新型コロナ禍の連休振り返り

年末商戦を迎えるに当たり、2020年の大型連休の精肉需要を振り返る。

【ゴールデンウィーク】
緊急事態宣言が全国に拡大し、第一波が落ち着きを見せ始めたタイミングがゴールデンウィークであった。
一部を除き、多くの日本人は外出を控え、「STAY HOME」と「3密を避ける」を打ち出しながら生活を送った。
精肉では、アウトドアやキャンプ場がある地域を含め、焼肉商材、BBQ商材の売上は、昨年よりも売れなかった。
その代わりに、鶏肉や豚肉を中心としたケ型商品が売れ売上に貢献した。
和牛の相場が大幅に下落したこともあり、和牛の売上を伸ばした企業もあったが、売れないと判断し攻めなかった企業は売上の伸びは低かった。
しかし、精肉全体としては、4月おおよそ120%、5月110%の売上の伸長は精肉にとって大きな特需となった。
【盆商戦】
盆時期の和牛の相場は昨年の90%程度にまで回復したものの、新型コロナウイルスの第二波と思われる感染者の増加傾向から、Go Toキャンペーンを政府が行ったが、帰省を自粛するなどの動きがあり、内食需要は堅調に推移した。
その影響で、観光地や親族が集まる地方は、売上が伸び悩み、一方で人口の多い都市は、観光や帰省がなされなかったため、量販店の売り上げの底上げをすることができた。
ただ、通常の通り売上を伸ばせたわけではなく、割引セール内食向けの焼肉提案や切り落とし訴求が売上確保となった。

メガ盛りで恩返しデス!

新型コロナ禍で、量販店での買い物形式が変わってきたコトの一つに、買い物時間の短縮がある。
今までの買い物と比べて、店内の買い回り滞在時間が明らかに短くなっていることは、現場にいるスタッフが最も感じているのではないかと思う。
大容量パックや冷凍肉、真空パックで保存期間が長い商品など、ノントレー商品への抵抗感も一気に薄れてきた。
そのため、大容量商品での買い物時間の短縮は、新しい生活様式で今後も引き続き行われると想定される。
大容量パックでの販売は、単品で大量のアイテムと、「盛り合わせ」など、アイテムを組み合わせて大容量にしたものとがあり、この両方のアイテムの拡大がポイントとなる。

今年は、和牛の相場が下がり、インバウンド需要や輸出の需要が劇的に減少して、国内の牛肉生産者が苦慮している。
そこで、今年苦労した消費者や生産者みんなで恩返しということで、和牛を販売する。
買い物時間の短縮や大容量に対応した、「カルビ焼肉セット」を販売する。
家庭で食べる焼肉を想定して、できるだけ周りの脂肪の除去などにも気をつけると良い。
部位カードを入れておくことで、同じバラ肉でも希少部位感が演出できる。
特に、「トモバラ」の部位は、「ショートリブ・ササミ(フランクステーキ)・カイノミ(フラップミート)・ショートプレート」などの計上も味も違った部分で構成されているので、希少部位の宝庫である。
一つの部位から数多くの希少部位が、少量ずつ取れるので、盛り合わせで、攻めて欲しい。同じく「ウデ」部位の分割でも、盛り合わせを提案して頂きたい。

『シャルキュトリ三点盛り』

ローストビーフ、ローストポークは定番の単品でも受け入れられ、売上も安定期に入っている。
ミート惣菜の注目は合鴨。合鴨スモークやパストラミも、スチコンやグリドルで丁寧に加熱する。
こだわりのミート惣菜を扱うお店では、生から低温でじっくりと調理して提供すると差別化戦略が図れる。
シャルキュトリも、盛り合わせにすることで、「牛肉・豚肉・鶏肉(合鴨)」などの三点盛りにして、大パックで展開することで、年末商戦のミート惣菜の売り上げ貢献を狙う。
ローストアイテムとして、ローストビーフ・ローストポーク・ローストチキンの、盛り合わせや、焼豚・ロースハム・生ハム・サラダチキンなどの盛り合わせなど、組み合わせで、マンネリにならない商品化を心がける。

希少部位ローストビーフ盛り合わせ

ローストビーフも、希少部位でのスペック別の流通が増えたので、焼肉の盛り合わせを作るように、ローストビーフでも、部位別で盛り合わせを、バラエティーに作ってみる。
スライスする厚みで、ノーマル・厚切り・角切り・ステーキと、商品化の幅が広がり、それぞれのおいしさの楽しみ方も増えていく。
週末や、年末など、ハレの日に新しいお肉の楽しみ方を提案して頂きたい。

『銘柄豚薄切り肩ロース・バラメガ盛りパック』

年末商戦も、3密を避けることは継続されているため、スムーズに商品を手に取ってもらえるように、わかりやすい商品化がポイントとなる。
2種類以上を盛り合わせる場合は、部位表示がわかりやすいということ、買いたくなるということに重きを置いて、商品化を心がけると良い。
薄切りは、2色盛りにして、メガパックにすることで、客単価を上げる。
豚肉は銘柄豚肉を使用して、定番商品の大型化で年末商戦をもり立てると、安心感と商品化のオペレーションが簡素化されて良い。大容量パックで、量販を目指してほしい。

QUICK & EASY デス

コロナ禍で、家庭にいる時間が増え、調理する時間的余裕が増えているはずだが、出来るだけ手間暇を掛けたくない潜在重要は増えている。
「野菜炒め」などは、冷蔵庫にある残り物の野菜を炒めれば簡単にできる。「その位の手間を惜しむなよ!」というのが、常識のはずであったが、惣菜で野菜炒めを提案すると、これが良く売れている。

そのまま食べられる加熱済ベーコンとソーセージ

ソーセージや、ベーコンなどは、時短アイテムだから、フライパンで炒めるだけで「簡単だろう!」と思うが、「焼いたベーコン・焼いたソーセージ」が良く売れるようになってきた。
ソーセージくらいはボイルしたり、焼くことくらいは、超簡単のはずだが、「火」を通して電子レンジで温めるだけのソーセージやベーコンが良く売れるようになってきた。
加工メーカーでも、レンジアップで食べられるソーセージの提案が出てきている。

焼くだけ、味付けアイテムの拡大

プルコギの味付け焼肉が、焼肉の定番になり、時短アイテムの代表となった「味付け焼肉」。
薄切り・厚切り・ステーキ、とそれぞれに合ったタレが開発されてきている。
これからも、様々な味付けの、タレやスパイスが開発されてくるはず。
醤油味から、塩味。今年からは、レモン味が加わった。
トッピングも、ゴマ・ネギから、にんにくスライス。ニンニクも薄切りから、今年は厚切りニンニクと、本格的味付けで、満足感UPを目指すようになってきた。

真空パック・冷凍アイテムの拡大

SMでの精肉販売は、トレイで盛りつけたものが、鮮度感があり、冷蔵で賞味が短いことも、美味しさに基づいたものと常識的に思ってきた。
が、このコロナ禍で、買い物頻度を減らして、時短で買い物を心がけるようになってから、冷凍や、真空パックなどのアイテムが売れるようになってきた。
買物をして、家に持ち帰って、その日に食べるものは冷蔵のトレイパックで、明日以降食べるか、いざという時に食べるアイテム、ストックするアイテムとしては、冷凍・真空パック。というように、ノートレイ・冷凍に対する抵抗感が少なくなってきた。
家庭や、販売するSMでのロスも減らせるので、このジャンルのアイテムを強化して頂きたい。

地域で違う戦略

新型コロナの影響で、例年とは違う動きをすると予想される、今年の年末商戦は、今までの成功体験を生かした売場作りではなく、現場、現実を見た売場作りとすることで、乗り切る事ができる。

【地方都市】
例年、帰省で人口が増えていた地域は、特に首都圏や大阪などの大都市からの帰省は懸念されるため、人が集まりにくくなると想定される。
ただし、例年いままでの慣習上、年末年始はいいものを食べる習慣が残るため、例年よりは大型パックの大型化は控えめにして、売価帯を1ゾーン下げる必要が出る。
ただし、大型パックは見せ筋商品として必要なため、製造に関しては例年通り行うと良い。
【人口の多い都市】
首都圏や大阪を始め、比較的人口の多い都市は、実家のある田舎へ帰省することが今まで多かったが、今年は帰省をしない選択をする世帯が増える事が想定される。
盆商戦と同じように、首都圏や大阪から離れずに、実家で年越しを行う家族が例年よりは増える事が想定されるため、年末年始の品揃えは増やしておくことが望ましい。
特に、いままで実家に戻って年末年始を過ごしていた世帯は、年末年始に家で料理は行わないと想像されるため、ミート惣菜の売り出し、肉おせちの提案も面白い。
シャルキュトリを集めたオードブルセットは、重箱での展開で、料理を行わない世帯向けに提案する。
また、簡単な料理で、すき焼き、しゃぶしゃぶを提案するが、価格帯を上げすぎると購入しないため、ハレ型商品というよりも、ケ型の大型化という売場、ちょっといいものをいつもよりも多く品揃えするという展開が良い。
(参考)新型コロナウイルスの日本での出来事

2020年日付項目
1月6日中国 武漢で原因不明の肺炎 厚労省が注意喚起
1月14日WHO 新型コロナウイルスを確認
1月16日日本国内で初めて感染確認武漢に渡航した中国籍の男性
1月30日WHO「国際的な緊急事態」を宣言
2月3日乗客の感染が確認されたクルーズ船 横浜港に入港
2月13日国内で初めて感染者死亡神奈川県に住む80代女性
2月27日安倍首相 全国すべての小中高校に臨時休校要請の考え公表
3月9日専門家会議「3条件重なり避けて」と呼びかけ
3月24日東京五輪・パラリンピック1年程度延期に
3月29日志村けんさん死去 新型コロナウイルスによる肺炎で
4月7日7都府県に緊急事態宣言「人の接触最低7割極力8割削減を」
4月11日国内の感染者1日の人数としてはこれまでで最多の700人超
4月16日「緊急事態宣言」全国に拡大 13都道府県は「特定警戒都道府県」に
5月4日政府「緊急事態宣言」5月31日まで延長
5月7日国内の感染者1日の人数が100人下回る
5月14日政府 緊急事態宣言 39県で解除 8都道府県は継続
5月20日夏の全国高校野球 戦後初の中止決定
5月21日緊急事態宣言関西は解除首都圏と北海道は継続
5月25日緊急事態の解除宣言 約1か月半ぶりに全国で解除
6月2日初の「東京アラート」 都民に警戒呼びかけ
6月8日世界の感染者24時間で最多の13万6000人
6月19日都道府県またぐ移動の自粛要請 全国で緩和
6月28日世界の感染者1000万人超える
6月29日世界の死者50万人超える
7月2日東京都 107人の感染確認100人超は2か月ぶり
7月3日国内の1日の感染者 2か月ぶりに200人超える
7月9日東京都 224人の感染確認200人超は約3か月ぶり
 国内の1日の感染者 300人超える 5月2日以来
7月10日国内の1日の感染者 400人超える 4月24日以来
7月13日WHO 「多くの国が誤った方向に」 事態悪化を警告
7月18日世界の死者60万人超える
722「Go Toトラベル」キャンペーン始まる
 国内の1日の感染者 795過去最多
723東京都 366人感染確認 過去最多
7月27日WHO「パンデミックは加速し続けている」
7月28日国内の死者1,000人超える(クルーズ船除く)
7月29日国内の1日の感染者 1,000人超 岩手で初確認 
8月10日アメリカの感染者数が500万人を超える
8月11日世界の感染者2000万人を超える
8月15日ヨーロッパで感染再拡大受けた措置相次ぐ
8月17日4-6月期GDP 年率-27.8%
8月20日対策分科会尾身会長「流行はピークに達したとみられる」
8月28日新型コロナ感染者への対応 ルールの見直し検討
 政府が新型コロナ対策の新たな方針発表
9月5日WHO 「新型コロナのワクチン 分配開始は来年中頃の見通し」。“慎重に安全性を確認すべき”という考え示す。
9月9日世界の製薬会社など9社が新型コロナワクチン開発で“安全最優先”を宣言
資料:NHK「特設サイト 新型コロナウイルス」

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/chronology/