コストコ精肉の売場作り 全集中

コストコは、世界中に795倉庫店、日本に27倉庫店(2020年8月28日現在)存在する。
日本で27店舗というと、地方の中堅量販店と同レベルの店舗数である。会員は年会費4,000円、支払いは現金かマスターカードしか支払えない条件でも、コストコファンが全国に根強くおり、コストコを使ったレシピ、レシピ動画、お肉の使い方動画などもYouTubeで何万もの再生回数を誇っている。
消費者が思うコストコの「お肉」という大きなくくりの中でも、アメリカ産のプライムやチョイス、牛タン、さくらどり、そして誰しもが知っている「プルコギビーフ」など、全国の量販店の味付けコーナーにも波及したヒット商品が、今もなお平台で大きく展開されている。
そこには、単純にプルコギビーフを大容量パックで販売を始めたから売れたという訳ではないという事実が隠されている。
コストコのスマートな商品作りとブランディングとともに、商品の根強いファンがいることを勉強したい。
実は、コストコの精肉のアイテム数はかなり少ない。
真空パックのブロック肉も含めて、生肉カテゴリでおおよそ70アイテムほどしかない。
基本的にはパック単価3,000円~5,000円程度の、量目も1kg~2kgであり量販店のメガパックの品揃えしかない店舗と考えてもらうと良い。
そのため、コストコはコロナ禍で追い風が吹いた。メガパックや買いだめ需要、さらには、インターネット販売の会員数も激増し、いい波に乗れた状態である。
コストコの精肉では、大きく分けて、「生肉の大型パック、原木商品、味付け商品、加工品」となっている。加えて、ロテサリーチキンなどの「ミート惣菜」が展開されている。

コストコの商品 獣の呼吸

USプライムTボーンステーキ 468円/100g (4,521円/966g)

コストコの米国産牛肉にはプライムとチョイスが使われている。
トレーパックにもプライム、チョイスのシールが貼られている。
量販店ではほとんど品揃えのない、Tボーンステーキは1パックで4,500円を超えるが、特に夏場を中心に売れている。
どこにでもある量販店ではなく、コストコだから購入できるという、逆転現象が起きている。プライムはこれ以外にもサーロインや肩ロースなどの品揃えもあり、最近ではスライス商品も大容量で販売している。

産地チルド/冷凍カテゴリ品名単価(税込)備考
アメリカチルドプライムビーフサーロインニューヨークカットステーキ498 
アメリカチルドプライムビーフTボーンステーキ468 
アメリカチルドプライムビーフ肩ロースすき焼/しゃぶしゃぶ228新商品
アメリカチルドプライムビーフ肩ロースカタマリ(ローストビーフ用)218 
アメリカチルドプライムビーフ肩ロース焼肉228 
USチルドビーフカワムキタンVP 368円/100g (3,312円/0.90kg)

コストコのブロック販売は有名で、量販店でも仕入れる真空パックの状態に値付けシールが貼られて販売されている
平台に軽く100本以上が陳列されている。特に、ブロックのムキタンやトップブレードは、どのコストコでも人気商品である
木更津店では、それ以外にもリブフィンガー、チャックアイロール、ランプキャップなども、真空状態で販売されている。

産地チルド/冷凍カテゴリ品名単価(税込)備考
アメリカチルドビーフリブフィンガーVP178EXCEL
アメリカチルドチョイスビーフミスジVP129EXCEL
アメリカチルドチョイスビーフチャックアイロールVP125National Beef
オーストラリアチルドミドルグレインビーフランプキャップVP198RIVERINA BEEF
アメリカチルドビーフ牛タン真空パック368EXCEL
国産品さくらどり もも 2,278円/2.4kg

コストコの絶対的な人気商品となっている「国産品さくらどり」
リピーターも多く、来店者のほとんどが購入するといっても過言でないほどの人気商品である。もも肉以外にも、ムネ肉や皮なしムネ肉、手羽元だけでなく、中抜きやムネ挽肉、もも串、唐揚げなど横展開もされている
生産、加工はニッポンハムグループの日本ホワイトファームで、外部認証機関による「SQF」などは、コストコファンのブログなどでも紹介されるほど、安心感につながっている。
量目は、深絞りパックが4連で2.4kg定貫となっている。
コストコ好きがこの商品が2.4kgでも購入する理由は、1パックに1~2枚入っているという、保存が出来ることにある。
以前は、友達と分け合うこともしていたようであるが、コロナ禍で分け合うことはしないが、購入頻度は高い商品となっている。

産地チルド/冷凍カテゴリ品名単価(税込)
国産チルドさくらどり中抜き58
国産チルドさくらどり手羽元 2.4kg1,338/2.4k
国産チルドさくらどり皮なしむね肉2.4kg1,928/2.4k
国産チルドさくらどりむね肉2.4kg1,278/2.4k
国産チルドさくらどりもも肉2.4kg2,278/2.4k
ヤンニョム豚バラ焼肉 118円/100g (2,290円/1,941g)

味付け商品の非加熱商品のカテゴリで9月頃から登場し始めた「ヤンニョム豚バラ焼肉」。
味付けカテゴリでは鉄板の人気商品「プルコギビーフ」は現在も販売を続け、「骨付きLAカルビ」「豚のにんにく味噌漬け」に続き、さらなる刺客が売場に登場した。
豚肉はカナダ産のため、売場に展開しているカナダ産三元豚バラと同じと思われる。味付けは真っ赤なタレで、ヤンニョムというだけあって韓国の辛いイメージだが、ピリッとする程度でマイルドである。コストコのスタッフも、野菜をたくさん一緒に炒めるとおいしいと紹介している。赤いタレが絡んだお肉に、白髪ネギと小口ネギがたっぷりかかっていて、売場でも食欲がそそる商品化である。

カテゴリ品名単価(税込)備考
非加熱商品ハニーグレイズチキン チキンレッグ5本入り998 
非加熱商品ジャークチキン117 
非加熱商品三元豚ポークジンジャー129新商品
非加熱商品ヤンニョム豚バラ焼肉118 
非加熱商品プルコギビーフ 米国産チョイス肩ロース143 

同じ売場で販売している元祖ともいえる、プルコギビーフに関しては、現在も2kg程度の特大パックでも売れ続けている。
単なる味付け肉ではなく、お肉はUSチャックロールを使用し、トッピングの野菜も商品の一部として、消費者に認知されているからと考えられる。
売場には、プルコギビーフのアレンジメニューのレシピなども掲示されていた。

実はコストコユーザーが近年注目を集めている商品に、The Better Tableという会社の「WHITE SMOKE」というシリーズの加工品がある。
このソーセージは、特定原材料等27品目不使用の無えんせきソーセージ。さらに、保存料、化学調味料、発色剤、着色料、保水剤、結着剤、グルテンフリーという、完全に無添加のソーセージである。裏面の原材料名には、「豚肉、牛脂、食塩、砂糖、オニオンパウダー、胡椒、豚腸」しか記載されていないほど徹底した商品である。
価格は、5本入りで798円。1本あたり160円と高めであるが、これだけ添加物が入っていない商品だと、子供がいる家庭でも安心して購入できる。ソーセージ以外にも、ベーコンの品揃えもある。

HAMBURGER STEAK 大豆ミートのハンバーグ 978円/150gX4個 (伊藤ハム)

全国の量販店が、どの代用肉の加工品が売れるのか、次に何が売れるのかと必死になって情報を探しているが、コストコでは、当たり前のようにソイミートの商品が品揃えされている。
伊藤ハムが製造する大豆ミートのハンバーグは「お肉のような食感の大豆ミートで作りました。本品は、お肉の代わりに大豆たん白を使用しています。
本品は、食肉を使用していません。」という記載がされている。価格的には、1個あたり245円と決して安くはない価格設定であるが、積極的に販売をしている。
こういった面でも、コストコは海外の感覚をしっかりと日本国内でもトライさせていることが伺える。

Apple Smoked Bacon 林檎のベーコン 170円/100g (1,562円/919g) (米久かがやき)

りんごの果汁を隠し味に加え、りんごの樹で香り豊かに燻したベーコン。ベーコン以外にもソーセージの品揃えもあり、今やコストコの加工品のエンドで販売している超人気商品である。
インターネットでも、コストコで購入した林檎のベーコンを使用したレシピなども数多く展開されており、米久のベーコンではなく、コストコの林檎ベーコンとしての認知がされている一品である。
このベーコンブロックは、かなり形が不揃いで、量販店でバイヤーやチーフが嫌がるタイプの商品である。
しかし、これも原料ベースで販売しているコストコだから、ベーコンのブロックは変な形をしていると、消費者は自然と受け入れて購入に至っているのかもしれない。

無限列車コストコ

商品を見てもわかるとおり、コストコは自社ブランド「KIRKLAND(カークランド)」があるが、精肉ではグレードを表す「プライム」「チョイス」、加工品もメーカーブランドをそのまま使用しており、無駄なネーミングブランドを付けることは行なっていない。
しかし、きっちりと「プライム」や「チョイス」の商品にはPOPや販促シール、プライスラベルで最低限の主張を行なっており、それを消費者も認知し購入している。
主力商品は横展開も行ないブランディングを行なっている。「さくらどり」は、さくらどりを使用した唐揚げや挽肉だけでなく、ホットメニューの「炭火焼さくらどり手羽元」などへの横展開、「USチョイス肩ロース」は、お肉のカット商品だけでなく、人気の「プルコギビーフ」へと展開している。
ブランドをうまく広げることで、売上にも貢献させている。
海外では一般的な、パッカーブランドを売場で展開するスタイルを、日本でも行なっているということである。
これは、メーカー側としても、リスクを低減させることにつながる。
コストコのように、大量に発注することで、ロットも大きく動くため、持続可能な商売のスタイルとなっていると考えられる。
加工品を見ると、時代はすでに次の時代へ進んでいた。添加物を減らし、「消費者が安心して食べることが出来るもの」を求めることへ変化している。
今まで日本の大手メーカーが、大量生産で品質保持期限を延ばすための保存料や、クレームを起こさないための商品作りを心がけ、トレンドを追って、ジョンソンビルの太いソーセージが流行しているとなると、こぞって類似品を大手メーカーがチャレンジャーとなって展開してきた。
しかし、コストコはまわりに流されず、時代に即した商品を展開することで、消費者と結びついている。
それは、インターネットのコストコレシピの多さが証明しているのではないだろうか。