12月に売込むこの商品

いよいよ激動の2022年が終わる。
世界的にはウクライナ侵攻や異常気象による干ばつと大洪水、過去最大の台風、そして日本においては新型コロナ第7派による感染者の激増。
これらの影響を畜産業界も大きく受けることになった。
日本の経済回復が遅れたこと、安い日本と揶揄されるように、日本の購買力が落ちた(変わらなかったと言う方が正しいかもしれない)。
牛タンやショートプレートのように、輸入食肉が軒並み諸外国に買い負けし、今まで安く大量に仕入れることが出来た商品が手に入らなくなってきた。
今こそ、サスティナブルな食肉産業を考え直す、実行に移すタイミングとなっている。
主力アイテムを国産食肉とし、安定供給出来る販売体制を整える。

【牛肉】

和牛はA5等級の構成比が高い。
交雑牛はB3等級~B4等級で値頃感のある商品を品揃えする。
頻度品は国産牛(ホルスタイン)を上手く活用する。

国産交雑牛バラ(三角バラ)ふぞろい焼肉 698円/100g

クリスマス商戦をターゲットに、三角バラふぞろい焼肉など、焼肉を拡販する。
今年のクリスマス商戦は、輸入鶏肉の量が安定的に仕入れることが難しいため、輸入冷凍骨付きレッグやローストチキンでの売上は、ある程度に限定される。
そのため、焼肉やローストビーフ用ブロックで売上を確保する。
12月の年末商戦に向け、交雑牛をセットで仕入れ、クリスマス商戦に三角バラなど焼肉商材を、ふぞろい焼肉で販売を強化し売上確保を狙う。
オペレーションが簡単な商品化で人件費の削減にも貢献する。
売場展開では、「肩、シンタマ、ランプ」部位、なども、ふぞろい焼肉として品揃え可能。
希少部位の「みすじ、トモサンカク、シンシン、イチボ、ランボソ」は、綺麗に焼肉やステーキにカットすることで、値段を上げて販売可能となる。
近年、ご存じの通り、交雑牛は和牛に匹敵する綺麗なサシを和牛よりも安価に提案することが出来る。
ロイン系は、年末商戦に定番価格で和牛と併売し、しっかりと利益を稼ぐように戦略を考えると良い。

【豚肉】

輸入豚肉の相場が高く、さらに安定的に調達できないという環境から、輸入豚肉のブランディングを中止し、国産豚、銘柄豚、SDGsの観点から地産地消豚などの引き合いが強くなっている。
輸入豚肉と国産豚肉の価格帯が近くなっていることからも、国産に焦点を絞った展開が2022年下期から一層強まっている。

国産銘柄豚肩ロース・モモ 豚すき用 980円/300g

年末商戦に銘柄豚を使用した折り箱展開を行なう。年末商戦直前までは980円ラインまでの購入しやすい価格帯を主力ラインとして展開し、30日31日は1580円1980円などのギフトパックも品揃えする。
折り箱商品は、そのままスライス肉を盛りつけても良いが、ミートセロファンに肉を包んで展開する方が、高級感が出る。オペレーションが大変と思われがちであるが、スライスは社員が連続取りして、商品化はパート社員やアルバイトにも仕事を任せて、別作業としてセロファンに包んで商品化していく。
業務は分業することで、効率的な仕事方法を検討すると良い

年末商戦のタイミングと売上を、前年をベースに再度検討する必要がある。
新型コロナや働き方改革もあり、正月3が日を休業する企業も増えている。
そのため、年末商戦の売上の立ち方が、30日31日に集中し、29日まではウィークデーのような売れ方をしている地域も少なくない。

【鶏肉】

新聞やニュースを見ていると、8月の輸入鶏肉の輸入量が前年同月2.2%減少の5万100トンとなっている。
特にブラジル産が高値となり、前年同月比6.4%少なく輸入量が大幅に減少している。
これは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、欧州や中東の需要がブラジル産に集まり、高値が付いていることに起因している。
その反動でタイ産鶏肉の引き合いが強くなっている。
こちらは前年同月比で22.2%増加となっている。
生産量は1万1000トンと新型コロナの影響があるものの、生産能力は回復傾向にあると予想されている。
輸入鶏肉の影響を受け国産鶏肉もクリスマス商戦では、数量が逼迫することが予想される。特に、チューリップなどの製造が間に合わず仕入れることが困難となることは予想されるため、メーカー任せのチューリップの発注ではなく、別の策を練る必要がある。
クリスマスだからといった無意味な特売はやめ、メニュー提案など切り口を変えた提案を行ないたい。
今年は、「合鴨」や「ターキー」といった、今までクリスマスや年末商戦で主力としてこなかった商品に光を当て、展開するのも一つの方法となる。

国産合鴨モモ・ムネ鍋用498円/100g

国産合鴨を使用した鍋用の展開を週末やクリスマス、年末商戦に行なう。
真空販売でも良いが、国産は単価が安くは無いため、パック単価が1280円を超えないように重量調整すると良い。
「モモ」と「ムネ」を別々に販売すると、価格が高いことが際立ってしまうため、「モモムネミックス」で商品化して、割安感を演出すると良い。
合鴨を販売する際には、合鴨鍋スープの展開、合鴨だんごなど品揃えすることで、ワンセットのメニュー展開となる。
焼肉コーナーに合鴨を使用した焼肉も紹介すると面白い。
合鴨を焼いて、粗挽きの塩と黒胡椒で食べると焼肉の新たな境地を発見できる。

ヤリスギ年末伝説2022冬

近年まれに見る食肉需給状況が激変している年末を迎える。
今まで困ることが無かった仕入れが安定的に出来なくなり、価格も牛豚鶏、国内外すべてが高騰するという前代未聞の状況となっている。
今までの成功体験から、きちんとモノを売っていれば利益は残るという現実とは明らかに変わっている。今、私たちが取り組まなくてはならないことは、冷静に調達できる商品を選別して、商品化やオペレーションなども再度構築することにある。
年末年史商戦は、国内産畜肉に軸足を向けなければ商売が成り立たない現実は目に見えている。
売れている競合店のマネをして、苦しむような商売スタイルは時代錯誤も良いところである。
自店のあるエリアで、競合に勝てる商品、品揃え、価格帯を冷静に判断した上で、エリアの生活者に魅力的な価値のある売場作りを考える必要がある。
競合は、当然量販店だけでは無く、「食肉店」や「ディスカウント店」、「生鮮を品揃えしたドラッグストア」、エリアによっては、当日配送できる「EC」なども競合と考えられる。
ディスカウント店やドラッグストアの激安価格をマネして、価格を下げても、バリューチェーンや仕入れ構造が量販店とは異なっているため、マネをすることで自爆することになる。量販店のような見た目のディスカウント店は粗利16~17%程度、ドラッグストアは11~12%程度の粗利があれば良い。量販店で、この粗利で運用しようとすると間違いなく赤字となる。それはコスト構造が全く異なるからである。

見た目だけマネしても何も解決しない!
彼らには出来ない商品を作って販売しよう!

国産黒豚鍋セット 1280円/P

クリスマス商戦後から折り箱黒豚鍋セットを展開し、圧倒的な映え展開を売場で構築する。
システムトレーではなく、「折り箱」を使用することで高級感とギフト感を最大限に演出する。
「イベリコ豚」の進出によって下火になっていた「黒豚」をハイグレード豚肉として松竹梅戦略の最高峰「松」の位置づけで再度君臨させる。
「黒豚挽肉」を使用した「つみれ」も入れ、カット野菜で鮮度感を出す。
この20年で、ローコストオペレーションが進みすぎて、どの店舗もシステムトレーに並べられた50年前の昭和の精肉を再現した状態となっている。
ここで、いち早く逆張りをした精肉は異色の展開で消費者からも注目される店となる。
20代もしかすると30代の精肉担当者は、黒豚を食べたことがない可能性すら否めない。
脂肪の甘さが特徴となる黒豚の商品化は、脂肪のトリミングをしすぎないことにある。何でも同じ商品化、トリミングを作業として行なうのでは無く、商品やグレード、肉質によって、脂肪の付け方や厚みなども研究して、年末に最高においしい肉を地域の方に食してもらいたい。

目を覚ませ!精肉部門!信じるか信じないかはあなた次第です!

押さえておきたい最新動向「真空そのまま販売」

タイ産合鴨ロース(冷凍)598円/P

精肉の販売形態が大きく変化しようとしている。
「産直パック」や産地パックと呼ばれる、「個包装」になった「真空パック商品」を定番化させることで、バックヤードの人手不足を解消させる。
製造小売業と呼ばれる、原料を仕入れてバックヤードでスライスや手切りによって商品化する精肉は、トレーに商品を盛り付けてラップ値付けをして販売する。しかし、近年は作業人員確保が困難になり、アウトパック化も同時に進められてきた。
最近では、産地で真空パックした商品を作ることで、商品化の手間も省かれた、産直パックや産地パックと呼ばれるような商品も多く出回るようになってきている。
「産地パック」は、産地でと畜した製造現場から空気に触れること無く、店頭の売場まで届くため、衛生的にもよく、菌が繁殖しにくいことや、酸化・劣化を抑えることが出来る。
価格は、例えば鶏肉だと、通常業務用は脱気包装の2kgパックが一般的であるが、それが1枚1枚個包装となっているため、オペレーションの時間が2kgパックよりも少し遅くなる。
つまり単位時間当たりの出来上がりコストがやや上昇するため、納品単価が同じ商品でも上昇する(個包装と2kgパックの中身は同じだから、2kgの単価と同価格にする要求をメーカー側にするのは、生産の仕組みをわかっていないことを、自ら露呈しているようなものである)。
ただ、目先の納品単価は多少上昇しても、精肉のバックヤードの商品化作業は無くなるため、「実質製造コストゼロ円」で陳列ができるため、棚卸し時には実質利益は残るということである。
今回紹介する「タイ産合鴨ムネ肉」は、冷凍真空パックであるが、このまま値付けをして販売することも可能であるが、シールが剥がれてしまうこともあるため、あえて、トレーに乗せてラップをした過重包装で回避させることも出来る。
特に冷凍ケースで販売する場合は、シールが剥がれやすいため、この方法が特にオススメである。
トレー販売することのメリットは、通常商品と同じようにシステムトレー幅で綺麗に陳列できること、値付けシールが剥がれないこと、見た目も綺麗になるため、消費者が購入しやすくなることである。
消費者は、家庭の冷蔵庫でパックを開封、真空パックを取り出し、誰も触っていない真空パックをそのまま衛生的に冷凍庫に格納することが出来ることにある。
デメリットとしては、トレー包装資材分が余分なコストとして上昇してしまうことである。
ポイントとしては、販促シールを添付することである。
銘柄鶏や銘柄合鴨は特に、ブランドシールを添付することで、産直であることの付加価値が必然的に付いてくるため、必ず販促シールは添付する。

「持続可能な精肉を目指して」

SDGsと言う言葉は、多くの人が聞いたことがあるワードである
。しかし、量販店で具体的に何をすれば良いのか、よくわからないのが現実である。
Sustainable Development Goalsの頭文字を取ったSDGsであるが、日本語では、「持続可能な開発目標」と訳される。
2015年9月に国連総会で採択された、持続可能な開発のための17の国際目標のことで、169の達成基準と232の指標が決められている。
「1.貧困をなくそう」から始まり、私たち量販店が関係する部分でよく使用されるのが、「12.つくる責任 つかう責任」である。
恵方巻きやローストレッグなどの作りすぎによる廃棄問題は、ニースでも取り上げられていた。
それ以外にも、トレーを廃棄する際のCO2排出を考えて作られた、バイオマス原料を使用したトレーに変更することや、紙トレーなどに切り替えるなども取り組みとして考えられる。トレーにバイオマスマークなど書かれている商品も増加傾向にある。
1枚当たりの単価はやや高くなるが、国の政策でCO2排出量を企業がへらすよう、取り組まなければならないため、精肉としても積極的に取り組んでいくと良い。
実は、産直パックをそのまま販売することは、原料包装を詰め替える際に出ていたプラゴミ自体発生しなくなるため、プラスチック使用量を削減していることにもなっている。
このように、身近なところからSDGsに取り組むことも可能なため、少しずつ意識をして取り組んでもらいたい。