1月に売込むこの商品
年始のハレの日メニューだけでなく、1月のホットメニューの展開では、鍋やしゃぶしゃぶを打ち出していく。
年始は、普段よりもグレードの高い商品の品揃えを強化。
部位訴求や競合でも販売していない商品を品揃えすることで差別化を図っていく。
年始商戦が終わると、成人の日が2024年1月8日(月)、大学入学共通テスト(旧センター試験)が同1月13日(土)14日(日)で開催されるため、それぞれのイベントに合わせた商品ラインナップを展開し、売上確保を狙う。
1月後半は大きなイベントが無いため、定番商品のよりどりセールや均一セールを行ない、買い上げ点数を上げ売上を取っていくと良い。
【牛しゃぶ】
黒毛和牛内もも、外ももをしゃぶしゃぶで拡販していく。
切り落し商材で安く販売している店舗も多いが、商品化を少し変えるだけで高く売る事が出来る。利益も改善し儲け頭となることが出来る。
商品化は丸皿に並べていくだけでも十分綺麗に見える。
作業性が悪くオペレーションが回らないというチーフもいるが、片側を折り曲げて並べる程度のスライスであれば、慣れれば連続取り出来るため、切り落しとほぼ同じスピードで商品化をすることが出来る。
商品化のポイントは、あらかじめしゃぶしゃぶ1枚の柵取りをしておくことと、内ももの場合はコモモ、カブリを同時に切り落しなどの商品化を行なう想定で作業をすることである。
外ももは、シキンボをはずし、ナカニクもシキンボと同じサイズ感になるように柵取りする。
外ももは柵取りすると最後にスライスできない部分が出てきてしまうため、カレー用や煮込み用の商品化を一緒に行なうと良い。
牛しゃぶしゃぶのとともに売り込みたいのが、外食を中心に人気となってきている牛タンしゃぶしゃぶ。売り場に牛タンが大きな断面でしゃぶしゃぶ用として並んでいるとインパクトがある。
食べ方は、しゃぶしゃぶと同様であるが、白ネギ斜め切りを薄切りにしたものと一緒に過熱して食べると美味しい。ポン酢でもよいが、柚子胡椒など少し塩味をプラスさせるとさらにおいしい。
また、ごま油に塩を加えたたれや、そこに刻みネギを入れたネギ塩ごま油などもおいしい。食べ方提案も売り場で行うことで、さらなる売り上げアップを狙う。
商品化は、牛タン焼肉用のスライスとは90度スライス面を変え、タンの側面からスライス。面の大きな牛タンスライスを商品化してしゃぶしゃぶ展開する。
チルドタンは、タンの締まり具合でスライスしにくいものもあるため、冷凍牛タンを半解凍してスライスするとよい。
【豚しゃぶ】
冬場の売り場の核となるのが、豚しゃぶである。
豚ロース、肩ロース、バラを中心とした商品。秋から本格化したホットメニューも年明けには、マンネリしたメニューとなってしまうため、グレードや部位、食べ方を変えることで、商品のマンネリから脱却する。
年始商戦、成人の日などハレの日に展開したいしゃぶしゃぶ盛り合わせ。
ハレの日ならではの、アッパーグレード商品として、黒豚や赤豚、企業オリジナルの銘柄豚を使用して、ロース、バラの盛り合わせを製造する。
商品化は、花盛りなど見た目の良い商品化とし、ほかの商品との差別化を図る。しゃぶしゃぶの折った部分の角を立たせたり、立体的に見せる商品化で高級感を出していく。
桶トレーを使用すると、そのまま食卓に出すこともできるため、通常の発砲トレーではない見栄えの良いトレーを使用することもポイントとなる。
売価設定は定額にする。可能であれば980円1980円2980円など、3価格帯程度は品ぞろえして、買いやすい環境作りを行うとよい。
近年、パック売価を気にすることなく、商品化されている商品も多くなっているようである。1010円よりも980円のほうが、消費者は購入しやすい。
30円にはそれくらいの違いがある。ちょっとした意識を変えることで、売り上げも大きく変わるので、パック売価にも注目して商品化してもらいたい。
豚とろしゃぶしゃぶ提案で、見た目も売り場もインパクト大。焼肉以外の食べ方提案を行うことで、終売の安売りするコトなく販売することが出来る。
豚とろは、輸入豚は身が薄いものも多く、2枚重ねや1枚を半分に折った状態でスライスすると盤面が大きくなって見た目もよくなる。
国産は厚みがあるため、折り曲げずに1枚で半凍結させ商品化する。焼肉と異なり、スライサーで薄切りにすると、そぎ切りできないため脂肪の厚みが分厚くならないように注意が必要となる。
しゃぶしゃぶにすると、思っているよりも重量が乗らないため、多めにきれいに盛り付けて商品化するとよい。
食べ方提案としては、ポン酢などもありだが、レモンと一緒に絞った柑橘系強めのたれで食べるとさっぱりしておいしい。
ネギ塩だれ、柚子胡椒、ゴマダレなども合わせやすいので、一緒に関連販売するとよい。
定番の商材から付加価値をつけた商品まで幅広く提案することで、主力の定番商品の売上がグッと伸びる。
近年、POSの売上分析だけにとらわれてしまっているため、売れる商品だけを品揃えした売場作りをすることが多い。しかし、商品を選ぶときには、松竹梅の選択肢があることが、主力商品の購買に大きく寄与する。
少し高めの商品は、大量には売れないものの、消費者の1割は少なくても高い商品を購入する層がいる。アッパー商品の品揃えをしないという選択肢は、チャンスロスをしているという事である。
売れ筋だけの展開で、売場がマンネリしていないか、再度商品群を確認してもらいたい。
即食贅沢「肉惣菜」転換
ミート惣菜で展開している商品も、ローストビーフなどの「おつまみ系、肉寿司、フライ、煮物、焼き物、サラダ」など、惣菜部門に負けない肉系の品揃えが進んできている。
年末年始から即食メニューは、ややグレードの高い商品を品揃えすることがポイントとなる。
精肉部門のミート惣菜は、惣菜部門では扱うことが難しい、精肉部門で使用しているブランド肉や和牛、品質やグレードの異なるお肉を使用するなど、特徴付けることが出来る。
そのため、その魅力を客数が増える年末年始に伝えることで、定番でもリピートしてもらえるようF2転換を意識した商品作りを進めていくと良い。
年末年始商戦では、すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉などの皆で食べることが出来るメニューを楽しむ機会が多くなる。
おもてなしの準備をする間の時間やたまにしか話すことが出来ない親族、友達との会話を楽しむために、メイン以外の食はタイパを意識して、ややアッパーなメニューをミート惣菜で用意すると良い。
アペタイザーとして、ローストビーフスライスやローストビーフ角切りとチーズを爪楊枝に刺したピンチョスなども、おしゃれでかつ豪華に見える商品の一つ。ローストビーフ寿司は、最近では外食でも締めの炭水化物で提供するなど一般的になってきている。
美味しく召し上がっていただくために、お肉の鮮度管理には気を付けて提供することは必須である。
外食では、法律を無視した未加熱の牛肉なども提供されていることも、見受けられるが、今一度法律に則ったオペレーションで、食中毒など起こさないように、十分注意を払ってもらいたい。
2024年問題は精肉にも影響する
精肉部門の中にいると、あまり実感が湧かないかもしれないが、実はお店に届くお肉の物流便が危機的状況にある。
それが2024年問題である。簡単に説明すると、平成30年6月改正の「働き方改革関連法」に基づき、自動車の運転業務の時間外労働について令和6年4月より、年960時間(休日労働含まず)の上限規制が適用される(国土交通省:自動車運送業における時間外労働規制の見直し)。
併せて、厚生労働省がトラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」(貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の対象)により、拘束時間等が強化され、単純計算で、現状の労働条件から何も対応を行なわなかった場合、輸送能力が2024年に約14%(物流全体で4億トン相当)不足する可能性があるとされている(国土交通省「物流の2024年問題について」より)。毎日配送されてくるトラックの便の14%が、届かなくなる可能性があるということである。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001620626.pdf
もちろん、物流会社も真剣にこの部分を打開すべく、今まで競合だった会社と手を組みながら、解決しようとしている。物流の出口である店舗でも、出来ることを行なわなければ、日本の流通基盤自体が崩れてしまう自体にもなりかねない状況が、すぐそこまでやってきているのである。
では、精肉で出来る2024年問題の対策は何かを考える。
数字だけを見ると物量を減らすことが最大のポイントとなるが、お店の売上を下げないためには、単純に物量を減らすだけでは厳しいため、物量を減らすのであれば単価を上げる必要が出てくる。逆に、売上確保をするためだけに行なう、無理な特売を少し控えることも、持続可能な物流システムを維持することに貢献出来そうである。
また、同じトラックを走らせるにも、積載効率を考えると、アウトパック商品(オントレー商品)を運ぶよりも、原料を運ぶ方が同じ体積でも積載効率は良くなる。社外のアウトパックセンターからの配送は距離も遠く、まさに2024年問題の中心となる課題である。
ただし、自社パックセンター(社外でも近隣エリアは対象)で集中購買が行なわれ、店舗へ効率的に配送されている場合は、パックセンターからの店舗への距離も比較的近くなるため、配送便を減らす事で改善は出来そうである。
曜日周りでは、平日の物量が少ない日のトラック積載量を増やすことで、効率的な配送を行なうなども一つの方法である。平日に冷凍商品アイテムを多く納品し、トラックの配送回数を減らすのも取り組みの一つとなる。
以上の観点から、精肉では以下の取り組みによって、2024年問題に着手していきたい。
① 商品のブランド化による単価アップ
② 無理な安売り削減(特に鶏肉の安売りは数量が大きく動く)
③ 店内加工(近隣パックセンター)の活用
④ 平日の冷凍便の活用(冷凍在庫日数を伸ばす)
⑤ 1日の配送回数の削減(1日2回配送を1回に削減など)
在庫日数を長くすると、在庫管理にかかるコストは増え、資金を回収できるまでの期間も長くなるため、一般的に良くないとされる。しかし、冷凍商材で同じ賞味期限の商品が土曜日に配送されるものを、水曜日配送に切り替える程度では、全体のボリュームからすると大きくないと考えられる。
こういった取り組みを、全国の量販店精肉で行なうだけでも、大きなインパクトにつながるため、精肉部門を担っているすべての人が、少しだけでも意識を変えてもらいたいと思う。
2024年持続可能な精肉を目指した環境構築へ
新型コロナの声が薄れたのもつかの間、ロシアのウクライナ侵攻だけでなく、パレスチナ・ガザ地区のイスラエルとハマスの戦闘など、世界各地で紛争が激化している。
イスラエルは、ウクライナの穀物生産が世界に影響を及ぼしたように、畜産物の生産には直接的に大きく影響していないが、植物性タンパクなど次世代スタートアップ企業が多く存在している国の一つである。
実は日本よりも遙か彼方先を見た、世界でも稀に見るほどの革新的な事をしている国なのである。この紛争による影響は先々大きなデメリットとなる事は間違いない。持続可能な食を提供していくためには、動物性たんぱくだけでなく、植物由来のたんぱく質、たんぱく質そのものを3Dで作っていく技術も、見据えていくことも、頭の片隅に置いておいてもらいたい。
目先の話に戻すと、日本において喫緊の課題は「物流」である。量販店精肉で販売するお肉が14%届かなくなる可能性がある。
商品配送に関しては、安定的に食を提供するインフラの一部を担っている量販店としても、物流や配送会社、メーカー頼りではなく、商品部、店舗においても発注のタイミングや在庫を意識し、積極的に物流がスムーズに流れる、効率的な発注に取り組んでもらいたい。
持続可能な社会生活を実現するための、第一段階を精肉から動かしていきたいと思う。