5月から6月に売込むこの商品
2024年5月6月の祝日はゴールデンウィーク期間のみで、6月には祝日設定はない。
ゴールデンウィーク期間では、4月27日(土)~29日(月)3連休、5月3日(金)~5月6日(月)4連休が一般的な休みの設定となる。
4月30日(火)~5月2日(金)までは平日であるが休みとなった場合は、最大10連休という大型連休となる。大型連休取得の場合は、海外旅行などの遠出する可能性が高くなるが、一般的な企業の場合は3連休と4連休があるパターンのため、安近短の近場でアウトドアに行ったりすることが想定される。
2023年アウトドア関連を販売する企業の売上が激減したため、キャンプ需要がなくなったかのように報道されているが、キャンプギアは毎年買い替えるようなものではないため、消費者が一通り買いそろえただけと考られる。
事実、キャンプ場は昨年も予約ができない状況であり、キャンプ需要は単純に購入段階から実行段階に移っただけであると捉えるのが自然である。
精肉では、その実行段階で何を販売して売り上げにつなげるかを考え、近隣の施設に見合った商品を品揃えすると良い。
アウトドアでは、かたまり肉をシェアしたり、最近ではこだわりの料理を作ることも少なくない。ウィークデーや連休がないタイミングでは、キャンプ飯の試作をしてキャンプに備えるため、夏需要の長期スパンを考えると、6月の連休が内タイミングは美味しいお肉の試作するタイミングに当たる。
また、アウトドアに憧れてはいるものの、インドアで楽しむ層もいることから、インドアでも使える焼肉も提案していく。最近では外に出かけず、ベランダでアウトドアを楽しむベランピングも需要としてあるため、5月6月は夏場の焼肉バーベキュー需要に備えた、おもしろキャンプ飯提案で打ち出すと良い。
【5月に使えるキャンプ飯提案】
5月のゴールデンウィークは、キャンプに行く機会が急速に高まる。
単に焼肉をする提案から、メニューが想像でき、楽しめるカットしてお肉を楽しめるドラゴン焼肉の提案を行なう。このサイズであれば、デイキャンプでも楽しめる。
牛肉ロースをサーロインのようにカットせず縦に長くカットして、中落カルビで作るドラゴンカルビのように提供する。中落カルビは脂肪が多く食べにくいという声も聞かれることがあり、ドラゴンカルビの赤身率の高い商品をロースで提案する。
サーロインを使用すると、長さはトレーによって変更でき、最長サーロインの端から端まで使用した超ロング焼肉を作ることが出来る。
インパクトの強い商品化「ドラゴン焼肉」となる。
牛肉は味の良い豪州産のパスチャーフェッドビーフを提案していく。
グラスフェッドでもよいが、近年では安くても味がおいしくなければ購入につながらない。パスチャーフェッドビーフは、一般的なグラスフェッドとは異なり、栄養価の高いマメ科(クローバーやライグラスなど)の牧草を中心に播種から行い、餌となる牧草の栄養価をコントロールすることで、肉質の高い牛肉に仕上げるグラスフェッドである。
マメ科の牧草が生育している地域がクイーンズランドなど、冷涼な豪州南部の限られた地域となっているため、どの農場からでも仕入れることが出来るわけではない。また、世界的にも人気の高いサステナブルな牛肉でもあるため、企業価値を高める意味でも活用していきたい。
バーベキューには欠かせないバラブロック。本場では前バラを使用することが多いが、ショートプレートは日本人にも馴染みがあり使いやすい。
血管や汚れ、膜などは丁寧に除去し、脂肪を適量にトリミングしてブロックで販売する。
脂肪が多い部分はできるだけ避け、焼肉にもバーベキューにも使えるように商品化する。キャンプ飯には欠かせない、ブロック肉、カレー用などデイキャンプよりも、調理時間を長くとることができる宿泊キャンプにオススメである。
家庭用では、そのままカレーやビーフシチューなどの煮込み用、好みの厚みにカットして焼肉用にも提案できる。断面を見たときに脂肪の構成比が高くないよう、商品化する際には注意が必要となる。身が厚い部分は売れやすいが、脂肪がやや多めの部分に関しては、牛丼用などスライスしてあらかじめロスにならないように工夫して展開。
部位の特性を理解したうえでブロックも提案していく。
グレードとしては、認知度の高いアンガス牛を使用する。米国産の場合は、CABなどのアンガス牛を販促できる規格も存在するため、USMEFなどとも協力しながら展開するとよい。
【6月に使えるベランピング提案】
6月は祝日が無いため、アウトドアよりもインドアで楽しむベランピングなどをテーマにした提案が最適。
家の中でも楽しめる焼肉では、人気の部位を集めた米国産牛バラ、ハラミ、タンを使用した焼肉2人前セットを展開する。
インドアの少しずついろいろな部位を食べたい消費者ニーズを捉え、人気の牛タン、ハラミとカルビをセットにする。
輸入牛にはお金をかけず、量産するという今までのイメージでは、安く売るしか売上をあげる術が無かったが、きっちりと商品化をすることで、商品に見合った価値を提供することが出来るようになる。
牛タンはタン中やタン先は単品で販売し、タン元を付加価値商品として、セットやタン元の希少部位で販売する。
ショートプレートは、スライサーでスライスすると効率的であるが、身の厚い部分を上カルビとして付加価値展開する。
またスライサーでスライスできない部分は、サイコロ状にカットして、カレー用にするのでは無く、サイコロステーキとして焼肉の一品で展開する。
ハラミは薄くカットする定番とは差別化し、厚いハラミステーキのような商品化をして展開する。
次のアウトドア、キャンプ飯を想像したコト販促を行なうことで、6月のインドア焼肉だけではない、夏休みのキャンプ売上につなげることが出来るようになる。
豚小間切れなどで安価に使用しがちな豚もも肉は、部位提案することで付加価値を付けていく。ランプはモモ肉の中でも、ステーキに使われる部位として牛肉では認知されている。
そのため、豚肉でもランプステーキの名前で展開をして、バーベキュー訴求、豚のジャンボステーキ提案で展開をする。タイミングとしては、イベントのない6月がオススメとなる。
ランプ以外の豚肉では、外モモ部分はスライスがきれいに出るため、スライス取りしてきれいに展開、内ももやシンタマは一口かつや焼肉用に活用できる。
豚ももを、作業性だけ考えて小間切れにすることは、一つの方法論であるが、薄利多売が出来ないスーパーでは、きっちりと利益体制が取れるように商品化にもこだわって展開したい。
アウトドアでは、濃いめのたれを使って提案することが多いが、家庭ではステーキソースや焼肉のたれ以外にも、外食で最近人気のバターにニンニクをたっぷり入れた、手作りガーリックソースなどを提案するのも面白い。
焼肉セットは必要か?
定番で販売が一般的になっている焼肉セットは、本当に商品として必要か店舗内や精肉内でも議論になったことは少なくないと思う。結論から言うと、焼肉セットはあったほうが良い。
焼肉セットが過去からよく売れている店舗もあるが、売れておらず品ぞろえ程度に、バイヤーから言われているから陳列している店舗も中にはあると思う。
しかしながら、焼肉セットの役割は、単体での売り上げというよりも、消費者が焼肉をやりたくなるような購買行動を起こさせる気持ち、視覚的効果も発揮しているのである。
そのため、1日1パックか2パックしか作らないような店舗は、せっかく品ぞろえするのであれば、おいしそうな焼肉セットを1パック最上段に陳列しているほうが、実は、単品の焼肉が良く売れるという現象が出てきたりもするのである。裏を返せば、陳列していなかった場合は、焼肉に見向きもされないで、焼肉すら売れないということになるのである。
過去のデータから売れるものに絞って陳列していると高を括っている店舗ほど、松竹梅戦略が立てられなくなっているため、事実上売り上げが下がっているということにすら気が付かない。近年、効率化を理由に見た目も同じような商品を端から端まで品ぞろえしている店舗が増えてきている。
ABC分析を行って売れるものを陳列しているから、最も効率的な売場作りをしていると思われがちであるが、購買者の心理を考えていない。そのため、売場は魅力的な商品がなく、買いたくなる根本的な流通業の楽しさを忘れてしまった状態となっているのである。
焼肉セット5点盛りは牛豚を合わせたセット商品。
牛肉も豚肉も食べることが出来る。
豚肉を入れると、価格も抑えられ、値入率アップにもつながる。
焼肉セットを大量に販売する場合は、単品を一度に大量に作っていけるように、商品化の段取りを工夫して、オペレーションに注意するとよい。
美味しそうに見えるような商品を一つ店頭に並べて置くことが、焼肉やバーベキュー商材を多く販売するポイントとなるため、商品化は雑に行わず丁寧にしてもらいたい。
牛豚焼肉セットだけでなく、ブランド和牛焼肉セット、希少部位セットなど、仕入れによって臨機応変に対応することで、無駄な発注などしない工夫をするとよい。
焼肉セットの展開時期は、春先から特に強化していき、5月ゴールデンウィークに一回目の山場を作る。消費者の意識の中に、焼肉やバーベキュー、キャンプ飯というカテゴリを5月につけてもらうと良い。
ゴールデンウィークが明けると、祝日がしばらく無いため、次の連休に買いたくなるようなアイキャッチとなるような焼肉セットを5月中旬から6月にかけて販売していく。この買いたくなるような商品を、常に目の前に出しておくことが、定番の焼肉用の売上にも大きく左右するため、必ず行なう必要がある。
アフリカ豚熱(ASF)を正しく知る
今年に入り、ASF(アフリカ豚熱)が隣国の韓国まで迫っていることはニュースでも報じられている。海を隔てた韓国なので、他人事であろうと考えていると大変危険である。
現在、福岡-釜山はほぼ毎日フェリーが出ており、約3時間40分で大人の普通運賃で、往復3万2千円程度で渡航することが出来る。国内旅行の感覚で、海外旅行が楽しめるのが韓国の良いところであるが、その韓国にアフリカ豚熱が蔓延している。
海外旅行をしたことのある人なら、空港で動植物の持ち込み禁止のアナウンスを耳にしたり、靴底消毒のマットなどを通過して入国した経験があると思う。
注意喚起程度に思っている旅行者も多いが、万が一海外から持ち込んだ畜肉製品や、靴底の土にASFウイルスが付着していた場合、日本でも簡単にウイルスが広まってしまう可能性が高い。
動物のウイルスの蔓延は私たちが思っている以上に警戒する必要がある。
平成22年4月に宮崎県で口蹄疫が発生した。
精肉に関わっていれば口蹄疫の名前くらいは知っていると思うが、このとき29万7808頭の牛、豚を殺処分している。
当時の農林水産省の報告によると、同時期に香港、ロシア、韓国、中国で分離されたウイルス株と非常に近縁であることが確認されている。
野生生物の感染状況調査からの感染は極めて低いとされたことからも、海外から人を介して日本にウイルス株が持ち込まれたと考えられている。
このときの教訓を生かして、今回も水際でなんとかASFウイルスを日本に持ちこまないようしたい。
30万頭近い牛、豚を殺処分するということは、畜産が盛んな九州にとっては大きな影響が出ると容易に想像できるが、西日本の生産地に大きなダメージが出た場合は、東日本からも牛豚を調達することになり、必然的に牛豚の出回り量が逼迫し、同時に価格が高騰することは避けられない。
以前であれば、輸入豚肉でカバーできていたかもしれないが、円安の影響で安価な豚肉を海外から調達することも難しい状況となっている。
そうならないためにも、日本全国民が一丸となってASF侵入防止に力を入れていかなければならない。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/attach/pdf/asf-68.pdf
アフリカ豚熱(ASF)は、ASFウイルスが豚やいのししに感染することによる発熱や全身の出血性病変を特徴とする致死率の高い伝染病。
ダニによる媒介、感染畜等との直接的な接触により感染が拡大する。有効なワクチンや治療法はなく、 発生した場合の畜産業界への影響が甚大であることから、家畜伝染病予防法において「家畜伝染病」に指定され、患畜・疑似患畜の速やかな届出とと殺が義務付けられている。
日本はアフリカ豚熱の清浄国であり、これまで本病の発生は確認されていない。なお、アフリカ豚熱は豚、いのししの病気であり、人に感染することはない。また、日本で発生している豚熱(CSF)とは、全く別の病気である。
出典:農林水産省「アフリカ豚熱(ASF)について」(閲覧日:令和6年3月18日)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/asf.html#:~:text=アフリカ豚熱(ASF)と,感染が拡大します%E3%80%82
キャンプ飯を効果的に売込む
ここしばらく、塊肉を拡販する量販店が減ってきている。
家庭で調理をする人口が減ってきていることが影響しているだけでなく、美味しい惣菜なども多く販売されるため、家で時間をかけてまで料理をすることが無くなったことが原因とも考えられる。
しかしながら、塊肉は使用する場所が、家庭のキッチンに留まらず、アウトドアに移行し始めており、週末のキャンプ需要が高くなっていることも視野に、塊肉や厚切りステーキなども売込むことで、今までになり売場作りをすることが出来るようになる。
新型コロナを機に、生活スタイルが大きく変化した。食のスタイルもヘルシー志向だけで無く、ギルティなチートデーをあえて提案していくことで、面白い売場作りを実現することが出来る。塊肉もこだわりのブランドや部位を活用して、店オリジナルの商品化を実現してもらいたい。
特に、5月はゴールデンウィークを機にアウトドアやキャンプがスタートするタイミング。
ゴールデンウィーク以降は6月も祝日がないが、最近流行っているベランピングや家庭で食べるアウトドア飯、キャンプ飯の提案が、売場に活気づかせるカギとなる。アイキャッチ商品を5月から6月にかけて展開し、定番売場をいかに盛り上げるかが、5月から6月の対策となる。