新世代のカテゴリーキラー「ロピア」
かごの中には肉がたくさん入っている。ロピアに行くとそう思うに違いない。実際、他のSMやDSでは見ることが出来ないほどの買い物をしている消費者が多い。しかも、カード決済ができないため現金での支払い。益々面白い店舗である。もともとロピアは過去をたどれば精肉店であったこともあるが、それだけが理由であるとは言えないのは見てわかると思う。
シンプルかつ大胆なレイアウト
客導線にしたがって「牛⇒豚⇒鶏」と言いたいところであるが、多段ケースは「豚⇒鶏⇒挽肉」の次に牛肉が並ぶレイアウトである。(左下に青果、鮮魚があり客導線は下から上、右に流れるレイアウト)チェーンストアの基本である高いものから安いものの売場構成では作られていないのが一目でわかる。しかし、これでも牛肉が売れる売場作りなのである。主通路突き当りに牛肉コーナーを持ってきているのは、マグネットの原理から一等地に牛肉を持ってきていると言える。
また、売場の迫力は壁のダイナミックな文字や絵が遠くからもわかるもので、精肉一番に牛肉をもってこなくても売れる自信が売場に現れている。
では精肉一番目に目につくのは何かというと、冷凍の牛スライスや焼肉、豚スライスなどの「メガパック」である。2000円前後のメガ盛パックが陳列されている。ほとんどのお客は、これを見てまず驚く。これぞロピアのびっくり作戦である。
平台にはそれぞれエンドが設けてあり、「超価格訴求商品」が並んでいる。
「号外特売!」と書かれたPOPには、「国産豚バラスライス100g98円」や「スペイン産イベリコ豚バラスライス100g99円」、「国産ハーブ鶏もも肉100g59円」など破格値のアイテムが並ぶ。これを見て買わない消費者はいない。その代りに、1枚入りなどのアイテムは特売平台には並んでおらず、どれもがSMでいうところの特大パックである。
多段ケースにも最下段は基本的に「大パック~特大パック」が陳列されている。
陳列量も毎日がオープン開店記念セール的な陳列量である。これがロピアの販売戦略なのである。
生肉が終わると、お肉を使った「弁当、ローストビーフ、おつまみ商材、サラダアイテム」が並び、肉にこだわった消費者がこぞって肉惣菜を購入している。
肉はまかせろ!!
まず、目に飛び込むのは他の量販店とは違い、天吊りやPOPのダイナミックさが面白い。 DSでありがちな、“競合他社と比べてください!どこよりも安い100g48円!”のような価格訴求だけではない。精肉の多段ケース上部にもあるように、“肉はまかせろ!!”といった勢いのある店内作りはロピアならでは。
【壁面冷蔵多段ケースでの展開】
精肉店出身の誇りと自信が表現されている。一般消費者の口コミサイトなどでも、「お肉はロピアが一番」と数多く投稿されているのもうなずける。天つりやコトPOPなども、精肉に自信がある担当者の一言が書かれており安心感が生まれている。
ロピアで最も注目すべき部門は精肉であることは間違いない。では、その精肉がどのような売場作りや商品作りをしているのであろうか。
“肉はまかせろ!!”がまさに表現された牛肉売場。
まず驚かされるのは、和牛が陳列された売場に人だかりが常にできていること。
牛肉にしようか、豚肉にしようか迷っているのではなく、「和牛のどのパックを選ぼうか」迷っているのである。
和牛ステーキは大型のトレーに盛付け、迫力のある売場作りを行っている。
トレーは黒金トレーを用いており全体として、簡素ながらも“和”や“高級感”を自然と演出した売場となっていることがポイントである。
「超厚切りステーキ」はロピアの代名詞ともいえる商品。「5等級みなもと和牛ヒレ(シャトーブリアン100g980円)」でも5㎝はある厚みで1枚約2000円でも魅力的。「5等級みなもと和牛ミスジは100g680円」、「国産牛4等級みなもと牛ランボソステーキは100g498円」などバリエーションも豊富に展開している。和牛と国産牛肉(交雑牛)を組み合わせ、国産牛肉がさらに安い印象を与えている。
ステーキコーナーには「和牛ミニステーキ3980円」でステーキの盛り合わせも販売している。内容量は記載されていないが700g~800g程度。部位は肩肉を使用しており、「ミスジ」「クリ」の部位シールが貼られている。
輸入牛肉もしっかりと高品質をうたって販売している。「米国産牛肩ロースステーキ」はブラックアンガス種。しかも流行の熟成牛の記載もあり、単に米国産牛肉ではないと消費者も認識する。100g238円で販売されており、スジ部分には隠し包丁も入れており、こまかな気配りが伺える。
「かながわ夢ポーク豚モモすき焼きしゃぶしゃぶ用100g148円」。豚モモであるが、ロピアということを思うと比較的高めなアイテムである。しかし、サシがしっかりと入った銘柄豚はこの価格でも安く感じるアイテムである。
多段ケースには、このような一見普通のアイテムのように見えるものもこだわって商品化して販売している。
【平台ケースでの展開】
基本的には、平台は広告や号外特売のアイテムが並ぶ。しかも、単品大量販売にも程があるほどの単品大量販売を行っている。写真を見てもわかるように、1アイテムでとんでもない量が陳列されている。これが、何回も補充される量が作られ、売れている。この勢いは価格、商品化、魅力的なアイテム群に隠されている。
「5等級みなもと和牛も切落しは100g398円」の超特大パックで「ガンガン売ります!」。 特大パックは700g以上入っておりパック売価約3000円。単品大量販売の代名詞ともいえる迫力のある売場作りが、ロピアが人気である理由の一つ。
「5等級みなもと和牛切落し100g398円」は、日によって部位が違う。調査当日は「和牛肩肉」を使用しており、「ミスジ」のサシが綺麗に出ていたためお買い得感がある。
夕方に行くと昼間に大陳していた商品がほとんど売り切れ状態で消費者心理をくすぐる一品であったことは間違いない。
和牛のみならず、「イベリコ豚バラスライス」もダイナミックな大容量パックで展開。なんと「100g99円という超特価!」この価格でイベリコ豚を購入しない消費者はいない。超特価である。
平台は、とんでもなく安いアイテムを客寄せで集客している。薄利多売の究極という感じである。これを見てSMでまねができないことは言うまでもない。そもそもの仕入システム、利益構造が違うのは素人が見てもわかる。これはロピアだから出来るということを、強調しておきたい。
【自社製加工肉とミート惣菜の開発】
精肉コーナーの平台ではハムソーセージも精肉同様に大量陳列されている。そこで気が付くことは、「湘南ハム工場自社製○○」ウインナーやベーコン、焼豚など多岐にわたる加工肉が自社製であること。それも試食販売しているため売れに売れまくっている。
PBにこだわって販売している企業も多いが、もはやPBの意味を見失っている企業も多い。その中、“こだわりの味”にしっかりと焦点を当てて自社製ウインナーや自社製薫煙ベーコンなどを製造している。
こだわりは加工肉にとどまらない。お肉を使用した惣菜も数多く販売している。これが、精肉横で販売しているから、「肉にこだわったお店の惣菜」という位置づけで消費者もミート惣菜やお弁当を購入する。とても理にかなった展開である。「肉はまかせろ!」というだけあって、肉を使ったお弁当も買いたくなる心理である。
こだわりの加工肉は湘南ハム工場で作られた自社製のものが大陳されている。また、国産豚肉使用ロースハムスライスなども国産志向の強い消費者には心惹かれる一品であることは間違いない。
「ロピア自社製薫煙荒挽ウインナー235g298円」。100gあたり126円で、自社製でこだわっているが、高級ウインナーの位置づけでもない。加工者を見てみると株式会社ロピア多田工房となっており、自社工場で製造されていることがわかる。
ロピア自社製薫煙ベーコンは100gあたり118円(ユニット販売)。“この価格帯で本場ドイツ直伝「こだわりの味」をお届けします。”と書かれると一度焼いて食べてみたくなること間違いない。おおよそ500円~600円程度の売価帯になっているが、多くの消費者のかごにポンポンと入っていくのもうなずける。
精肉横にはお肉を使ったお弁当が販売されている。惣菜コーナーとはまた別の位置づけのコーナーである。お弁当で550円は最近の売場では高めの設定と思われるが、肉が売りのロピアの肉弁当を一度食べてみたくなるのである。単にお肉弁当というわけではなく、「やわらか牛すじ重」「三元豚の肉厚十勝風豚重」「牛タン重」と書かれると、食べたくなってしまう心理を突いている。
「国産鶏肉しっとり蒸し鶏 自社製蒸し鶏シーザーサラダ580円」。しっとりとした仕上がりで鶏ムネ肉とは思えない蒸し鶏である。蒸し鶏もたっぷり入っているが、シーザーサラダという部分でも消費者は目に留まる部分であると思われる。居酒屋に行くとサラダの中でも、味を知っていて注文しやすいシーザーサラダ。蒸し鶏の「棒棒鶏」ではない新しい打ち出し方である。
ここまでやると真似できない!
簡単にDSを安売りとひとくくりにするのも無理がある時代に入ってきた。DSといえば、「安かろう悪かろう」で「多少難ありなアイテム、アングレードで安いもの」を大量に販売するというイメージであるが、このスタイルを見るともはやその域ではないことがわかる。
この勢いは消費者にも伝わっており、遠くからでもロピアに肉を買いに行くという人も多い。実際店を見るとその勢いは文章で表現できないという事がわかる。
では、この店舗を実際に見て自店に持ち帰って、同じことが出来るかというと、はっきりと無理と断言できる。では仕入原価をとてつもなく安く仕入れているのだろうと、安易に考えるバイヤーもいるであろうが、各メーカーも商いをしているので、ロピアだけ100円も200円も安くして赤字で販売するわけもない。薄利でも大量、いやコンテナごと売るほど売らなければいけないということである。そう思うと、バイヤーとメーカー計画的な果てしない努力、現場社員の頑張りがロピアのこだわり、“肉はまかせろ!!”につながっていると言える。
環境が良くて売上が良かった、ではなく、肉にこだわって売っているから消費者も付いてきているのである。