精肉の「核アイテム」研究
近年、インターネットを中心にアイキャッチとなるような見栄えのする外食店のメニューや商品は、「インスタ映え」という言葉とともに、インパクト重視で注目を集めてきた。
簡単に言うと「写真映え」する商品に関しては、一部生活者に注目を集めてきたということである。しかし、量販店では、和牛の霜降りの美味しそうな写真映えする商品だからといって、売れる商品とは限らない。むしろ、店内で“おっ!”となる程度で、購買行動になかなか移らない。
実際に、お店のPOSデータでABC分析を行ってみると、Aランクの上位商品は、「牛小間切れ、豚肩切落とし、鶏もも肉切り身(唐揚げ用)」などである。
本当に売れる商品は、生活に密着した商品であり、SNSにアップするほどの見栄えのするようなインパクトのある商品かというと、そういうわけではない。
今回は、精肉で核となる商品を育成していくという観点で、「Aランク」の商品にしてく商品を3つ提案する。
《核提案1「牛しゃぶしゃぶ時代の再来」》
今では「しゃぶしゃぶ」は、豚肉が主流となり、牛肉のしゃぶしゃぶ需要はほとんどないといっても過言ではない。
しかし、20年くらい前までは、しゃぶしゃぶコーナーは牛肉が主体の売場であった。
それは、牛の「0-157、BSE, 口蹄疫」などの疾病などの影響で、豚肉に嗜好が移った。
また、国産牛肉相場の高騰、牛肉の世界的な需要拡大で、輸入牛肉も価格が高騰し、安い豚肉の需要が拡大していったからだ。
そこで、「牛しゃぶしゃぶ用」を拡販することで、豚肉よりも客単価をあげて売上を伸ばしていく。
「豚しゃぶしゃぶ用」の主流は、国産豚ロースや肩ロースで、100g200円前後の価格帯である。
価格帯に差をつけるため、100g380円程度の価格帯で販売を想定すると、「国産牛肩、モモ部位」を使用した商品化となる。
ターゲットは、赤身を好む50歳以上の消費者と想定。かつて、牛肉のしゃぶしゃぶを食べていた世代に需要喚起を促す。
国産牛肩しゃぶしゃぶ用は丸皿でプチ贅沢を表現した花盛り。
立体的に盛り付けることで売場が華やかになる。
150g580円、300g980円の2SKUで展開。関連販売で、ポン酢とゴマダレを品揃え。ゴマダレは健康にも良いという訴求で、「牛しゃぶサラダ提案」も平行して行うとよい。
《核提案2「銘柄豚希少部位提案」》
ABC分析のAランクに入る商品に、豚小間切れ(豚切落とし)がある。
部位としては、肩、ももを使用して商品化しているが、豚モモの外モモ部分は一部店舗で以前から、豚モモスライスで商品化しているように、小割をして綺麗な商品化をすれば、付加価値商品となる。
小間切れよりも単価を上げることも可能なため、小割の部位名を使った商品を展開していく。
豚モモは、「外モモ、うちモモ、ランプ、シンタマ」で部位を分割した商品化に変えていく。
外モモは部位が大きくスライスどりしやすいため、外モモスライスや切落としで商品化。
うちモモやシンタマは豚一口カツ、ランプは豚ランプステーキに商品化できる。
形の綺麗な部分のみ使用し、残りは小間切れにしてしまうことがポイント。
判面が綺麗な豚外モモはスライス、切落としで断面をしっかりと見せる商品化がポイント。
脂肪は5mmアンダーでトリミングして脂肪を少し残すと商品が美しく見え、調理時にも脂肪の美味しい味が残る。
小間切れが100g128円で販売しているところ、外モモスライスは100g148円で20円程度高く価格設定し、粗利益確保を行う。
《核提3「簡便商材でベースアイテム強化」》
簡便メニューは過去何十年も提案を行ってきており、味付け商材からパン粉付けの半製品まで品揃えがある。
しかし、根強い韓流ブームでプルコギやタッカルビなどは定番商品として根付いてきている。
タッカルビはチーズをトッピングした、「チーズタッカルビ」が爆発的に売れ筋となってきている。この流れに便乗して、プルコギに関しても、チーズプルコギ提案などメニューに一工夫加えた提案を行うと面白い。
味付けの「プルコギ」は、量販できるアイテムであることがキーポイントである。
豚肉ばかりでなく、牛肉のスライスの商品化も「切り落とし」ばかりが主流で、売れ筋が「切り落とし」や「小間切れ」になってきている。
これが続くと、売り場が単調になり、他の部位のスライスの「小間切れ化」が進んでしまう。
そこで、「小間切れ」に匹敵する、買い上げ点数の高い商品の導入が必要になる。
それが、安い輸入牛部位の、ショートプレートやポイント・ナーベルの、バラ部位を使った「牛味付けプルコギ」である。
Costcoは、US産チャックアイロールを使用したプルコギを、店舗当たり、月間数十トン余りを販売し、超売れ筋の、核アイテムになっている。
従って、味付のタレが、売価に転嫁でき、価格訴求もしやすく、利益確保もしやすい「バラ部位」のプルコギか、Costcoが、火をつけた「肩ロース部位」での「プルコギ」を販売拡大する。
プルコギでも、メニュー提案できる。
例えば、「チーズプルコギ」を提案し、チーズブームに便乗する。
関連販売でチーズをクロス販売する。バラ部位で、価格訴求しても良いが、バラ部位で、利益確保を狙う提案も可能。チーズはトッピングせず、関連販売にすることで、値入率を下げることなく提案もできる。
また、「にんにくの芽入り」など、プルコギのバリエーションを増やして、この分野のカテゴリーを増やしていくことが重要である。
来部門頻度を増やす
店でポイントカードなどを発行している企業は、感覚的ではなく正確にお客様の来店頻度を知ることが出来る。レジ通過人数ではなく、ポイントカードを有している顧客は、ほぼ毎日何かしらの購入を行っているのではないかと思う。毎日の買い物がなければ、家庭で食事が出来ないからである。
もちろん、週に1度しかスーパーに行かない消費者もいるが、注目すべきポイントは精肉部門における来部門頻度を上げること、つまり買い上げ点数を上げていくことに他ならない。
買い上げ点数を上げるために、実態を把握する必要があり、簡単にPI値とABC分析で、精肉部門の人気調査を行うとよい。
PI値:お客様の支持率という指標(1000人あたりの購入点数)であり、精肉部門の商品がどれだけ支持されているのか、視覚的に見ることが出来る。
数量PI値 = 買上点数 ÷ 客数
ABC分析:青果部門であると、常備野菜と呼ばれる、ジャガイモ、人参、たまねぎなどのAランク商品が売上のベースとなるが、精肉も同様、常備肉を自店で購入してもらうような売場にしていく必要がある。
そのため、ABC分析のAランクである、日常買いする商品を増やすことで、買い上げ点数のベースアップを図ることが重要な鍵となる。ABランクは、売上の8割を占めるグループに属している、稼ぎ頭である。
売上を稼ぐだけの量も製造しなくてはならないため、オペレーションのよい商品であることが前提となる。そのため、シンプルな商品であることが、稼ぎ頭になるということである。