11月に売込むこの商品
今年の11月は年末商戦に向けて真剣に取り組む必要がある。
まず、輸入肉の相場が高く、米国産やカナダ産の豚肉で利益や売上を簡単に確保出来なくなっていることが、重大な問題の根幹にある。
引きずられるように、国内の畜肉に関しても相場は高い。また、3畜種で最も安価な鶏肉に関しても、クリスマス商戦の需要と重なり高騰している。
輸入肉が高騰していることは、相対的に国産畜肉に割安感が出るということである。
売場作りを仕入れ先の在庫状況と照らし合わせながら、臨機応変に対応していく必要がある。消費者ニーズを上手く捉えながら、商品化と売場作りを模索していく。
【精肉】
黒毛和牛肩ロースすき焼き用のハーフカットを展開する。
食事を想像すると、ハーフカットの方が断然消費者ニーズには叶った商品化と考えられる。
当然ながら、商品化には倍の時間がかかってしまうが、年末商戦を成功させる近道となる。
12月の年末商戦を前に、11月には年末販売する和牛の顔出しをしっかりと行なっておく必要がある。最近では、年末一発勝負で売れた、売れない、を評価する企業が多いが、年末にこのスーパーですき焼き用を購入しようと、消費者が検討をするのは11月からの1ヶ月。その間に、商品の魅力をしっかりと伝える必要がある。
年末商戦までに行なわなければならないスーパーの行動は、年末商材を消費者に一度食べてもらうことである。
特に近年は新型コロナの影響で、少し高価な物を購入するものの、失敗したくないと言う消費行動から、一度食べたものを購入する傾向は一層強くなっている。
そのため、年末商戦と同じ売価帯の商品の品揃え(顔見せ)に加えて、同じブランドの少量パックでお試し購買を行なってもらうようにする。
今回の商品化(ハーフサイズ)は、消費者ニーズから生まれたすき焼き用の一つの展開方法となる。
実際、この読者も従来の盤面の大きな和牛肩ロースすき焼き用を調理する際、サイズが大きすぎてカットした事があると思う。
特に肩ロースは大きすぎるため、ハーフサーズにしても十分料理を楽しめる。むしろ、ハーフサイズの方が食べやすくて、枚数が増えるため、子持ちファミリーには購入しやすい。
銘柄豚を使用した「外モモ切り落ししゃぶしゃぶ」を拡販する。
銘柄を使用する理由は、競合とはバッティングしないブランディングが出来る部分であり、輸入豚肉が例年よりも高く推移しているため、銘柄豚肉に割安感が生まれていることにある。
「ロース、肩ロース」は、比較的高めの価格設定となっているが、「モモ部位」や「肩部位」は、小間切れなど安く売ってしまっている企業も少なくない。そのため、「モモ部位」でもスライスとして価値が生まれやすい外もも部分を、切り出してしゃぶしゃぶ用として価格をやや高め設定で販売する。
スライスとして綺麗に商品化することが出来れば、スライス取りでも良いが、オペレーションを簡素化するため、「切り落し」タイプのしゃぶしゃぶでも十分価値は生まれる。
特に、脂肪を好まない女性には、豚外ももの商品化はニーズにもマッチしている。
売場展開は、しゃぶしゃぶコーナーで販売するが、平日は下段、週末は冷蔵多段ケース3段目など中段でメリハリを付けて展開する。
最も量産する「豚ロース、肩ロース」部位を主力に、利益商材としての展開を行なう。
また、最上段は黒豚やイベリコ豚などの丸皿などを展開することで、売場全体の作りをコーディネートするとよい。
【半製品】
国産牛豚合挽ミンチのハンバーグにクルトンを周りに付けたクルトンハンバーグ。
見た目のインパクトは、売場の中でもピカイチとなる。当然、味も言うまでも無くおいしい。焼き上がりは、中の肉汁と脂をクルトンが吸い、カリッと香ばしく焼き上がる。
中心の種は、国産牛豚合挽で、ハンバーグの黄金比7:3の合挽ミンチを使用する。
美味しさと肉汁ジュワッをさらに増強したい場合は、中心に粗挽き豚挽肉、外側に中挽き程度の牛挽肉で包み込むのがオススメである。
量産するには、手間がかかるため、まずは7:3の合挽ミンチを使用すると良い。クルトンは、ケチらずにたっぷりと周りに付けることがポイントとなる。
販売場所は、挽肉売場付近であるとインパクトが強くなる。
半製品売場に展開する場合は、タレ漬け商品との選択となってしまうが、挽肉売場付近で販売する場合は、夕食のメインとなる可能性が高く、ついで買いの位置づけからメインメニューへ昇格する。
挽肉の購入頻度はやや落ちるものの、購入する100g単価は挽肉よりも上昇する。
消費者のファーストインパクトは良いが、次にどうやって焼くの?焼き方難しそう。という思考が生まれる事は想像できる。
そこで、「コト販促」を実施。「コトPOPやレシピカード、簡単な作り方動画」などを掲示するとより購買行動が容易となる。
A5等級和牛展開論
黒毛和牛の等級比率をご存じであろうか。
A5等級が最近増えている事は耳にしたことがあるとは思う。
具体的には、2002年格付けがAのうち5等級は13.8%、昨年2022年にはA5等級は56.0%まで増加し、地域によっては6割から7割近くまで構成比が高くなっている。
和牛の血統や生産効率、飼料や肥育の研究が進み、5等級が出やすくなった結果が現れている。生産者の立場に立つと、A5等級BMS12を目指せば、相場が高く売上につながるため当然の結果であると言える。
事実上、売りやすいと言われる3等級や4等級の割合がかなり少なくなっており、オーダーをしても仕入れることが出来ない状況が続いている。むしろ、年々増加しているA5等級を使う術を考えていくことが重要ということは、グラフを見ると一目瞭然である。
A5等級の和牛は、価格的にも3等級や4等級よりも必然的に高くなるため、例えばリブロースが100gあたり1280円だった場合、パック重量が200gになっただけで、2560円になってしまう。
一つの方法としては、ギフト用や折り箱などを使用した、百貨店や高級焼き肉店の肉おせちのような、高級側に完全に振り切ってしまうことである。ハレの日には、この方法でパック単価1万円などでも販売可能となるため、年末商戦に向けて展開を進めるのも良いと思われる。
年間通してハレの日ではないので、ウィークデーでも定番で販売していく必要ある。
パック単価を上げないように、普段使い出来る価格帯で展開するには、パック重量を減らす必要がある。単純にスライスを1枚などでは、魅力的な商品とはならないため、見栄えにもこだわった商品化を行なう必要がある。
黒毛和牛3点組み合わせ自由な盛り合わせ980円
小さな1トレーを380円設定し、よりどり3パック980円の、バンドルを1トレーで行なう。
ロース、バラに加えて、肩やモモ系を上手く組み合わせて、値入ミックスで利益を落とさない仕組みで展開する。
リブロースであれば、1部位からカブリ、芯、マキ、中落ちカルビなど様々な見た目の部位を取ることが可能となる。
ロースだけで展開すると、当然利益が圧迫されるので、バラやモモなどを混ぜて展開することがポイントとなる。
押さえておきたい最新動向「ふぞろいカテゴリ」
「ふぞろい焼肉」が店頭に並んでいなければ、すでにトレンドに乗り遅れている。
お肉をスライサーでスライスし、高蓋トレーに盛り付けて展開するだけの、精肉の製造オペレーションで最も簡単な商品化である。
味なし商品以外に、ガーリックペッパーや塩だれ、以前ご紹介した塩レモン味など、タレ漬け焼肉としても展開出来る。豚肉であれば、3mmから5mm程度の厚みで焼肉用として、お弁当のおかずにも使える簡便商品である。
「ふぞろいアイテム」は、今年に入り全国に広まり、あらたなカテゴリとして確立する勢いである。
輸入肉の高騰によって、展開できる部位が今までと異なり、「バラや肩ロース、ロース」部位から始まり、いまでは安価な商材にまで広がりはじめている。
最近では「ボンレスバット」なども、ふぞろいアイテムで展開し始めている。
実は、この展開は、「新たなカテゴリ」が誕生する動きをしていると考えられる。
おそらく豚肉の「冷しゃぶ」が全国に定着したのが、今から25年くらい前であったと思う。
冬は「しゃぶしゃぶ」、夏は「冷しゃぶ」提案で、年間通して豚の薄切り肉が販売されている。
それまでは冬に食べる牛しゃぶしゃぶ用が一般的で、しゃぶしゃぶコーナー自体、夏場にはほとんど品揃え程度しか展開せず、そもそも豚肉はしゃぶしゃぶ展開していなかった。
しかし、豚肉を使用した「しゃぶしゃぶ」展開で、ぽん酢やごまだれで食べるとおいしいことが巷で広まり、夏場にも豚冷しゃぶ用が展開されるようになった。
そのとき、豚ロースや肩ロースしか展開していなかったが、現在では、「バラ、モモ」部位だけでなく豚トロなども「しゃぶしゃぶ用」として展開している企業もある。
カテゴリとして定着する要素として、特定部位での展開と言うことでは無く、様々な部位があることが必要である。
「しゃぶしゃぶコーナー」や「焼肉コーナー、ステーキコーナー」など、コーナー化が成立しているカテゴリは、単品での展開ではないことはご存じの通りである。
実はこのふぞろい焼肉は、焼肉というカテゴリではなく、ふぞろいカテゴリとしてコーナー化される可能性が高い。
切り落しや小間切れのように、定番で使用出来る5mm程度の安価な味付け商材、生姜焼き商材、焼肉商材として確実に売場作りが可能となる。
豚肉だけでなく、牛肉のふぞろいステーキなども畜種を越えた展開がすでにされており、今後の展開が注目となる。
「新型コロナの余波と変わりゆく主導権」
新型コロナの影響で、工場での人員確保が出来ていない。
そのため、例えば、鶏肉では、せせりや砂肝などの副産物が手に入りにくいだけでなく、クリスマスに向けて手羽先チューリップなども手配できないと予想できる。
工場や物流に関しても、引き続き人員不足から、このような商材の変わりとなる商品展開を考えておかなくてはならない。
買い手市場と売り手市場の立場が世界中で逆転していることも注視していく必要が出ている。
現在の日本は、量販店に主導権がある状態が過去から続いているが、海外ではすでに、売り手である生産やメーカーに主導権が渡っている。
食料生産量に限りがあるため、企業として、国として売上や利益が出る方へ販路がシフトしているのである。日本は、「安い日本」と言われるほど、ディスカウント傾向に向いているが、海外は給料も上昇し物価が上昇しているため、日本は貿易の段階で、すでに商品の購入に対して買い負けしている。
これは深刻な状況で、食糧自給率が4割の日本にとっては死活問題であることは言うまでも無い。
この状況で、量販店は値引き交渉を積極的に行なうと、当然ながら販売してもらえなくなる状況が刻一刻と近づいていると言う、危機的状況を感じてもらえるだろうか。
今、真剣に取り組まなくてはならないのは、相場が高くても利益を残すような売り方を考えることである。業務の効率化や外部委託をしたところで、環境が変わるわけではないため、今までと同じ売り方ではない商品化、買いたくなる商品を生み続けることであると思う。