ニューノーマル時代輸入肉の新価値
輸入肉の市況
2020年は新型コロナにより内食需要が高まり、量販店では空前のバブルのような売上を上げた企業が多かった。
昨年は、外食産業が大きく減退し、焼き肉屋をはじめとしたお肉の需要がなくなり、市中に在庫が余ったため、価格も安価に手に入る状況があった。
しかし、今年に入り、急激な原料価格の高騰が目立った。
その原因の根源は、やはり新型コロナであり、この価格高騰は、全体的に年内は少なくても続いていくことになる。
【牛肉の動向】
米国産牛肉の価格動向を見てみると、昨年までと今年に入ってからの価格変動が著しく変化していることがわかる。
特に、アウトサイドスカートやタンなどの牛内臓肉に関しての価格は、赤身肉よりも大幅に高騰している。
これは、米国内のパッカーの作業人員不足が大きく影響しており、内臓処理をする人員が確保出来ていないためである。
新型コロナにより、米国民への補助金なども影響しており、9月中旬頃には解消する見込みである。
しかしながら、年内は物量の確保やコンテナ船不足なども影響することが考えられるため、しばらく、価格は高めに推移することが予想されている。
現地での生産が、人手不足で計画通りに行かない。
製造もコロナ禍で、熟練の担当者から、人の数はいても、熟練のエキスパートが不足しているので、製品においての規格が安定していない。また、人で不足で生産が増大できない。
また、輸送の船も、予定通りに入船せず、送れが目立っている。結果、家格が高騰してくるのである。
【豚肉の動向】
輸入豚肉も、牛肉同様に相場は高めの推移。年内もこのまま高値を維持する見込みだが、年明けも比較的同じような相場で推移するものと思われる。
輸入豚肉のポイントとなるのは、仕入れの安定である。輸入豚は定番売場で販売している企業も多いため、欠品が最も問題となる。
そのため仕入れ価格が安い業者からの納品に頼っている企業は、商品が欠品したときに商品を確保することが困難になる。やや高い原料でも、しっかりと安定して仕入れることができる企業との取り組みが、持続的な売場運営につながる。
仕入れのソースも、米国・カナダから、冷凍は比較的価格の安いスペイン・イタリア・フランスからも増大し、冷蔵は、メキシコのパッカーからの輸入が増大してしる。
今後の新型コロナの状況によっては、事態は変わるため、細かな情報収集が鍵となる。
【羊肉の動向】
羊肉に関しても、新型コロナの影響が生産現場で出ている。
日本市場も、羊肉にある、カロニチン効果や、価格が100円台からの焼肉商材として提案できるという利点で販促の拡大は進んでいる。
また、ラムラックなど、高級部位が、希少部位として人気が出てきている。
が、価格はある程度頭打ちする高値にまで到達していると予想されている。産地に関しては、ニュージーランドでの生産が厳しいため、数量を確保していくため豪州産にシフトしていくことが予想される。
年末年始に向けては、豪州産羊肉での展開になると想定した仕入れを行なっていく必要がある。
消費者の購買行動の変化
新型コロナの影響により、2020年は内食需要が高くなり、精肉の売上は昨比105%~110%で推移していたが、今年に入り丁度一回りしたこともあり、昨比が90%を割り込む月も出てきている。
夏場の需要でやや売上は取り戻してきているものの、同じコロナ禍ではあるものの、昨年ベースの売り上げが、昨年の売り上げ増が特異であり、昨対までの売り上げを維持できていないことが以下のレポートでも解る。
家計調査(総務省)を見てみると、畜種別の平均単価を見てみると、豚肉はなだらかに下降傾向にあり、徐々に単価が下がっていることがわかる。
牛肉は上下しているものの横ばい状態である。
購入数量をみると、昨年12月頃までは上昇傾向、今年に入り、1月2月と下げ基調であったが3月から横ばいとなっている。
平均単価が下がり、購入量が増えなければ、実質売上は下がることになるため、今年に入って、精肉の売上が芳しくない理由がそこにある。
「家計調査家計収支編(二人以上の世帯)」品目別より牛豚鶏ひき肉を抜粋
失業者の増加や世帯収入の減少から、日本全体的に安い商品が売れる傾向にある。特に、豚肉や鶏肉の動きが活発であったのが昨年である。
感染対策から、量販店での購入頻度や買い回りの滞在時間減少から、大容量パックや業務用パックなども売れた。
コストコや業務用スーパーなど、安価に購入できる販売店の利用者が急速に増えたが、購入頻度は下がっていると考えられる。
定番で使えるアイテムが人気となり、味付け商材など簡便性の高い商品も手に取られやすくなっている。実際に、売れた商品を一部紹介する。
【輸入牛肉】
ショートプレートを使用した商品は、スライサで効率的に焼肉用にカットでき、脂肪の多い部分と赤身の多い部分を上手く混ぜながら商品化することが出来る。
大容量パックでありながら1000円ラインで購入できるため、平台や下段で拡販して売上につなげることができる。
ポイントは、アンガス牛やプライムなど、品種やグレードが売場でも打ち出された商品は、付加価値商品として、認知されてきている。
コロナ禍のトレンドアイテムに、切り落しタイプのガッサ盛りの商品化が目立った。
丸トレーに高蓋タイプの蓋付きトレーを使用して、お肉は綺麗に並べず立体的に盛り付けることがポイント。商品化は、スライサで切り落としていくだけで、効率的に作業することが出来る。売場では立体的に陳列することが出来るため、売場映えする。
オペレーションから、売場まで効率的を追求した商品と言える。
【輸入羊肉】
第4の畜種として売場を確実に増やしてきている羊肉。
ランプステーキはステーキカテゴリに新たに参入してきたが、しっかりと定着してきている。羊肉と言えば、ショルダーを使用したジンギスカン用が主力であったが、赤身でヘルシーなイメージの強いラム肉で、さらに、コロナ禍による健康志向が追い風となって、着実に売上を伸ばしてきている商品である。
クリスマス&年末年始の仕掛け肉
昨年のクリスマスは、家族やパートナーと過ごす、近親者での家庭内でのイベントとなった。昨年とは異なり、ワクチンもかなり摂取されていることなども影響して、年末の外出も多くなると予想される。
しかし、失業者の増加や世帯年収の減少から、2年前のように戻ることは考えにくい。引き続き、ニューノーマル時代の家庭で過ごすクリスマスや年末年始も続くことが考えられるため、ハレの日メニューに関しても、和牛など高級商材の展開だけでなく、輸入肉を販売していくことが、売上につながる。
輸入される牛肉には様々な品種がおり、ショートホーン種は近年人気の赤身志向にはもってこいの品種。
特にもも肉の価格は、比較的安価で提供しやすい。
ナックル、ランプ、トップサイドを上手く活用して訴求する。流行のガッサ盛りで高蓋式のトレーを使用し、カットステーキを盛り付けることで、売場に迫力を出すことが出来る。
輸入牛は安いので、切り落しで十分と思いがちであるが、きちんとスライス取りすることで、切り落しタイプよりも高く販売することが可能となる。
アンガス牛は一般的に販売されるようになってきており、商品化でも差別化を図っていく必要がある。
また、国内牛の相場が高いことからも、すき焼き需要は国産牛から輸入牛へシフトしていくことも想定されるため、綺麗な商品化が鍵となる。
輸入豚を100g98円で販売していると、納品原価が上がっているため長期的に粗利が伴わなくなってくる。輸入豚肉の相場を考えても、ディスカウントするタイミングでもなく、冷静に相場を見てもらいたい。事実上の値上げをしていく必要があるため、その場合は2部位盛り合わせなどを定額販売して、見た目の割安感を出すようにする。幸い、メガ盛りも定着してトレンドとなっているため、売込みやすい。
クリスマス商戦からは、ステーキ商材の中でも骨付きの洋風メニューが楽しめるラムラックを販売していく。
ラムの味付けが上手くいかないという消費者も多いため、スパイスや香草など添付、関連販売していくことが売れるポイントとなる。インスタグラムやYouTubeでレシピなども、レシピ動画が多くあるため、以前のようにレシピや調理方法がわからないということが少なくなってきている。
アルミホイルなどを使用して、じっくり火入れする方法も、一般家庭で浸透してきている。ローズマリーやクミンなど、売場が見つけにくい商品は関連販売するとよい。
ニューノーマル時代の売場と高相場での商品作り
他人の触ったものを触りたくないという、新型コロナ感染症からの新しい意識がニューノーマル時代に定着した。
消費者は、消毒をして入店し、極力必要なものを購入する。買い回り時間は短くなり、その代わりに一度に購入する量が増えている。
目新しい商品よりも、買い慣れた商品や、汎用性の高い商品、保存して使える商品、安価な商品に注目が集まった。
それを一度に多めに購入するという方向である。
そのため、精肉でも大型パックの需要が高くなった。
YouTubeやインスタグラムでは、ブロック肉の使い方や下味小分け冷凍保管など、調理に関するノウハウが急速に展開されるようになった。
ワクチン接種が進むと共に、来店頻度もやや上昇傾向ではあるものの、新しい型のコロナ株が出るたびに、やはり感染リスクがあるため、引き続き家庭でのクリスマスや年末年始を過ごす家族は多いと想定される。
そのため、売場は既存の売場から大きな売場変更をするのではなく、既存の売場(陳列場所)をベースとした、わかりやすい縦割り陳列の徹底を行なうとよい。
目先の売上を作るために、協賛キャンペーンを乱発することは、協賛企業は儲けがなくなるだけでなく、スーパーはキャンペーンがなくなると売れなくなるという悪循環となるため、短絡的に昔ながらのキャンペーンの乱用で売上を作ることはしてはならない。
【付加価値訴求の輸入牛】
商品化に関しては、定番商品の大型化(ジャンボパックの定位置販売)にも取り組み、ボリュームパックとして、ガッサ盛りの高蓋トレーアイテムをアイキャッチ商品として展開する。
輸入牛に関しては、米国や豪州の他にもウルグアイなどの参入も市場として出てきている。
新型コロナによる、工場は物流の脆弱化だけでなく、ブラジルでのBSEの発生などが、中国の輸入規制の対象となり、日々世界情勢が変化しているため、日本の畜産市場が、世界の流通から阻害されないようにするためにも、安く売って売上を作る以外にも、売る術を身につけていく必要がある。
その手段として、産地、品種、グレードがある。
品種では、ブラックアンガス種だけでなく、ショートーン種やヘレフォード種なども、日本ではほとんどいない品種で輸入牛でしか提案できない品種と考えられる。
この品種を使った提案では、競合と同じレッドオーシャンで戦う必要もなくなる。米国産では、それ以外にもプライムやチョイス、セレクトなどのグレードも、差別化の一つ。プライムを安く仕入れて、安く売ることが仕事ではなく、グレードや品種を、その価値に見合った価格で販売することで、商品の魅力が出る。
【安定仕入れの輸入豚】
輸入豚肉も、米国やカナダをはじめ、冷凍の豚肉に関しても相場が高い状況が今しばらく続く。これは、先にも述べたように新型コロナの影響によるものであるが、今なお世界中ではASF(アフリカ豚熱)が、コロナの裏側で猛威を振るっている。幸い北米には感染は出ていないが、中国はじめアジアやヨーロッパの多くの国で感染が確認されている。
そういう意味でも、安定した仕入れができるように、安い業者から仕入れるというスタンスから、安定した仕入れで売場を作る方向へ変えていく必要がある。
中国などの大国が仕入れ国を変更するだけで、たちまち輸入豚肉の仕入れが困難になることも視野に入れ、価格だけに流されないように取り組んでいく必要がある。
特に輸入豚肉は、売上構成比も高く、利益商材になりがちな畜種であるため、今後の取り組みにはしっかりと熟慮して取り組むと良い。
商品作りは牛肉同様に丁寧に行なうことがポイントとなる。輸入だから適当に商品化しても良いという意識では、もう売れる時代ではない。
しゃぶしゃぶ用や切り落しに商品化する場合でも、綺麗に商品化して販売する。
輸入豚の特徴と価値を今一度理解し、品種は三元豚や四元豚、デュロックなども流通している。
米国であれば餌がトウモロコシを食べており、カナダであれば麦を食べているなどの特徴もある。
納品価格が高い今だからこそ、価格や商品化も見直す必要がある。
【輸入羊肉の定番化】
ラム肉と言えばステーキかジンギスカン提案しか思いつかないチーフも多い。
しかし、YouTubeを見てみると、ラム肉ではジンギスカンよりも、ラムラックのローストやもも肉を使用した煮込み料理、スペアリブを使用したおうちBBQなど多種多様なメニュー提案がなされている。
売場の打ち出しとしても、以前はL-カルニチンでダイエット提案が主流だったが、今やカルニチンよりも、一畜種として認知されており、牛豚鶏に続く畜種として、牛肉や豚肉のようにメニューのバリエーションに対応する商品化が必要となっている。
クリスマス、年末商戦に向けて、ハレの日メニューでは、ステーキが最適であるが、ケ型でも羊肉を取り入れることができるようにしていきたい。
豚ロース生姜焼き用、鶏モモ唐揚げ用のように、定番で売れるメニューが必要となる。
ラム肉で認知度が高いのは、もちろん「ジンギスカン用」であるが、外食店で人気であった「アロスティチーニ(羊串焼き)」は、羊名人を関連販売して提案すると良い。
中国では一般的に食べられる羊肉は、しゃぶしゃぶが人気。しゃぶしゃぶ売場では今や豚肉が主流であるが、30年前までは牛肉しかなかった。
ピリ辛の唐辛子ベースのつけだれで食べる提案を仕掛けていくと良い。
輸入肉に関しては、今後も新型コロナが落ち着くまでは、相場が高めに推移することが想像できる。
そのため、納品価格が高くても利益が残る体制に舵を切る必要があることは言うまでもない。価格訴求型の売場作りや店舗展開が増えているのは、世帯年収が減っていることから、全体の流れとしては出てきてしまうのも必然であるが、だからといって、納品価格が下がるわけではないため、提案方法を真剣に企業が考える時期となっている。
まずは、今のインフラで話題となっている、動画もよく研究して、それに見合った商品化や売場提案をしていくように、変更していくのが先決である。
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