売している。オーストラリア産オーガニックビーフモモステーキ用(らんぷ)で100g429円。
A3等級の和牛モモ特売程度の価格帯である。

グリーンアイ 国産Natural PORK売場

POPには、「まっすぐ、きれいに育てました。」“抗生物質不使用”“合成抗菌剤不使用”“遺伝子組換え飼料不使用”と明確に書かれており、オーガニックビーフよりも明確な違いが記載されてわかりやすい。
裏を返すと、ナチュラルポーク以外は、薬を使って汚いという風にも捉えることが出来る。
しかし、通常豚もイオンスタイルでは取り扱っている為、相反する商品を陳列し、消費者の意見を売場で直接問うというスタイルにしていると言える。
こちらも価格帯は高く、「ナチュラルポークバラうす切り(国産)」は100g375円、同モモ切りおとし100g321円と黒豚以上の価格設定をおこなっている。

プライベートブランドの進化

イオンの精肉ブランドと言えば、「タスマニアビーフ」や「純輝鶏」など思い浮かぶが、そのブランド商品がもう一歩前進した展開を見せている。

TASMANIA BEEF AUG74

TOPVALUタスマニアビーフは、イオンの豪州産牛肉の代名詞として以前より認知されてきたが、こちらも成長ホルモン剤、抗生物質、遺伝子組換え飼料を使用せず、自然の穀物で育てるという、自然に育てられた牛肉という部分をしっかりと打ち出し、AUG74としてリブランドして発売を始めている。

TOPVALU 純輝鶏プライムローストチキン 548円

岩塩をまぶした純輝鶏むね肉まるごと1枚を高温でローストしたローストチキン(レンジ対応商品)を、TOPVALUブランドの純輝鶏で作っている。
プライベートブランドの食肉をもちいて加工品を作ることによって、加工品への安心感を生み出している。
「純輝鶏」自体、抗生物質や合成抗菌剤を使用しない飼料で育てている。
こちらは病気予防のため、ワクチンは投与している旨が記載されており、ナチュラルとは謳えないため、ナチュラルチキンのネーミングとなっていないと思われる。

イオンスタイルでは、プライベートブランドを以前より展開していたが、さらに差別化させるために、抗生物質、合成抗菌剤など使用しない安心で安全な商品を提供していることをしっかりと訴求ポイントとして出している。
他社のプライベートブランドとの差別化ポイントとして、ネーミングだけのブランドではないことを売場で訴求し一歩先のブランド販促をおこなっている。

本物志向の加工品売場へ

長年変わらなかったハムソーセージ売場に変化をもたらせるのだろうか。
碑文谷のハムソーセージ売場は、精肉売場(牛豚鶏挽肉)の次に配置されていない。
日配品の並びに陳列されており、一つの変化が明らかに売場に表現されていた。

スペイン産 ハモンイベリコスライス 50g680円

加工品売場で生ハムと言えば、日本のラックスハム(生ハム)が一般的である。
しかし、近年輸入品を多く扱う店舗も多くなり、増加傾向にあるヨーロッパのプロシュートなど、本場の生ハムを売場で目にするようになってきた。
碑文谷では加工品売場の一番目立つエンド部分にイタリア産プロシュート、スペイン産ハモンイベリコなど、ヨーロッパ産の本場の生ハムを種類豊富に陳列している。
写真はスペイン産「ハモンイベリコスライス」で50g680円と日本のラックスハムの2倍近いパック単価で販売している。
切落しタイプのものや、ツインパックになって購入しやすい商品も陳列されている。
イオンの加工品売場でトップバリュを前面に打ち出した売場でないところも、イオンの売場では画期的であるのかもしれない。
ヨーロッパの加工品は生ハムだけではない。ドイツのコールブルスト(フランクフルト)、スペインの白カビサラミなど海外の輸入商品の品揃えも、しっかりと充実させている。

ボヘミア ミートローフ 350g698円

それ以外にもミートローフなども品揃えされており、通常の量販店では楽しめない品ぞろえがイオンスタイルには存在した。
ワインなども充実した店舗であるため、ワインと生ハムのマリアージュが売場でも繰り広げられている。

本来の肉を楽しむ売場作りへ進化

精肉はオーガニックやナチュラルを中心とした、自然派のお肉を売場に陳列し安全・安心な食生活を応援するスタイルへと変化してきている。
ただ、現時点日本で購入できるオーガニックやナチュラルの商品は需要と供給のバランスから、価格が極めて高く消費者の懐状況とやや乖離している感じに思われる。
そのため、通常の国産牛や白豚など低価格で購入することが出来る商品もしっかりと品揃えすることで、売場として幅広く消費者を受け入れる体制を整えていると言える。
加工品では日本スタイルの生ハム(ラックスハム)やハム、ソーセージだけでなく、本場ヨーロッパのブッチャーショップで販売しているプロシュートハム、サラミ、ドイツのブルスト、ミートローフなども品揃えし、本格的な加工品売場となっている。
その売場も精肉ではなく日配品売場に隣接し、位置づけの変更も新たな試みである。
オーガニックやナチュラルな畜肉、ヨーロッパのプロシュートハムなどいずれも価格は高く、安価な商品を購入していた消費者がすぐにブランドスイッチするわけではないが、先々で需要が増えることを示唆していると思われる。