2018年11月16日に「サミットストア三田店」が東京·港区にオープン、12月4日に「ライフムスブ田町店」が同じ港区にオープンした。住宅街に位置するサミットとJR山手線 田町駅前のライフまでは徒歩20分強(1.6km)程度離れており、また駅を挟んでそれぞれ反対側に立地している。

サミットストア三田店

サミットストア三田店は、完全な地域密着型の店舗で駐車場もない。そのため、ターゲットは一次商圏の地域住民ということ他ならない。営業時間は9時~23時。都心であるため、半径500m圏内に9万7千世帯、1万7千人が暮らしている。単身世帯は53.2%と半数以上を占め、30~59歳の人口が50.7%であるため、キーポイントは「単身」「中年層」という部分となる。
三田店は2階構造なっており、精肉は2階、ミート惣菜は1階の惣菜コーナーにある。ただし、ローストビーフなどの冷惣菜に関しては、2階の精肉コーナーに隣接している。
【サミットストアの売場作り】
エスカレーターを上ると青果、鮮魚から精肉へと展開する。精肉売場は直線ではなく3回折れ曲がった売場となっている。

サミットストア三田店

まずは、牛肉コーナーのステーキ、焼肉コーナーからスタートする。
ステーキは、オーストラリア産アンガス黒牛を使用したサーロインステーキが下段展開。
100g498円と豪州牛でも高めのグレードを品揃えしている。
また、上段においては、北海道産「北のうまみ牛」の交雑牛ブランドで、牛サーロインステーキ用を100g980円で展開。
焼肉は、「いわて和牛」を使用した、かたロース霜降り焼肉用(ザブトン)4等級を100g1184円とこちらも4等級の黒毛和牛でも高単価のものを売り込んでいた。
安価な商材としては、アメリカ産黒牛ロース焼肉用(チョイス)で100g258円など展開しているが、いずれの商品も高めの商材となっている。

いわて和牛

牛肉コーナーのスライスコーナーでは、「いわて和牛」かたロースうす切り(すき焼き用)4等級が100g1084円からレジにて4割引セールを実施。
広告の品で同「いわて和牛」切落としが100g498円、アメリカ産アンガス黒牛ばら切りおとし(チョイス)100g188円で、広告商品では安価な商品も展開しているが、単価は高め設定である。
豚肉コーナーでは、「鹿児島産六白黒豚、イベリコ豚」をアッパー商品に品揃えし、国産豚、輸入豚を展開している。

輸入豚は「3S四元豚」をメインに品揃えしているが、ロースは100g188円で、青森県産豚ロース100g198円と10円しか価格差がなかった。
豚肉コーナーと鶏肉コーナーの間に、「簡便商材(味付け商材)」のコーナーが設置され、縦型トレーで売場作りがされている。
味付けトンテキや味つき焼肉、国内産豚スペアリブを使用したクリスピーポークスペアリブ(味付け)、みつせ鶏や若鶏の味付け商材など比較的安価な商材も展開している。

鶏肉コーナーは、ブランド鶏に九州産「みつせ鶏」を展開。少量パックも展開し単身世帯でも購入しやすい「使いきりコーナー」も設置されていた。鶏肉の価格設定は比較的安価で、岩手産若鶏もも肉100g98円などで展開している。

みつせ鶏

レンジ対応コーナーでは、定番のシュウマイや餃子など1パック358円ラインで展開。野菜入りセットではレンジで本格焼肉セットや豚肉のねぎ塩焼きセットなどレンジ商品をコーナー化して展開している。

本格焼肉セット

「スグうま!そのまま!おつまみ·オードブルコーナー」では、冷惣菜を展開している。
下段にローストビーフやローストポーク、のスライスや厚切り、オードブルセットなども展開し、アイテムの充実を図っている。上段では、サラダチキンや合鴨パストラミなども品揃え。
第一マグネットの角地で展開することで、冷惣菜を牛肉コーナーの前に設置しなくても、売上が確保できるように配置されている。商品の中には、精肉アイテムと同じ「3S四元豚」を使用した、ローストポークなども品揃えしており、ブランドを冷惣菜にも展開している。

産地商品名ユニット売価
岩手いわて和牛サーロインステーキ用4等級1001381
北海道北のうまみ牛サーロインステーキ用(交雑)100980
オーストラリアアンガス黒牛サーロインステーキ用100498
岩手いわて和牛かたロース霜降りステーキ用(ザブトン)4等級100880
岩手いわて和牛かたロース薄切り(すき焼き用)1001084
岩手★いわて和牛切落とし(すき焼き用)100498
アメリカ★アンガス黒牛ばら切りおとし(チョイス)100188
スペインイベリコ豚ロースしゃぶしゃぶ用(解凍)100298
青森豚ロースステーキ用100198
青森豚かたロース切身100238
国産豚ばらしゃぶしゃぶ用100248
アメリカ3S四元豚ロース切身100188
岩手若どりもも肉10098
岩手若どりむね肉10088
岩手若どりもも鍋物・から揚用100158
鹿児島六白黒豚ロース薄切り100380

サミットストアは、単価は比較的高めの商材を多く品揃えし、単身世帯向けの少量使いきりパックや、簡便性の高い商品を多く品揃えしていた。

ライフムスブ田町店

ライフムスブ田町店は、JR山手線·京浜東北線「田町」駅から直結のオフィス·商業施設複合ビルに出店している。
平日はオフィスワーカーもターゲットに朝食や昼食の充実、周辺地域の住民もターゲットにした幅広い展開を想定している。
そのため、営業時間は、平日8時~24時、土日祝は9時30分~24時と、地域のライフスタイルに変化した店舗となっている。
地域住民の属性としては、一次商圏の半径500m以内は5400世帯、9千人、二次商圏の1km圏内で、1万7千世帯、3万2千人となっている。
二次商圏で、単身世帯が51.8%、2人世帯が26.0%で、全体の8割が少人数世帯である。
年齢別人口では、30代が24.7%、40台が17.5%となっている。そのため、ポイントは「少人数世帯」「30-40代」をターゲットにした展開となる。そのため、精肉は、健康、品質にこだわり安全·安心な商品を打ち出すというテーマにのっとり売場作りされている。

ライフムスブ田町店

お店のレイアウトは、一般的な店作りとは異なっており、駅側の入り口付近には惣菜やパン、飲料といった、オフィスワーカーがすぐに購入して食べることが出来る商品が集まっている。
反対側(マンションが並ぶ側で、駅とは反対方向)に、青果、鮮魚をはじめとした生鮮商品が集められている。ターゲットを店内でもうまく住み分けた売場作りとなっている。

精肉を見てみると、青果側(駅とは反対側)からの入り口が客導線の先頭という位置づけで、牛肉、豚肉、鶏肉という順番で陳列されている。
定番の商品の中に、健康志向というキーワードが随所にちりばめられている。
そのひとつが、「脂肪分少なめ!」コーナーで、牛豚鶏の脂肪分が比較的少ない商品を集めたコーナーである。
鶏皮なしムネ肉、豪州産牛肉のモモ薄切りは想像の範疇であるが、豪州産牛肉サーロインステーキなども脂肪をきれいにトリミングして品揃えしている。

脂肪分少なめ!

売場で特徴的なのは、「健康大好き」コーナーが設置されており、オーストラリア産ナチュラルアンガスビーフや北海道産あまに豚、国内産あまに鶏を平台で展開している。

健康大好き

「オーストラリア産ナチュラルアンガスビーフは、抗生物質や成長ホルモンを使用せず、配合飼料も与えていない自然派の牛肉」など、POPでの打ち出しもしっかりとしており、トレーも通常の豪州産牛肉とは違うデザインのものを使用している。

オーストラリア産ナチュラルアンガスビーフ

冷凍ケースでは、オーガニックビーフやオーガニックチキンを品揃えし、世界的にはすでに一般的に販売されているオーガニックシリーズも展開している。

オーガニックビーフ

加工品売場でも、「健康大好き」コーナーが設置されており、無塩せきのハムやベーコン、メーカー商品でも日本ハムのアレルギー対応商品の「みんなの食卓」シリーズや、信州ハムの発色剤·着色料·保存料·リン酸塩を使用しないでつくられたハム·ソーセージ「グリーンマーク」シリーズなど、健康に配慮した商品を販売している。

健康大好き

主な商品の売価(★は特売単価)

産地商品名ユニット売価(税抜)
北海道かみふらの和牛肩ロースしゃぶしゃぶ用6005980
九州黒毛和牛サーロインステーキ用100980
豪州ナチュラルアンガスビーフロースステーキ用100498
豪州牛肉サーロインステーキ用100278
青森牛肉バラカルビ焼用100498
豪州牛モモしゃぶしゃぶ用(長期穀物肥育牛)100298
豪州牛肉モモうす切り(脂肪分少なめ)100258
豪州牛肉肩ロース切落とし100178
北海道あまに豚ロースうす切り100288
鹿児島黒豚小間切れ230480
群馬豚肉ヒレブロック(脂肪分少なめ)100278
群馬豚肉ロースうす切り100198
群馬豚肉バラうす切り100208
群馬豚肩ロース切りおとし100218
米国三元豚肩ロース切りおとし100178
米国★三元豚ロース切り身10098
九州若どりむね肉10088
九州若どりもも肉100138
九州若どりもも切身100148

ライフは、少パックを品揃えしつつ、健康を意識したアイテムをしっかりと訴求。銘柄和牛や銘柄豚を訴求しつつも、豪州牛や白豚、若鶏も品揃えし、幅広い層をターゲットにしたオールマイティ型の売場作りを行っている。

まったく違う方向性で対応

似た商圏に新店舗が2店ほぼ同時に開店しているが、打ち出し方はまったく異なっている。
完全に地域に入り、ターゲットを一次商圏に絞った展開を行ったサミットストア。
少数世帯の地域性と、健康に気を使い始めた30~40代に対して、健康志向を打ち出したライフ。さらに、平日のサラリーマンをターゲットにした店舗作りは、既存店の踏襲型ではなく、個店ベースで調査を行った結果の売場作りであることはいうまでもない。
どちらの企業も切り口は違うが、それぞれのターゲットに対して明確な商品を売場で展開している。
特に今回は、商圏分析をしっかりと行ったうえで、展開アイテムを価格帯から量目、ブランド、付加価値に至るまで、各社が研究した結果が売場に出ているため、新しい都心型店舗での展開の先駆けの一歩となっていることは間違いない。
今回、本文中には記載をしていないが、どちらの企業も、要所要所でアウトパック商品を導入しており、店舗での作業効率も考えて展開している。その面では、どちらの企業もすべてをアウトパックにすることなく、店内での商品化を残しながらうまく作業効率を上げていることと思う。
今後、3ヶ月6ヶ月と経過した時に行われる改廃で、さらに地域のニーズにあった商品に変更し、より地域社会に溶け込んだ売場になっていることを再度確認しに行きたい。