焼肉・バーベキュー売り場提案特集
新時代の開幕盛り上げるメニューを展開
間もなく「平成」が幕を閉じ、「令和」が始まる。改元と大型連休が重なることもあり、多くの小売店では平成最後の大売り出しや新元号を祝う催事を活発に展開するだろう。この好機を捉える効果的な精肉売り場をどのようにつくるべきか。流通事情に詳しい月城流通研究所の月城聡之氏に提案してもらった。
平成最後のBBQと新元号祝うセット商品
4月30日で「平成」が幕を閉じ、5月1日から「令和」が始まる。多くの人が10連休となる今年の大型連休は、前半(4月)と後半(5月)に分けて売り込みを強化したい。前半戦は「平成最後の大売り出し」を打ち出す企業が多いだろう。精肉売り場では「平成最後のバーベキュー(BBQ)フェア」としてBBQ商材を大陳。ボリューム感のある売り場をつくる。
例えば、国産豚スペアリブは食べやすいように骨をカットするが、端部分をつなげたままにしてブロックで販売。迫力ある立体的な商品化が可能だ。骨部分の薄皮に切れ込みを入れておくと、加熱調理後に骨と肉が分離しやすい。
近年の上昇トレンドであるカナダ産豚肉は、価格が手ごろで気軽に購入できる。そこで肩ロースを使用した味付けジャンボスライスをBBQアイテムとして訴求。味付けはガーリックペッパーや焼き肉もみ込みだれのほか、食卓でも楽しめるようにしょうが焼き味なども提案する。5㍉㍍程度の厚さにすれば調理時間も短くて済む。
新元号「令和」となる5月1日は予告されたお祝いの日といえるため、ハレ型メニューを提案して食卓を盛り上げたい。
例えば、黒毛和牛の焼き肉セット「令和」としてA5等級のロースをロース芯、リブマキ、リブカブリに分割、3点盛りを金色トレーや折り箱に入れて高級感を演出する。本ワサビやヒマラヤ岩塩など、こだわりの調味料も関連販売するとさらに効果的だ。加えて、黒毛和牛のバラ、モモ、ロースの3部位を組み合わせた焼き肉セット「平成」、米国産牛バラ、国産豚肩ロース、トントロ、味付け牛もつなどを入れた昔ながらの焼き肉セット「昭和」を展開。値入率を上げる工夫をして利益を確保する。
シニアも楽しめる新たな食べ方の提案を
令和時代には、オーガニックやナチュラルといったエシカルカテゴリーが急成長しそうだ。最近は倫理的・道徳的観点だけでなく環境保全や社会貢献の意味も強まり、「持続可能な開発目標(SDGs)」やサステナビリティー(持続可能性)を意識した取り組みを強化する企業も増えている。
オーガニックビーフは、成長ホルモンや抗生剤を投与せず、農薬や殺虫剤、化学肥料、飼料添加物などを使わない飼料を与え、不純物とは無縁な自然環境で生産される。豪州ではNASAA(豪州持続的農業協会)、米国ではUSDA(米国農務省)のオーガニック認証を取得した商品もあり、付加価値の高い輸入牛肉を売り場づくりに生かすことが可能だ。
超高齢社会の日本では、より健康的な食生活が求められている。少し高めの価格設定でも、エシカルを意識することで「本物」という満足感にもつながる。
その一方で、単純に肉と焼き肉のたれを組み合わせるだけでは購買につながりにくくなっている。高齢化するターゲット層を意識して、食べやすい味付け、あっさり食べられるメニュー提案の工夫が欠かせない。
例えば「だしで食べる焼き肉」はどうだろうか。牛骨をベースに酢を混ぜただしで焼き肉を食べると、さっぱりとしておいしい。京都の老舗焼き肉店が発祥といわれており、だし焼き肉のブームが起こっている。すりおろした山芋とだしを合わせた「だしとろろ」も肉のうまみを引き立て、滋味あふれる味わいとなる。
「だしで食べる焼き肉」と同様に焼き肉のたれに純米酢を混ぜると、あっさりしたたれに仕上がる。刻みネギなどの薬味を加えると、さらにおいしく食べられる。
「韓流焼きしゃぶチャドルバギ」はブリスケなど脂肪の多いバラを使い、トリミングをほとんどしないで焼きしゃぶにしてたれで食べる。ポン酢に刻みネギや青唐辛子を加えた甘酸っぱく、辛めのたれにするのがポイントだ。女性でも気にならないほどあっさり、さっぱり肉を楽しめる。
平成時代に日本人の食生活は大きく変わり、肉食が増え、食の欧米化が加速した。それと同時に高齢化が進んだことで、これからの令和時代には、肉食においても高齢化対応が求められる。
素材や健康を意識し、あっさりした味付けや食の満足感に焦点を当てた提案が鍵だ。
改元は新たな売り場をスタートする好機といえる。より良い食生活の提案を通じて、心身ともに健康的に過ごせる社会づくりに貢献したい。