サミットストア上星川店に学ぶ精肉売り場の近未来
精肉売場は、「メニュー用途」でコーナー化された売場作りとなっている。
一見すると牛豚鶏の順で、今までの売場のように見えるが、きっちりと縦POPで用途ごとに区切られており、縦陳列が徹底されている。
そのため、売場は非常に見やすく、凹凸やマグネットの作りにくい壁面売場でも購入しやすい。
畜種別の売場に慣れている業界人は、不思議な売場となっているが、生活者視点では、今日食べるメニューで売場が構成されているので、わかりやすい。
コーナー | 尺数 |
グリルキッチン | 約16尺 |
ステーキ | 4尺 |
焼肉 | 8尺 |
すき焼き | 4尺 |
しゃぶしゃぶ | 6尺 |
ブロック | 3尺(5F) |
かつ&ソテー | 3尺(5F) |
生姜焼 | 3尺(4F) |
豚うす切り | 7尺(10F) |
みつせ鶏 | 3尺(4F) |
鶏肉 | 7尺(11F) |
挽肉 | 4尺 |
(平台)特売(秋田牛、アンガス牛ステーキ) | 6尺 |
(平台エンド)スグうま!レンジで簡単調理セット | 6尺 |
(平台)冷蔵味付け | 8尺 |
(平台エンド)冷凍味付け | 6尺 |
(平台)スグうま!焼くだけ!タレ漬け | 8尺 |
※グリルキッチンはおおよその尺数。4-5Fは3尺としている。
【グリルキッチン】
精肉売場先頭にグリルキッチンコーナーを配置。
全面ガラス張りにすることで、ライブ感やシズル感を演出。
スチコンやグリドル、フライヤーを使用することで、本格的な味を再現している。
スチコンやフライヤーだけでなく、グリルなどの焼きの工程が入ることで、おいしい肉惣菜を提供している。
【豚うす切り肉】
黒豚コーナーは設置されていないが、「鹿児島県産黒豚 黒の匠」は豚うす切り肉コーナーに配置されている。
黒豚の売上が減少する中、豚肉のアッパーグレードを白豚の中に配置することで、購買の選択肢になるだけでなく、白豚の割安さも強調され、より売上が上がることが想定される。
【ブロック】
しゃぶしゃぶコーナーと豚うす切りコーナーの間に、ブロックコーナーが設置されており、牛肉のブロックもこのブロックコーナーで販売している。「ローストに!煮込みに!カレーに!」の縦POPに記載されており、関連販売で角煮やスペアリブソースローストビーフのもとなどもクロス販売している。
【レンジで簡単調理セット】
ミールキットが流行しはじめている中、競合企業の簡便セットとの違い、ネット販売との差別化となる一つの切り口が、店内手作りである。
産地 | 商品名 | 量目(g) | 本体価格(円) | 製造者/加工者 |
アメリカ産 | 牛ばらスライス | 250 | 458 | スターゼン販売 |
フランス産 | 豚ばらスライス | 250 | 458 | スターゼン販売 |
国産 | 豚ばらこま切れ | 250 | 458 | スターゼン販売 |
オーストラリア/国産 | 牛豚ミンチ | 400 | 498 | ミキフーズサプライ |
国産 | 豚ミンチ | 400 | 498 | ミキフーズサプライ |
国産 | みつせ鶏ミンチ | 200 | 398 | ヨコオ |
豚ばら生姜焼用 | 300 | 548 | ||
牛バラ焼肉用 | 300 | 598 | ||
牛バラカルビ焼用 | 180 | 358 | 滝沢ハム | |
松尾ジンギスカン(マトン) | 400 | 880 | マツオ | |
国内産 | 牛しま腸味付け(生) | 160 | 398 | スターゼンミートプロセッサー |
国内産 | 豚かしら味付け(生) | 160 | 298 | スターゼンミートプロセッサー |
豚ばらスタミナ丼用 | 80 | 138 | ||
豚ばら甘口焼肉 | 80 | 138 | ||
ローストビーフ入りランチハンバーグ | 475 | 553 | 滝沢ハム | |
国産 | お徳用肉だんご | 700 | 475 | 伊藤ハム |
店内手作りの簡便商品は工業製品のイメージとは違い、鮮度感だけでなく、地域密着型店舗ならではのオリジナリティが表れる商品として、今後注目される。
【(冷凍)平台・味付商品】
冷凍の平台エンドには、ジッパー付きの冷凍バラ凍商材や味付き冷凍真空商材を品揃えしている。アイテムは洗練されており、冷凍商材でも売れるものだけを厳選したアイテム群となっている。冷凍味付けマトンで有名な北海道名物松尾ジンギスカンも品揃えしているので、売場としても面白い。
商品構成
単品アイテムでみていくと、焼肉コーナーには「焼肉屋さんの人気メニュー3種盛合せ(400g1580円)」はアメリカ産牛バラ、ロース、タンを使用した焼肉セットや黒毛和牛ももづくしセットなど面白い商品も販売している。
【グリルキッチンの焼きメニュー】
各企業新店舗でのミート惣菜コーナーには力を入れているが、従来通りのスチコンやフライヤーからは脱していない。
しかし、サミットでは焼き上げのビーフステーキ盛り合わせなども提供している。
スチコンと焼き工程をうまく組み合わせての商品化は、今後急速に広まることが想定される。
【進化形牛しゃぶ提案】
近年、焼肉の希少部位提案で、牛肉へ注目が集まり、再度牛肉の時代がやってきている。しゃぶしゃぶ用の牛肉をザブトンで提案することで、希少部位を焼肉で食べていた層の、メニューが水平展開されると考えられる。
その需要を察知して、展開しているアイテムが、ザブトンしゃぶしゃぶ用である。サシが入っている部位だけでなく、シキンボやナカニクなど赤身の強い部位へも展開が可能となる。
【精肉少量パック商品】
少量パックの需要は、以前より各企業注目しており商品化している。
しかし、少量パックを使用する消費者のニーズをさらに深掘りし、台所でお肉を切る工程を減らしたいというニーズに応えている。単純にハーフカットしただけでも、消費者は家庭で包丁を使う必要がなくなる。
もちろん、量目は100g程度、パック単価159円で、少量パックで必要以上の量目は入っていないため、少量というもともとの需要も引き続き生かされている。
【鶏肉ノントレー商品】
鶏肉コーナーの半分以上の商品がノントレーになっている。
銘柄鶏のみつせ鶏、若どりのもも肉、胸肉、手羽元、もも鍋物・から揚用などにアイテムを絞りノントレーとしている。
おそらく、機械の作業性とオペレーション時間の兼ね合いと、鮮度劣化の早い内臓や形状のくずれやすいささみなどは、取り急ぎトレーでの展開でスタートしていると思われる。
ノントレーへの流れは新店で導入されているため、今後も広がりを見せることと思う。
【ラム肉の拡販】
ラム肉コーナーは設置していないが、ステーキコーナーにラム肉を展開している。しかし、ニュージーランド産のラムロースステーキ用(骨付き)、ラムかたロースひとくちステーキ用(厚切)100g278円、ラムももステーキ用100g228円が展開されている。焼肉コーナーにはラムかたジンギスカン用の切り落とし(100g188円)が生ラムのたれを同梱して販売。ラム肉でコーナー化されていないが、ラム肉のアイテム数は多い。
担当者~チーフが見るべき点
今回の売場調査は、オープン直後の週末であったが、品揃えを平日と週末で変更する施策を打ち出している。
平日は、冷蔵庫に常備出来る大容量の商品を品揃えするとともに、シニア層に支持の高い少量商品も品揃えする。週末はファミリー世帯の来店が期待できることから、「盛り合わせ」商品や、「和牛ももづくしセット」など食卓を華やかにする商品を販売予定としているため、週末と平日を比較するため、二回店舗調査をすると良い。
グリルキッチンは、競合企業のミート惣菜と違い、「味」に注目している。
焼メニューでは、ステーキメニューにチャレンジするなど差別化を図っている。一部パサつく仕上がりのものがあるため、部位の工夫が今後も必要と考えられるが、今の外部環境から、比較的低価格に焼き上げのステーキを食べることができるのは面白い。
また、デミグラスハンバーグは1P378円で食べることができる。
デミグラスの味は本格的で、リピートにつながる味である。おつまみ商材も単に冷蔵の詰め合わせではないので、家飲みも楽しめる。
ただ、トレーの蓋いっぱいにラベルシールが添付されているのが、商品が見えにくく課題と考えられる。
精肉の業界で話題となってきている、大豆ミートや疑似肉と呼ばれる様な動物性タンパク質ではないタンパク源。日本ハムや伊藤ハムからも取り組みが発表されているが、早速サミットでも展開されている。
精肉売場正面に設置されている、「おためし下さい」コーナーでは、新しい商品やメニュー提案をするキッチンが設置されており、大豆のお肉を使用したメニュー提案がなされている。
大豆ミートだけでも様々な料理提案が可能であるが、通常の挽肉とあわせて、料理を作る案内もしている。
今後の展開も含めて、特に日本では大豆ミートが主力に動き始めることが想定されるため、精肉担当者も情報を集めていく必要がある。