次世代型スーパーマーケットの挑戦

ライフの集大成の精肉売場が、日本一のスカイツリーの前にできた。
丁寧な店作りだけでなく、細かい商品作りとダイナミックな売り方にも注目したい。
精肉の特徴としては、「安心・安全」にこだわった「5等級の長崎和牛」や、話題の「熟成肉」を購入しやすい価格で取り扱うだけでなく、ライフオリジナルの「北海道産あまに豚」を使用した「ロースかつ、メンチカツ、煮豚、鶏唐揚げ」など店内で手作りした肉惣菜を提供する「肉屋さんの手づくりおかずコーナー」を充実させている。
こだわりアイテムのコーナーなど、面白さを随所にちりばめた精肉となっているのである。

こだわりのアイテムコーナーが充実

精肉は青果、鮮魚に続く配置で、鮮魚コーナーの客導線最後は「魚屋さんの手作りおかず」コーナーで、その続きに「肉屋さんの手作りおかず」コーナーが並び、専門店の惣菜コーナーのような配置となっている。

「肉屋さんお手作りおかず」コーナーと聞いて思い浮かべるのは「ローストビーフ」や「ねぎチャーシュー」であるが、それらは平台に専用の「ローストビーフコーナー」が設置され、一堂に陳列されている。
このコーナーには、店内のフライヤーで揚げた「純和赤鶏チキンカツ」や「あまに豚ロースカツ」「桜姫ローストレッグ」などブランド肉を使った手作りミート惣菜が陳列されている。
オープンキッチンになった作業場にはフライヤーなど完備されライブ感を演出している。

ライフで扱っている銘柄豚や銘柄鶏を使用した「肉屋さんの手作りおかず」コーナーは目の前で揚げたてのカツや唐揚げが揚げられているため、購買意欲をそそる売場となっている。

岩手県産純和赤鶏チキンかつ1枚248円(税抜)

オープンキッチンで揚げられたチキンカツは、一般的な惣菜で売られているカツと価格的にも乖離していないため、値ごろ感がある。さくさくの衣にジューシーさは生肉で揚げたてでないと味わえないため、単に冷凍チキンカツとは一線を画する

低多段売場ではステーキコーナーに続く「ステーキコーナー」では和牛だけでなく、交雑種の「長野県産信州蓼科牛(たてしなぎゅう)」も品揃えされている。
蓼科牛ロースステーキ用は「毎日安い値!価格」で100g499円。
国産黒毛和牛ロースステーキ用の定番価格100g980円に比べて半値で売られている為、見た目にも買い得感は出る価格設定である。

ステーキコーナーの対面に配置された平台にも牛肉が販売されており、こちらにはこだわりの銘柄牛肉が広がる。
長崎和牛の「壱岐牛」は5等級指定。
紙媒体のPOPだけでなくモニターでも訴求が行われている。
価格は「壱岐牛肩ロースうすぎり、肩うすぎり」ともに100g980円で、5等級の価格設定としてはお手頃な価格帯といえる。

熟成庫は店頭に完備していないが、流行りの「熟成肉」も取り扱いを行っている。
「熟成ビーフ」は豪州産で「肩ロースステーキが100g398円」。
「熟成香」の香りを楽しむため、素のまま焼き上げ、添付の塩で食べる提案をしている。
「熟成ポーク」は千葉県産で、ロース切身が100g298円。黒豚の価格より安いと思うと値ごろ感がある。

ブランド豚には平牧三元豚“匠”が品揃えされている。
「ロースうす切り」が100g398円。
真横には「熟成ポーク」が品揃えされており100g100円の差は大きく感じる。
平牧三元豚シリーズは生肉だけでなく加工肉の品揃えも行っている。
4本入りの「あらびきソーセージ」は1P500円、ロースハム450円、ベーコン450円で高い価格設定となっている。

精肉の主力である牛豚鶏に加えて第4の畜種である羊肉。
ラム肉コーナーは以前から競合他社よりもしっかりと作っていたが、パネルも設置しコーナー化。豪州産ラム骨付きロースステーキ100g298円をはじめ、ランプステーキは厚みがあり、見た目のボリューム感なども演出している。

内臓肉のコーナーでは「牛タン」を主力で展開しながら、単品の内臓アイテムの品揃えも充実。「牛レバー」や「シマチョウ、センマイ」だけでなく、焼肉の一品として「カシラ」や「ハツモト、ハチノス」なども品揃え。
「国産牛ホルモン9点盛りセット」は980円でホルモン好きには少量ずつ色々なアイテムが食べられる魅力的なアイテムとなっている。

米国産牛タン元厚切り焼肉用100g598円
牛タンコーナーで一際目立つ厚切り牛タン焼肉は2㎝厚でカットされたタン元。3枚入って795円(265円/枚)で決して安くない価格設定であるが、購買意欲をそそられる商品化である。トレーの蓋も厚みのあるタイプを使用している為、商品のボリューム感が強調されている。タン元以外の部位は定番の焼肉カットで、部位と場所に見合った商品化を行っている。

国内産黒毛和牛不揃い焼肉用切おとし100g598円
和牛の端材は、「角切り」にしてカレー用に商品化したり、「和牛ミンチ」にして販売する店舗も多いが、ライフでは不揃いの焼肉用として販売している。
今回購入した中には、リブマキ部分やバラ山などが多く入っており、トレーに入らなかったリブロースを一部分解して、商品化したのではないかと思われる。
281g入っており、端材感は全く感じない商品となっているのが面白い。端材で焼肉を作ると、何となく端っこを売るという罪悪感からか、少量パックにしがちであるが、勢いのある店舗ならではの商品化かもしれない。

定番の多段ケースは綺麗に縦割り陳列されている。ライフの売場は既存店も含め商品整理が行き届いているため売場で商品が選びやすい。
再下段に大量に商品が積まれているが、オープン直後のため仕方がないとしても、綺麗に商品が陳列されている。遠くから見るとわかるように、最上段はアイキャッチとなる丸皿などが陳列されており、多段を使いこなしていることがわかる。
よく観察すると、牛肉以外の量販する豚肉や鶏肉、挽肉などのほとんどのアイテムがセンター納品されていることがわかる。
こだわりを持ってインストアで加工する牛肉やミート惣菜関連以外のアイテムは、効率化を図るためにアウトパックで対応しているのである。

愛知県産名古屋コーチンせせり100g358円
今までも差別化するためにコーチンなどアッパーアイテムは蓋付きトレーや変形トレーに盛付けられていたが、鶏肉を折箱に入れて販売することで、圧倒的な他の鶏肉との差別化を確立している。また、商品化も丁寧に行われていることがよくわかる。
「せせり」や「ささみ」なども1本1本丁寧にまっすぐトレーに盛付けられている。

鶏肉と挽肉のコーナーの間に“らくらく”コーナーが設置されている。
焼くだけ、温めるだけの簡便商品が4尺縦割りで陳列されている。
レンジで対応商品、個食銀鍋をはじめ、味噌漬けや味付け商材も陳列されている。
味付けコーナーのような安い売場イメージではなく、商品の完成度も高い。

創味のたれを使用ガーリックステーキソース付カナダ産豚肉肩ロースカットステーキ100g158円
“らくらく焼くだけ!”コーナーの下段に展開されている「豚肩ロースミニステーキ」であるが、単にカットしただけでなく、ガーリックチップやソースも添付することでおいしそうで魅力的な商品化となっている。

精肉客導線最後に設けられた平台にはローストビーフなどのオードブル商材が並ぶ。
平台に綺麗にディスプレイされたローストビーフソースは、前を通ると必ず目に入る陳列である。平台一本を使って、かつて精肉のおつまみ商材として並んでいたものだけでなく、ミートローフやワイン煮などの家で調理するには少し手の込んだアイテムも並んでいるのが特徴である。

彩野菜のミートローフ(赤ワインソース)258円/P
赤ワインと一緒に食べてみたくなるオードブルの一つに「ミートローフ」がある。
家で作るには手間なメニューやオーブンがないと作れないメニューが陳列されていることで、購入してみたいという気にさせる。ただ、トレーはもうひと工夫が必要と感じる。見た目に安さを感じる部分と、蓋が内嵌合になっていないため、持ち帰り時にたれがこぼれて他の商品についてしまう。(味は絶品!)

4種のオードブルセット580円/P
ローストビーフやローストポーク、合鴨スモークなどがセットになったオードブルセットが580円で購入できるのであれば安い。
それぞれは少量ながらも、全体感ではボリューム感が出ている。パプリカや白髪ねぎ、玉ねぎスライスなどもきちんと入っている。

浅草ハムコーナー

浅草ハム熟成ベーコン398円/P

加工肉コーナーに設けられたアッパーシリーズに「浅草ハム」が並んでいる。
少量ではあるものの1パック298円~398円ラインで販売されている為、手が届くアッパー商品の位置づけとなっている。

Both戦略で作業性向上か

精肉売場の一部を紹介したが、たとえ豚鶏挽肉がセンター納品されたとしても、牛肉、ミート惣菜に関してかなりの労力を割いているのは言うまでもない。
しかしながら、しばらくこのようなアウトパックとインストア商品の両方を使ったBOTH戦略が主流となると思われる。
大量生産する量販アイテムは効率を求めアウトパックで仕入れ、手間のかかるもの、こだわりの商品はインストアで時間をかけて丁寧に商品化することで、パフォーマンスを最大限生かすことが出来る。
ただし、インストアで商品化するアイテムの量とアウトパックのバランス、人件費のかけ方のバランスをきちんと管理できないと、単に作業が多くて儲からない大変な売場となってしまう懸念材料も秘めている。
また、衛生管理にも十分気を付ける必要が出てくる。
特に惣菜に力を入れ、かつ熟成肉をあつかう場合は注意が必要である。
そのまま食べるものと、菌を付けたお肉が近くで商品化されるため、作業の中でも気を付ける必要が、必要以上に発生する。この部分でも、衛生管理が徹底した企業だからこそチャレンジできる内容と言える。
最先端の量販店もオペレーションとコスト、作業量のバランスを、実際に今後継続的に維持できるかどうかがポイントとなる。
この、綺麗な売場作り、商品化を維持してほしいと思う。