原料を知り売り方を変える

世界中で食肉相場が上がり、店頭売価変更をしなくてはならないまでに、まで影響を及ぼす状況となっている。
今まで、年間を通して、お肉の原料相場は上下するものの、店頭売価は変えなくても、メーカーや量販店の粗利益の中で相殺できる程度の範囲であった。
しかし、今年の原料事情は、根本的に「飼料相場」から「物流コスト、製造する人員確保」まで、生産から店に届くまでのすべての工程で影響が出てきている。
「チルド冷蔵の牛タンスライス(米国産)」などは、昨年まで、100gあたり398円で販売していたのが、現在は798円という、2倍の価格での販売にまで上昇してしまっている。
生産工程のコスト構造は、簡単に改良できるわけではないし、量販店が農場を持ってカット工場を作るにはさすがにリスクが高すぎる。
また、相場が高い現状で、仕入れ価格を安くしてほしいという一方的な要請は、ビジネス上の長期戦略としてWin-Winの関係が作れないため最も愚策となる。
そこで、仕入れの段階で、どの商品が高くてどの商品が安いかを知ることで、販売方法を工夫し、代替のアイデアで難局を乗り切りたい。

米国産豚切り落し(バラ、ロース)解凍 119円/100g

輸入豚ロース切り落しは、バラとロースの「ミックス切り落とし」にして商品化する。
輸入豚肉のロースとバラでは、バラの方が安い。
特に冷凍のバラは比較的余剰となりやすいため、価格が下がりやすい傾向にある。
このバラをロースと一緒にスライスして、切り落し焼肉や切り落ししゃぶしゃぶ用に商品化する。
部位のバランスは、納品価格を見て判断して、ロース:バラが5:5や3:7など、バラが多くなればなるほど店頭売価は下げやすくなり、また値入も取りやすくなる。
商品化は冷凍豚肉を半解凍の「パーシャルフリージング(-5~-2℃の範囲で、半凍結・微凍結状態)」で行なうと、ロースとバラを同時にスライスすることが出来るため、作業性が良い。
輸入豚肉の産地については、チルドであれば米国やカナダの北米、冷凍は北米だけでなく、スペインやデンマークなどの欧州などからも輸入される。現在仕入れているメーカーに確認して、最適な国を見つけると良い。

(ポイント)

豚ロース切り落しや豚バラスライスなど、一部位を使用した商品だけでなく、バラ・ロースなどミックスすることも商品化で可能。

国産黒毛和牛ハツ焼肉用 298円/100g

相場高の焼肉商材は黒毛和牛内臓を上手く使用して、選択肢を増やすことで売場を活性化。
「チルド牛タン」は和牛ロイン並に高く、消費者が購入しにくいだけでなく、店舗も購入しなくなっている状況となっている。
実はその裏で、国産牛や和牛の内臓は、価格が高騰しているわけではなく使いやすい。
「和牛内臓」は、米国産牛タンよりも十分優位な安さを打ち出すことが可能な価格帯で販売出来る。
特に、「赤モノ」の「ハツ(心臓)」は売り場でも焼肉コーナーが充実して見えるアイテムの一つ。
脂肪がたくさんついたアブラハツであれば、焼肉好きにはたまらない一品となる。
内臓は牛肉だけでなく、豚肉の内臓も比較的安価に商品化することが可能である。
内臓は単品大量販売するようなアイテムではないが、少量多品種で販売することで、焼肉コーナー全体の売り上げに貢献することになる。
相場が高いからこそ、安価な商品をしっかりと品ぞろえして売り場全体を活性化させたい。

(ポイント)

牛タンなど特に高騰している一単品商品にとらわれず、焼肉コーナー全体を活性化。一度食べてみたいと思える商品の品ぞろえを充実させる。

焼肉・BBQ用味付けホルモンミックス100g100円

「ガツ」や、「大腸小腸、レバー、ハツ」など、豚の味付けのホルモンミックスで、原料のフル活用をする。
「豚ユデモツ」や、「豚生モツ」、など、単品原料だけだと、使いやすい原料、売り込みやすい豚内蔵原料は、これから価格高騰していく。
また、原料の取り合いになり、仕入れ量が制限されたり、販売に支障をきたすことになる。
そこで、豚内蔵を幅広く活用した提案で、売り上げ、利益確保を目指していく。
幅広く、ミックスなどで、国産豚の内臓肉の焼肉販売を強化して欲しい。

(ポイント)

焼肉・BBQ用途あるが、これを鍋や、もつ煮込みとして、焼肉だけでない食べ方があるというアプローチで、通年商品にしていく。

固定概念にとらわれない商品展開

相場が下がったときは、水を得た魚のように安売りをして売り上げを稼げても、相場が上がったときはメーカーに値下げ要請をするようでは、ビジネスが成り立たない。
納品単価が上がったときに、様々な発想で難局を乗り切ることが重要である。
同じ商品を毎日ロボットのように、商品化しているだけであれば、近い将来本当にロボットに仕事を奪われてしまう。
しかし、「環境は人のように生きており」、相場が高くなったり安くなったり、気象条件によっても状況は常に変わる。
その中で、「商い」をするということは、毎日同じ商品を作っているようでも、その利益率は少しずつ異なっている。
特に、今の環境のように特異な場合(今後もこの環境が続くのであれば、特異という言い方は間違っているかもしれない)、違った商品化や切り口で商品を作っていかなければならない。
部位を単品で商品化していたものを、部位混合にして値入率を上げることや、新しい商品の導入によって、高騰しているアイテムではない商品で、それ以上のパフォーマンスを出せる商品を見つけ出せば、高騰しているアイテムの問題ではなくなる。
新しい切り口や提案を考えるには、情報が重要なカギとなる。
必要な情報を必要な時に使えるように、自らの知識は常に新しくしておかなくてはならない。