9月から10月に売込むこの商品
【祝日とイベントからみる精肉】
2024年9月10月の祝日は、9月16日(月)敬老の日、9月22日(日)秋分の日 23日(月)振替休日、10月14日(月)スポーツの日の3回。土曜日を含む3連休が9月は2回、10月は1回ある。
学校は夏休みが終わり、2学期が始まる。会社は秋の定期異動のタイミングとなり、単身赴任や引っ越しで新生活がスタートする世帯もある。
9月の外気温は、1年で最も高い8月よりも約3℃下がり、東京の平均最高気温では2023年31.2℃(8月34.3℃)、10月23.7℃となる。まだまだ9月は最高気温が30℃を超える。
しかしながら、アウトドアではキャンパーは最高気温が下がってくる9月10月がキャンプに適した季節となる。特に、3連休となるタイミングは売り逃しのないように注意をする。
9月は徐々にタレを「冷しゃぶのたれ」から「しゃぶしゃぶのたれ」に切り替えを行なうタイミング。秋冬メニューの顔出しの時期でもあるが、外気温は高いため、一度に切り替えるのではなく、在庫と共に自然切り替えとするのが、サステナブルの観点からも望ましい。
【9月に使える焼きメニュー提案】
40度を超える酷暑を記録した今年の夏もようやく終わりを迎える。夏の暑さを引きずる9月であるが、キャンプやアウトドア、バーベキューには最適な気候を迎える時期となる。アウトドアでも楽しめる、購入しやすい価格帯の商品を提案して、売上につなげるとよい。
豚ロースのかぶりがついているリブ側を、リブロースステーキ用として提案する。ロース1本から10㎝程度しか取れないため、商品化の量には限りがあるが、希少性を謡いロースよりも高く販売する。
特に、アウトドア用を想定した週末の提案であれば、2㎝厚の厚切りステーキ提案でボリューム感のある商品化を行う。商品化でポイントとなるのは、脂肪のトリミングである。バラ先側の背脂肪がやや厚めに見えてしまうため、5mmアンダーのトリミングを行う。バラ山側も汚く見えないように整形することも心がける。
9月6日は「黒の日」であることから、黒豚を使用したリブロースステーキ提案を行い、付加価値提案をおこなうとよい。
鶏ムネ肉の一部で手羽元との間に位置する部位が鶏肩肉。
ムネ肉の身の分厚い側の端に付いている部分で、肩肉や手羽とろなど企業によって色々と呼ばれているが、部位表示としては「ムネ肉」としておくと良い部位である。
精肉担当者でも勉強をしていないと場所が正確に言えない小肉である。国産でも単品部位として仕入れることが出来るが、通常ムネ正肉を仕入れると肩肉部分が付いているため、余裕がある店舗は分割して単価をムネ肉よりも上げて販売すると良い。商品化としては、タレに絡ませて盛り付けるだけであるが、肩肉はほぼ同じ大きさをしているので、少し丸めて陳列すると綺麗に盛り付けられる。
用途としては、食感を生かした焼き商材としてタレ漬け、焼肉用、から揚げ用など、鶏ムネ肉の商品化と同じである。冬場に向けては、数量限定で鍋用切り身としても提案可能で、歩留まりを落とすこと無く、単価を上げる提案が出来る部位である。
【10月に使える炊きメニュー提案】
春夏で焼き商材として拡販した豚バラ野菜巻きを、秋冬でも継続して販売する。フライパンメニューとしても、お弁当メニューとしても引き続き提案するが、秋冬では鍋用メニューとしても活用出来る。
手間の掛かる商品ではあるものの、高単価高値入で相場高の現在の環境ではしっかりと売込んでおきたい商品である。パック単価が500円を超えると途端に売れなくなってしまうため、398円~498円ラインまでにする。
商品化では、しっかりと身の締まった鮮度の良い白ネギに豚バラを巻き、食べやすい大きさに垂直と斜め45度にカットしていくと、白ネギの断面が綺麗に見えるようになる。付加価値を付ける商品に関しては、見た目も購買力につながるため、綺麗な商品化を目指す。
豚バラ軟骨「パイカ」を秋冬商品として拡販する。
南九州では年中通して定番商品として販売されているが、他の地域では目にすることが少ない希少性の高い部位である。
沖縄では軟骨ソーキそばに乗っているお肉として印象深い。煮込み料理に使われる商材であるが、軟骨をとろとろにするために圧力鍋で煮込むことで調理時間が短縮できる。
豚バラ軟骨や豚スペアリブは、中国人の文化の中にも根付いている商品であるため、中華系の方が多く住む地域で拡販すると売れる。
排骨(パイグゥ)というのが、中国語での骨付きバラ肉でパイカの語源と考えられる。POPでは、排骨は部位表示にあたらないので、コトPOPに記載するとよい。豆鼓蒸排骨というパイカを蒸した料理もあり、好んで食べる料理の一つである。
秋冬メニューの準備を着々と実施
9月10月の外気温はまだまだ高く、秋冬のイメージが付きにくいが、夜間の最低気温が夏に比べると大きく下がる。夜の気温が下がると、少しずつ温かいものが恋しくなり、気持ちの上でも徐々に夏から秋へと切り替わっていく。
すき焼きをするにはまだ早い季節と思われがちであるが、切り落し牛肉から徐々に秋冬の提案を行なっていくと、冬場の牛肉需要の喚起にもなる。
9月10月はすき焼きを焼肉の延長で行なう「焼きすき」提案、さっと炙り焼くタイプの「焼きしゃぶ」スタイルで、メニューの切り替え提案を仕掛けていくと良い。焼きすきや焼きしゃぶでは、お肉が崩れにくい、ブリスケットを使用したスライスで商品化する。
関連販売では、すき焼きの割り下やしゃぶしゃぶのたれを陳列することで、メニューを想起させる売場作りを行なうことが出来る。食シーンを想定した売場作りは、購買意欲をかき立てるため、特に季節の変わり目などはしっかりと行なっておく。
この時期は、日中は外気温も比較的高く、夜間は涼しくなる季節で、夕食に何を食べるか迷う時期である。そのため、販売側から「これがオススメ!」という訴求がポイントとなる。ウェザープロモーションにも力を入れるタイミングで、あまりにも暑い日にすき焼きやしゃぶしゃぶは行なわないため、焼きメニューに変更することや、環境に合わせた提案をフレキシブルに行なうと良い。
さらに、「バイヤーオススメ」や「精肉担当者おすすめのタレ」など、プロがオススメするタレや食べ方なども、購買の動機につながるため、コト販促も実施していく。
5年後に向けて今やらなければならない事
2023年12月伊藤ハム、日本ハム、プリマハム、丸大食品の大手加工品メーカーがタッグを組んで、トラックドライバー不足の「物流2024年問題」に取り組むと業界ライバル会社が、垣根を越えた一歩を歩み始めたことは衝撃であったことと思う。
それくらい業界が深刻な状況に陥っているということである。
しかし、2024年に入り、量販店にいると配送で大きな問題は発生していないように見えているかもしれない。
しかし、2024年問題の本当の問題は年度末にやってくることを想定しておかなくてはならない。2024年になりトラックドライバーが激増したかというと、そういうわけではない。
各社の物流に対する企業努力も、荷物が届けられている要因であるが、事実上、今までのように、ドライバーの残業は発生している。
年間の総労働時間、残業時間はトラックドライバー含め、私たちも同様に上限が定められている。
つまり、年間労働時間をオーバーするタイミングには一斉にトラックドライバーが通常運行含めて出来なくなる可能性が出ているということ他ならない。
大げさに言うと、年末にトラックドライバーが労働時間オーバーで、年末に必要な和牛セットどころか、通常のアウトパック商品も持ってきてくれない状況が目の前に来ているのである。そのため、今まで競合となっていたライバルメーカーがタッグを組む、むしろ組まざるを得なくなったということである。
物流問題は日本全国で起こっているため、今年度に入り、トラックGメンと呼ばれる、違法労働がないかどうか取り締まる人も動き始めている。今まで知らず知らず行なわれていた超過労働を見て見ぬ振りも出来ない状況となっている。
さらに、物流だけでなく、食肉センターの老朽化やCO2削減問題などにも課題が直面しており、2024年7月にはJA全農と日本ハムが事業提携することも発表している。
事業連携することで、持続可能な畜産業を追求するとしている。
例えば、日本ハムのロースハムをJA全農ミートフーズ・高崎ハムで委託製造し、日本ハムの配送網を利用するなど、今までの垣根を大きく越えた展開が進められている。
さらに、大きな問題が5年後にやってくる。
現在の日本は、2030年問題というさらなる課題に直面しているのである。
2024年問題がさらに深刻化するのは、労働力不足、トラックの積載効率の低迷などあったが、ECの普及による宅配需要の急速な発達、小ロット多頻度の配送の増加など、新型コロナによってより細分化された配送がこの問題を深刻化させている。
新型コロナ要因は、この状況を早めただけで、遅かれ早かれ問題は目の前にある事はかわらない。すでに物流は供給が追いついていない上、2030年には、日本全国の35%近い荷物が運べない(秋田では46%、高知では42%)とも言われている。あと5年もすれば、運送効率の悪い地域は物流網が途絶えてしまう可能性があるという危機的状況である。
納品メーカーに値引き交渉をして、安くないと買わないという時代錯誤のビジネスをしている場合ではない。
5年後には、お金を出しても商品を持ってきてくれないかもしれない危機感を、今感じていない量販店は、淘汰されると言わざるを得ない状況なのである。
競争メーカーが手を組んでいるのと同様に、今の段階からメーカーと手を組んで商品開発を行ない、安定量を配送出来る態勢を整えることが必要である。
定期定量で物量が確保出来れば、必然的に物流網は残っていく。そのため、ボランタリーチェーンや共同PB開発などは今後強くなると思われる。
メーカーのNB商品は、その分立場が弱くなる可能性を秘めている。
量販店側も持ちつ持たれつの良好な関係を構築するために、安く仕上げるPB商品だけをお願いして、NB商品を販売しないなどという交渉は、メーカーの開発力も弱める結果となってしまい、持続可能なビジネスモデルとは言いがたい。
消費者にとっても、名の知れたNB商品を購入する楽しさが必要であるため、量販店や物流、メーカー一体となって商品開発にも取り組んでもらいたい。
今が未来につながる分岐点
2024年は円安による為替の影響、輸入肉の相場高、物流問題、人員不足、温暖化など、一度に外部環境の変化を取り入れざるを得なくなった。そして、来年以降にも、この影響がさらに悪化する兆しがある。口だけサステナブルを唱えても、持続可能な生活は送れない。商売が成り立たないと、食生活も安定しないし、給料も出ない。今、過去の栄光やしがらみ、プライドを断ち切って、新しい未来に向けた取り組みを、早急にしなくてはならない分岐点に立っているのである。新たな取り組みは、今、私たち全員が真剣に考えなくてはならない課題である。この分岐点を間違った道に進むと、本当に商品が届かない地域ができてしまうと言うことである。目先の利益よりも、持続可能な社会生活を送れるよう、一丸となって取り組んでいこう。
- 投稿タグ
- 精肉