主な取り扱い商品と特徴

精肉部門では、大分類で精肉(生肉)、ハムやソーセージ(通称:ハムソー)と呼ばれる加工肉、精肉部門の惣菜であるミートデリカ(ミート惣菜やオードブル、生食と呼ぶ企業もある)に大きく分類される。
精肉の中でも牛肉や豚肉、鶏肉、ひき肉、冷凍食品と呼ばれる、中分類に区分けされ、さらに、小分類で牛肉の中でも、ステーキ、焼肉、スライス、しゃぶしゃぶなどの用途別の分類(企業によっては、和牛、交雑牛、国産牛、輸入牛の産地やグレードで分類している場合もある)される。近年、中分類で羊肉など、新たな畜種を導入している企業も多い。
小分類の商品は、単品ごとに管理されており、国産牛小間切れ(小)、米国産豚ロース生姜焼用(大)などSKUごとに登録がされている。
取り扱い商品を、量販店の分類で紹介したが、この分類のデータは情報を蓄積し、商品が売れているのか、売れなくなっているのか、過去からの情報から大きな流れをつかむことが出来るひとつの指標となる。

精肉商品の調達

店舗で販売される商品は、商品部(バイヤー)によって仕入れる商品が決められる。その仕入先には大きく3パターンに分類される。
「メーカー系」:日本ハムや伊藤ハム、スターゼンなど、一般消費者にはハム・ソーセージメーカーとして知られているようなメーカーは、加工品以外にも精肉(牛豚鶏羊など)の扱いもある。日本国内だけでなく、海外に農場やパッカー、加工工場を持ち、牛肉や豚肉、鶏肉などの部分肉を仕入れることが出来る。企業によっては、アウトパックの機能も持っており、スライス肉にして量販店や集配センターまで届けることもある。食肉のプロが扱う肉のため、飼料や畜種などにもこだわった商品や銘柄も多い。
「商社系」:丸紅商事や住友商事、伊藤忠商事、三菱商事など、国内外の商品の調達を行っている商社。海外の大手食肉会社から直接仕入れを行い、直接コンテナ単位で牛肉や豚肉を仕入れ、日本国内で販売を行っている。
「地域の畜産会社」日本国内にある各地域の生産者は地元企業に商品を供給する。地産地消には必ず必要な存在である。ただし、仕入量が限られるため、同じブランドを大量に発注すると
欠品する可能性がある。また、牛肉などは個体差による肉質のばらつきも大きくなる傾向にある。
上記の仕入れに関しては、本部の商品部(バイヤー)が開拓をし、仕入れを行うため、実際に店舗に配属になった社員が直接交渉を行ったりすることはほとんどない。

精肉部門(店舗)の仕事

精肉部門としては、日々の業務として、発注、商品化、商品出し(店出し)、清掃、在庫管理、売場管理(前陳、値引き、売り切り等)、廃棄などがある。
マネージャーやチーフになると、毎日の目標管理だけでなく、週間、月間の売上、粗利、ロスなどの数字の管理、売上を目標達成するための店内特売の企画や労務管理(アルバイトやパート社員の人事、出勤スケジュール、部門人件費管理など)など様々な業務が任されることになる。

【部門マネージャー・主任・チーフ】

商品部で作成された販促計画に基づいた商品化と売場作りを行うことが基本の業務となる。
商品部の指示通りに商品作り、売場作りを行うと目標金額や粗利益は達成されるはずである。
しかし、天候や客入りによって思ったよりも数字が伸びないこともあり、予算を下回らないように売場をコントロールすることが、主任・チーフの腕の見せ所である。
日々の売上の補てんとなるのが、タイムサービスや夕方5時の市などの店内特売、インストアプロモーション(インプロ)である。
特に雨や台風で客足が鈍いときは、重要な役割を果たす。商品化は昼のアイドルタイムに行っておき、タイムサービスの準備を整える。
新入社員や2番手、3番手の社員は、マネージャーやチーフのサポートを行いながら、チーフになるための訓練を日々行うこととなる。
チーフやマネージャーになると、急に教える側に立つことになるため、初めの数年で上司の業務を見て学ぶことが重要である。
会社は学校ではないため、先生が1から10まで教えてくれる場所ではない。自ら進んで業務をこなせるようになるように、社会人として立ち振る舞うことがポイントとなる。

【パート・アルバイト】

「商品製造業務」:当日製造分の鶏肉や挽肉の製造、豚肉の商品化等を行う。
商品の製造指示は上長が行うが、ある程度ベテランになると、自ら商品の在庫を把握し、日付の古いものから製造できるようになる。
在庫量は主任・チーフまたは担当社員に報告し、常に報告・連絡を行う。アルバイトが製造する鶏肉の商品化まで主任・チーフが意識して管理することで、売場全体の商品化意識を上げることが出来る。
「商品値付け・陳列業務」:盛り付けられた商品をパックし値付けを行う。
値付けは正確に行い、店頭の決められた位置に陳列する。陳列場所は、商品部もしくは主任によって作成された商品陳列台帳にしたがって陳列する。
営業時間中も、継続して値付けと陳列を行うが、商品整理と鮮度管理、日付管理も同時に行い、売場の整理整頓を維持する。

注意すべき点

【衛生】

商品は製造されてから店舗に届くまで鮮度は維持されたまま届けられる。海外から届けられる商品も、コンテナから保管庫、トラックの積み下ろしまで、ドッグシェルターと呼ばれる、外気に触れない構造で、チルド商品は0℃以下、冷凍商品はマイナス18℃以下を維持したまま運ばれる。
量販店の荷受け場は常温のことが多いが、製造されてから最初に最も温度が上がる場所である。
店舗に到着した商品は速やかに検品して冷蔵庫、冷凍庫へ運び込むだけでなく、作業場での作業時間が長くなれば長くなるほど鮮度が落ちるということを意識して作業を行う必要がある。

【商品化】

作業場での作業が最も商品にとってダメージの大きな場所である。そのため、原料を冷蔵庫や冷凍庫から出してから長くても20分以内に作業を行い、予冷庫や売場の冷蔵ケースに入れる必要がある。もちろんのこと、商品化は丁寧に行い、トレーのふちに肉がついてラップと挟まっていたり、ラップにたれ付けのたれが付いて汚い商品がないようにしなくてはならない。
商品化した商品が自分や自分の家族が購入したくなるような商品化を行うことが大切である。

【コミュニケーション】

部門内、店舗内のコミュニケーションは、仕事をする上で最も重要な要素である。働きやすい環境は、管理者が作り出す必要があるが、配属された職場で自分の立ち位置を理解し、先輩従業員とのコミュニケーションだけでなく、日々の業務のアシストをしていただいている、アルバイトやパート従業員も大切にして業務を行うことが大切である。
特に精肉や鮮魚は、職人肌の従業員が多く、自ら低姿勢で懐に入っていく勢いで職務に当たることをお勧めする。

近年のトレンド売場

【ラム肉】

牛肉、豚肉、鶏肉に続く新たな柱となる畜種として羊肉が注目されている。
以前より、羊肉は販売していたが、馬肉や猪肉などと同様、特殊な畜肉としての扱いであった。北海道など一部の地域では、羊肉は定番コーナーで販売していたが、全国的に定番でコーナー化され始めた畜種である。
日本ではジンギスカン商材として販売されることが多い畜種であるが、世界的には、羊肉は一般的に食べられており、有名な料理としては、フランス料理の骨付きラムロース香草焼きなど、ディナーのメインを飾るアイテムである。

【オーガニック・ナチュラル】

オーガニックやナチュラルと言っても馴染みがないが、ホルモン剤不使用や抗生物質不使用というとイメージが付きやすい。
精肉では、ナチュラルビーフやナチュラルチキンなど、スーパーマーケットでも徐々に販売がされるようになってきている。
抗生物質を使用しないため事故率(死亡率)が高くなり、100%牧草飼育(農薬不使用)やホルモン剤不使用ということは、肥育日数が長くなることから、必然的に価格は高くなる。
ナチュラル商品を使用する場合は、価格メリットが出にくいため、ディスカウントストアなどでの取り扱いは向いていない。
むしろ、その価値を適正価格で販売できる企業で販売するべきであると考えるのが自然である。そのため、販売店のエリアやターゲットが明確に、ナチュラルを求めている店舗で販売することがポイントとなる。


【ミートデリカ】

精肉の惣菜コーナーは進化を続け、様々な形態で展開されている。新しい店舗はライブキッチンとなり、店頭で鉄板焼やフライ商品など目の前で実演を行いながら販売をする。
ライブキッチンがない店舗でもミートデリカ(ミート惣菜)のアイテムは、精肉の銘柄を使用することで、食材への安心感を売りにした商品となっている。最近では、「宮崎牛の牛めし」や「山形牛焼肉弁当」など産地ブランドを打ち出した高級惣菜なども展開している企業もある。精肉が作る惣菜ということで、美味しいというのは必須条件ということも忘れてはならない。


【付加価値ローストビーフ】

ローストビーフは、いまや冷惣菜の稼ぎ頭となり精肉にはなくてはならないものとなっている。ポイントはアイテムの充実と付加価値にある。
和牛や国産というだけでなく、部位や厚み、食べ方が異なる提案を行っている。ミスジのローストビーフは、厚切りのディナー用ステーキカット、国産牛イチボのローストビーフは薄切りにして、サラダタイプ、リブロースのローストビーフはワインと一緒に洋食ディナーのメインを飾る。輸入牛のローストビーフは、のっけ盛りにして酒の肴で提案が出来る。
また、ローストポークやローストラムなども展開することで、バリエーションが広がった売場となっている。
この商品群のターゲットは30代以上の、味にもこだわりを持ち始めた特に男性となる。希少部位を好むのが男性という部分も鍵である。

【健康訴求商品】

精肉の生肉コーナーでは、脂肪分を除去した牛のリブ芯ステーキ、ソトモモを使ったスライス、脂肪を除去した豚モモスライス、鶏皮を除去した皮なしムネ、ささみなど、赤身に特化した商品を集めてコーナー化している店舗が増えている。
加工肉でも、糖質ゼロや減塩、無塩せきなどを集合陳列した健康に気を使った商品をカテゴライズして展開することで、加工肉に対する視点を変えた売場を作っている。
このカテゴリのターゲットは、健康に気遣う高齢者であったり、アレルギーが気になる子ども、脂肪が気になる女性であるため、売場も綺麗に整理整頓されていることがポイントとなる。
各企業商品を売るために様々な工夫を売場で展開している。スーパーの食材を店内のフードコートやレストランで食べる「グローサラント」などでも、精肉の銘柄肉を使用した商品を展開し、協業を図る動きも少なくない。
近隣店舗の競合店調査でも、価格の調査を行うだけでなく、企業の取り組みをしっかりと見ることも重要な仕事である。