ここでしか「味わえない」精肉売場作り

新店舗のテーマにもあるように、ここでしか味わう事のできないような商品が精肉には並んでいる。今回のヤオコーはその意気込みが売場にも表れていた。今までは、商品化がきれいで、盛り付けから売場作りまでこだわっていたヤオコーであるが、今回は商品自体にもさまざまな工夫が施されていた。

定番の直線的な精肉コーナーではなく、カクカクした客導線は、必然的に売場にマグネットが出来る。マグネットとなる場所には必ず、キーとなるブランド商品が陳列されていたことが印象的である。客導線に沿って、各コーナーブランド商品⇒定番アイテムの順に陳列されているのは基本に忠実であるが、トラディショナル売場に見えないのがヤオコーマジックである。

  1. 牛肉コーナーは松坂牛がお出迎え
    精肉コーナーのスタートは松坂牛で、金色に統一されたトレーに盛り付けられた商品は圧倒的に商品パワーの感じる売場となっている。続いて和牛が品揃えされているが、こちらも希少部位を中心に魅力的な商品が並ぶ。和牛はハラミやテールまで陳列され、競合店にない品揃えは消費者の購買意欲をそそるものとなっている。
  2. 牛肉コーナー前変形平台に並ぶセレクト焼肉
    平台では広告であった焼肉商材が集合陳列されていた。豪州牛のプライムランドビーフはヤオコーの他店舗でも販売されているブランドであるが、上カルビは和牛に匹敵するサシでそん色劣らない。

    牛タンは米国産を販売しており、100g498円(広告で表示価格より半額)。定番の牛タン焼肉から厚切りのマンゴーカットタン焼肉まで、牛タンの品揃えも豊富で単なる品揃えという位置づけの展開ではない。

    黒毛和牛ロース焼肉用こだわりセット 和牛の焼肉では、ロース焼肉用はステーキカットを2㎝幅に削ぎ切りした商品の他にも、ロースをさらに小割りして、リブカブリ、マキロース、ロース芯の焼肉セットも品揃えしている。どちらも100g980円(広告で表示価格の半額)でロース一部位から、見せ方の違う商品化を行うことで、商品バリエーションを増やすだけでなく、魅力的な売場作りを行っている。

  3. 肉惣菜おつまみコーナー
    平台の冷蔵ケース外にそのまま食べることが出来るおつまみ商品を販売している。ちょっとしたスペースも有効活用した展開。ローストチキンや唐揚げなどビールのおつまみにもなる商品を品揃えし、レジ前エンドのようなプラス一品を狙った展開である。
  4. 豚しゃぶしゃぶコーナーは国宝で差別化
    ハンガリー産マンガリッツァ豚しゃぶしゃぶ盛り合わせ(バラ、肩ロース)
    豚しゃぶしゃぶコーナーでは、競合店にはないハンガリーの国宝マンガリッツァ豚を使ったしゃぶしゃぶが並ぶ。松坂牛同様に完全なセレクトされたアイテムは金色トレーを使っている。商品化の花盛りをはじめ、3SKUは品ぞろえすることで、ターゲット層を広げている。価格も100g398円と魅力的な価格で提供されている。
  5. さつま黒豚+南の島豚でブランド戦略
    豚肉コーナーはさつま黒豚と南の島豚でブランド戦略を行っている。見た目はシステムトレーが並び、黒豚は色つきトレー、南の島豚、カナダ産豚は白色トレーでシンプルな売場作りとなっており、この売場に見慣れている消費者は、こちらの方が買いやすい売場なのかもしれない。

    宮崎県産南の島豚 豚バラ軟骨
    定番アイテムで日常買いできるアイテムを品ぞろえするだけでなく、豚軟骨(パイカ)の品揃えも行っている。南九州を中心によく食べられている部位であるが、馴染みの薄い関東圏で食べ方提案がないのは、苦戦するかもしれない。しかしながら、定番の品ぞろえの面白さも、楽しい売場となっている。

  6. 銘柄鶏でおなかいっぱい
    鶏肉コーナーに入る角の一等地は名古屋コーチン、甲州地どりや鴨など差別化鶏肉並ぶ。ガーラントの上に配置された商品は空間をうまく利用しており、大量販売できない売場ではあるが、高級感を生み出した売場となっている。

    定番鶏肉コーナーは銘柄鶏の匠鶏、香味どりが陳列されている。鶏肉はブランド化を行っているがややブランドが多い印象。たとえば、鶏もも肉を購入しようと考えたとき、甲州地どりもも肉100g498円、名古屋コーチンモモ肉100g474円、匠鶏もも肉100g160円、香味どりもも肉100g112円、国産若鶏もも肉100g94円で、100g498円から94円までバリエーションがある。選ぶ楽しさがあるが、選択肢が多いと価格で商品を決めてしまい、折角のブランド訴求が台無しになってしまうかもしれない。

  7. 他社には追随できない圧倒的なローストビーフの品揃え
    ローストビーフの品揃えは前代未聞のバリエーション。国産牛イチボを使ったローストビーフを主力に、黒毛和牛みすじローストビーフ、牛タンのロースト、合鴨ロースト、ローストポークまで販売している。

    黒毛和牛みすじローストビーフ
    希少部位でも名前が浸透しているみすじをローストビーフにすると、さらに付加価値がつく。50gで580円(100g1160円)で販売しているが、商品力が強いため魅力的に見える。

    リブロースローストビーフ
    特に見た目も目をひくのが、リブロースローストビーフで米国産を使用しているが、サシや脂肪もしっかりついているリブロース。ホテルやレストランで登場するローストビーフはコンタイプが多いので、やはり特別な日には購入したくなる商品である。

  8. 冷凍コーナーはターキーやフォアグラ、熟成牛で差別化
    冷凍コーナーは扉の付いた冷凍ケースを採用。見た目はさながら海外にいる様である。ターキーやホロホロドリのホール、フォアグラも冷凍で定番化されている。しかし、日本でホロホロドリの食べ方を知っている消費者が存在したとしても、なかなか売上に結び付けることは難しいかもしれない。しかし、量販店の一歩先を見据えたやる気の見える冷凍コーナーである。

    北海道産熟成国産牛ロース(冷凍)
    近年流行中の熟成牛も品揃えしている。オニ筋は除去され、板にスキンパック状態で100g980円で冷凍販売されている。商品劣化を考えるとチルドで販売するよりも、冷凍庫で販売する方が、安心感がある。通常のチルドのアイテムも多い中、冷凍の熟成国産牛がどれだけ需要があるかは不明であるが、冷凍コーナーが廃れた精肉では一つの革命となるかもしれない。

こだわりと感動の売場が受け入れられるか

開店当初という事もあり、店内は多くの客でにぎわっていた。広告の品としては焼肉用半額セールを行っていた。しかし、客のかごを覗くと思ったほど商品が入っていない。魅力的な商品、競合店との差別化商品を数多く品揃えしており、ヤオコーの「こだわり」が前面に打ち出された売場作りとなっていた。精肉コーナーでのミート惣菜、生食関連の品揃えの多さ、即食時代を物語る売場は完全に次世代を思わせる感動的なものであり、現時点「完璧」を思わせる売場となっている。今後、シニア層が増えることを鑑みると、少量で高品質なものを品揃えすることが量販店の使命となってくるわけであるが、圧倒的な差別化と日常買いする商品のバランスが今後の課題となりそうな一面もあった。