接客とライブ感に挑戦のIY

「MEAT CONCIERGE」コーナーの設置

ヨーカドーの精肉は野菜コーナーに続く位置に配置されている。これは三ノ輪店でも同様で食生活が洋食や肉食になったことに対応していると思われる。
その中でも牛肉からスタートするのではなく、客導線にしたがって「加工肉、挽肉、鶏肉、豚肉、牛肉」の順番に今までの売場作りとは逆ということに注目したい。
また、ハムソー売場の前(野菜売り場との境)には玉子コーナーが存在する。
店内のマグネットの使い方が非常に興味深いため、継続して客入りの推移は観察したい。
レイアウトはアリオ柏のものであるが、中央に中島で対面売場を設けている。
ここには「Meat Conciergeコーナー」を設置し、メニュー提案とともに試食販売を行っている。従業員が消費者に直接話しかけながら商品を売り込んでいる。
壁面多段ケースには豚、鶏、挽肉コーナーが存在するが、それぞれに銘柄コーナーをきっちりと設けて訴求している。
挽肉コーナー横にはハンバーグコーナーを設けている。

昔ながらの対面売場が新ライブ感を実現!

30年前にはよく見かけた精肉の対面売場。
従業員に話しかけないとお肉が買えないだけでなく、量目も伝えなければならないため、最近の主婦からは懸念されてきた。
その精肉の対面売場が、アリオの精肉コーナーに設置された。

壁面ケースで、セルフトレー販売を行いながら、センターで対面売場での「量り売り」も実施している。
「対面売場」は常に従業員が対応する必要があり、経費節約志向の最近の流れから下火であったが、アリオでは人員を確保して対応。
消費者も鮮度のいいお肉を求めて、必要量目を注文していた。牛肉の品揃えとしては、「佐賀牛、いわて遠野牛、千葉県産交雑種美笑牛」を中心に販売している。

「Meat Conciergeコーナー」は対面売場同様にセンターの中島に配置されている。
積極的な試食販売でお肉とグロサリーの関連販売など実現し相乗効果を発揮している。
試食に関しても、料理説明をマイクでしながら、お客との対話で進行させている。
ただ焼くだけの試食ではないため、試食も行列をなすほどの仕上がりである。

対面売場で常に人が集まっている場所が、「パン粉付の簡便商品」売場。
特に「お肉屋さんのパン粉付手作りメンチカツ」100円(税抜)は子供が指名買いするほどの認知度。荒い生パン粉を使っている為、サクサクとした調理仕上がりとなる。
メンチカツ以外に「豚ロースかつ、ヒレカツ、ハムカツ」なども100円~120円で購入できる。大きさもiPhone6と比較できる大きさで満足度の高いアイテムとなっている。
総菜コーナーのばら売りにメンチカツやハムカツが1個149円(税抜)で販売されているが、精肉の衣付の方が大きく魅力的な商品となっている。

わかりやすいブランド戦略が鍵

今までの売場作りは広告や特売に特化され、商品ストーリーが裏に隠されたような商品がなかった。
しかし、売場作りというよりも商品にストーリーのあるアイテムが陳列されている。
和牛は「いわて遠野牛 熟成黒毛和牛」は顔の見える和牛という打ち出しで訴求されている。
また、地元千葉県産交雑種「美笑牛」もブランド訴求されており、従業員一丸となって売り込んでいる。

イトーヨーカドーの「顔が見えるお肉。」熟成黒毛和牛いわて遠野牛は対面売場だけでなく、平台でもコーナー化されて販売している。
14日間以上低温で熟成した和牛の説明POPとともに、ステーキや焼肉が展開されている。
価格設定は、トレー商品の「肩ロースステーキは100g722円(税抜)」と比較的安価な価格設定。しかし、モモ(ランプ)ステーキ100g780円(税抜)と高い設定になっている。
また、対面コーナーではもも肉は100g880円(税抜)、ロースうす切も880円で販売されており、よく見ていると価格設定が複雑である。

熟成黒毛和牛ふぞろいの焼肉用100g630円(税抜)。
比較的綺麗に商品化されているが、同じ部位の他商品よりも100g100円以上安い設定である。
他にも「ふぞろいのステーキ用(サイコロステーキ)」などもあり、ネーミングから安価なイメージを与える。

牛肉コーナーでは千葉県産アイテムとして「美笑牛」がある。
ハーブ入り飼料で健康的にじっくり育てたブランドで、地元の食材を積極的に売り込むことで消費者からも親近感がわく。
さっぱりとした味わいでMeat Conciergeコーナーでも美笑牛を使ったメニュー提案を頻繁に行っている。

地元我孫子地域で唯一の養豚場で肥育されている「柏幻霜(げんそう)ポーク」を販売。
対面売場だけでなく多段ケースでも商品展開がされておりブランド訴求を強化している。
価格の面で難あり。地元産という地産地消価値だけで豚小間切でも黒豚並みの100g397円(税込)はかなり高い印象を持つ。
「柏幻霜ポークロース薄切りは100g645円(税込))で和牛並みの強気の価格設定で、この価格に見合った価値をもっと売場で訴求する必要がある。

ホルモンは「下町ホルモン」戦略

ホルモンは定番アイテムでもあるが、アイテムが多くても売場に埋もれてしまう商品群である。三ノ輪店では下町ロケットになぞらえた「下町ホルモン」ののれんの下で、ホルモン数種類を展開している。
「下町ホルモン」のネーミングでアイキャッチとなり、売場に埋もれてしまいがちなホルモンをうまく販売している。

「下町ホルモンコーナー」で販売している焼肉用内臓肉は、アイキャッチでインパクトがあるものの、1パック298円~398円ラインで販売されておりやや割高感が印象として残る。
蓋付きクリアケースで販売されており、鮮度感は保たれている。

アリオ柏店の中島の対面売場裏にはバーベキューコーナーが低多段ケースで展開されている。
焼肉用が色んな種類陳列されているわけではなく、アイテムを絞って単品大量販売している為、見やすい売場となっている。
遠目にも大きなパネルでバーベキュー売場であることがわかりやすいのに加えて、遠くからでもアイテムが多くなく、見てみたい雰囲気を出していることが面白い。
関連販売でタレ関連も販売されているが、低多段の上部に無造作にタレが陳列されていないため、すっきりとして清潔感がある売場となっている。

バーベキューコーナーで最も目を惹くのが「焼肉・BBQ用盛り合わせ」で、牛肉と豚肉の焼肉セットとなっている。
1500円、780円(税抜)などSKUを増やしていることと、蓋付きトレーの蓋の高さがボリューム感をアップさせていることで、迫力のある売場作りとなっている。

「牛バラロングカルビ」は米国産のフィンガーミートを使用している。
100g278円(税込)で1本あたり約600円前後になる。
隠し包丁が入っており粘度の高い専用たれで味付けされている。
夏場のBBQ需要に向けた布石としてもインパクトがあるが、トレーが長く購入後持って帰るのには少々難あり。

輸入牛肉もチープに売らない売場作り

輸入牛肉だからと言って手を抜かない商品化と売場作りは、売場で単品大量販売しながらも感じる部分がある。
サシの入った「ジャンボステーキ」は「アンガスビーフ」で付加価値を提案。
ブロック肉はブランドがないながらも、「MLAログシール」と「簡単ローストビーフ」提案で商品力を出している。

輸入牛肉では「アンガスビーフ」を打出した肩ロースステーキが販売されている。単なるアメリカ産牛肉ではないことの一歩である。
同じアメリカ産でも、アンガス以外のものもあり、米国産牛バラ網焼きカルビ用は100g360円(税込)。
蓋付きのトレーで商品化されているため、輸入牛でも高級感があるように見える。

豪州産はトップサイドを使用し簡単手作りローストビーフ用ブロックで訴求。
100g213円(税込)と輸入牛モモ肉では高めに設定し利益確保アイテムとなっている。

定番売場に調査時は黒豚の品揃えはなかったが、挽肉に黒豚の品揃えが存在する。
その理由は、挽肉はプロセスセンターから仕入れている為である。
加工者はニチレイフレッシュプロセス川崎センターで、価格設定は100g224円(税込)。

三ノ輪店の買ってみたくなる定番アイテム

大型店ではなく完全な地域密着型店舗である三ノ輪店では、今迄の定番の売場作りを行っておらず、商品一つ一つに力を入れて販売している。
何故この商品を売りたいのかが明確に売場で打ち出されており、一度手に取って買ってみたくなる売場作りを行っている。
コト販促をうまく利用した売場作りと魅力的な商品が売り上げを支えている。

江戸甘味噌使用国産豚ロース味噌漬け3枚582円(税込)。
三ノ輪店の精肉目玉商品として4尺縦陳列で味付けコーナーが設置されている。
その中で、豚味噌漬けは江戸甘味噌を使用しており東京産の味噌をパネルやPOPでコト販売し売り込んでいる。
今まで店内加工の味噌漬けは輸入豚などで、1枚100円ラインで販売されてきたが、店内加工でも1枚約200円ラインでの強気の販売を行っている。

セブンプレミアム発売9周年企画としてセブンゴールドのハンバーグにスペースをとって販売していた。1パック249円(税抜)。
美味しさのポイントでは

  1. 汁がジュワっとあふれるジューシーな美味しさ
  2. フォンドボーを使ったデミグラスソース

と美味しさの秘密を再認識させる訴求を行っている。
「テレビCM放映中!ここまでやるからプレミアム」の訴求で、セブンプレミアム サラダチキンは1パック198円(税抜)で販売。
平台を1本使いサラダドレッシングとともに売り込んでいる。調査時にも、サラダチキンを使ったレシピがないのかと問い合わせを消費者がしているのを目にした。

わかりやすい売場作りとストーリーのある商品

今までの量販店と一見変わらない売場作りにみえるが、実はかなり買いやすい売場作りに変更されている。
無駄な品揃え程度のアイテムが売場から消えていることや、基本的にはすべての商品にフェースをとって見やすい売場作りとなっている。
平台や対面ケースはもちろんのこと、定番の多段ケースに関してもかなりシンプルでスマートになった印象がある。ただ、価格設定の面でやや割高感があるのは否めない。
アリオ柏店では対面ケースを利用してブランド商品の展開、その商品を使用したMeat Conciergeコーナーでの試食販売と関連販売はかなり相乗効果を生んでいる。
b試食は単に焼くだけではなく、ハヤシライスなどきちんとご飯も一緒に提供されるため、夕食メニューを再現している。
従業員も「美笑牛」への愛着があり、試食販売時の商品案内に、「このと~っても可愛らしい名前の牛肉はさっぱりとした味で・・・」といった具合に、愛着があるからこそ出る自然な言葉が消費者の心理を掴んでいる。
豚肉でも地元千葉県ブランドをしっかりと訴求しており、先にも登場した「幻霜ポーク」だけでなく、千葉県産の房総ポークなども品揃えしている。
しかし、この値差は約100g200円程度あり房総ポークがかなり安価に見える。
しっかりとしたブランドであっても同じ千葉県の豚肉を2種類おくとやはり安い方を購入してしまうのではないだろうか。
特に幻霜ポークの価格設定は牛肉に匹敵する売価帯の為、単純に霜降りで地元産というだけではなかなか売るのに苦労すると思われる。
牛肉でも同様に、いわて遠野牛があるその上にさらに松坂牛、佐賀牛の品揃えがある。
価格帯は「松坂牛ヒレ肉100g3000円(税抜)佐賀牛ヒレ肉100g2500円(税抜)いわて遠野牛ヒレ肉100g2000円(税抜)」、「交雑の美笑牛ヒレ肉は100g880円(税抜)」と交雑でもSMの和牛並みの価格で販売していることを思うと、コト販売やストーリーのあるアイテムを販売するには、それだけのコストが発生すると言わざるを得ない。
売場作りに関しては、ある程度人件費をかけて展開しているため、SMよりも丁寧にワンランク上な印象があるが、その分価格もワンランク上である。
畜肉全体的に相場が上昇傾向なため、特に牛肉に関しては安売りは禁物であるが、その分ブランドのアイテムをきっちりと絞ってロスなく展開できる売場作りも今後課題となるのではないだろうか。