2月に売込むこの商品

年間を通して売上を作りにくい月の一つが2月。
年末年始で出費がかさみ、3月4月で新年度に伴う異動や新生活で出費が見える時期となる。
また、ひと月の日数が少ないことで、曜日周りの影響が出やすい月でもある。
しかしながら、精肉では定番のホットメニュー、大容量パックお買い得商品、ウィークデーやお弁当商材でも使えるアイテムが多いことから、定番商品を中心とした確実に売上を確保していく地に足の付いた提案で、売上確保を狙っていく。

【ホットメニュー】
2月はホットメニューのラストスパートをかける時期でもある。何もしなければ、ホットメニューがマンネリ化して売上が確実に下がっていくため、メニュー提案と商品化で差別化を図っていく。また、秋冬で販売してきたホットメニューや鍋つゆのランキングを店舗で抽出して、店舗オリジナルの売れ筋ランキングを発表して展開するのも面白い。

米国産牛大腸もつ鍋セット(しょうゆ味) 980円/P
米国産牛大腸もつ鍋セット(しょうゆ味) 980円/P

2人前の野菜入り鍋セットは今シーズンの売れ筋商品。
特に牛大腸を使用したもつ鍋セットは家庭でも簡単に調理することが出来る背徳鍋として人気となっている。
セットにはキャベツ・ニラ・もやしの他にニンニクチップ、鷹の爪を入れることで、本格的な外食で食べることが出来るもつ鍋が家庭で作れるため、人気キットとなっている。
もつ鍋のモツは、外食では小腸やセンマイなども含まれるが、各社仕入れしやすいアイテムを選別すると良い。
モツは脂肪が多く付いている規格がオススメ。
脂肪が売れにくいため、脂肪を少なめにと考えている場合は逆効果。
もつ鍋を家庭でも食べることを選択するターゲットは、背徳感たっぷりのメニューが好きで好んで食べるため、ギルティーなペルソナ像を想像して商品化すると良い。

タイ産合鴨・鶏だんご鍋セット 680円/P
タイ産合鴨・鶏だんご鍋セット 680円/P

鴨鍋を2月に売込み、ホットメニューのマンネリを防いでいく。
合鴨は単価が高いため、分厚く商品化するとパック単価があがってしまい、ロスになりやすい。
合鴨は凍結をかけてから2mm厚でカットすると、枚数を多めに商品化しても比較的安価に単価を抑えることが出来る。
鍋セット提案は生鶏だんごをセットする。
見た目のボリューム感、お買い得感を出すことができるだけでなく、パック単価を上げることも可能となる。
本格的な鴨鍋提案では、生だんごも鴨肉を使用すると良いが、所得層が高い地域での展開に限られる。そのため、鶏肉を使用した生だんごをセットアップして商品化する。
商品化で注意すべきポイントとしては、凍結した鴨肉はドリップが多く離水してしまう。そのため、吸水紙は必ずしかなくてはならない。
当日販売が出来なかった商品に関しては、必ず翌日にドリップが出ていないか確認をして販売を継続する。

合鴨は、モモムネをそれぞれ販売すると、モモが余りがちになる事が多い。そのため、モモとムネを抱き合わせて凍結してスライスすることで、バランス良く部位を消化していくというテクニックも使っていきたい。

【焼きメニュー】
お弁当商材や夕ご飯の一品メニューとして焼きメニューを拡販する。
外気温は低く冬まっただ中であり、そのような時期には、キッチンに立って長時間調理をすることもしたくないという生活者も多い。
その場合、簡単に味付けした味付け商品が、販売している側が思っているよりも多く売れる。
ホットメニューだけに注力せず、ウィークデーの売れ筋や週末でもウィークデーに使用すると思われるような商品の品揃えは、売上を大きく左右するため、拡販を強化していきたい。

【焼きメニュー】
メキシコ産牛中落ちカルビ味付け焼肉用 248円/100g

中落ちカルビ味付け焼肉用は2cm角程度のサイコロ状にカットして販売する。
味なしのプレーンだけで無く、ガーリック味や山賊味など味付け商材の展開でバリエーションを増やすと良い。
大型パックは週末に品揃えして拡販するが、平日使用するお肉のカテゴリである。
そのため、メガパックは通常パックよりも割安感を出して販売すると良い。
中落ちカルビは、米国、豪州、メキシコなど様々な産地のものが手に入る。
仕入れ先から安定供給出来る産地やブランドを使用して展開する。
商品化のポイントとしては、骨肌を綺麗に除去することである。
中落ちカルビを骨肌除去すること無くカットすると、オペレーションとしては当然この方が楽であるが、食べたときに、砂を食べた様な食感の場所が出てきてしまう。
当然のことながら、リピートにはつながらない。ちょっとしたトリミングではあるが、リピートにつながる商品になるか否かの一線であるので、手間と思わずに作業を行なってもらいたい。
メニュー提案としては、そのまま焼いてコロコロ焼肉やサイコロステーキという定番。煮込んでカレーに入れるなどのアレンジ提案など工夫次第で、バリエーション豊富に展開することが出来る商品である。

【焼きメニュー】
米国産豚ロースカツレツ用(ガーリック&チーズ風味)158円/100g

米国産豚ロースを使用したカツレツを拡販する。
実はロングセラーな商品であるが、ここしばらくプルコギなど人気の味付け商品に売場をとられてしまっていたが、最近またカツレツブームに火がつき始めている。
商品化は簡単で、米国産豚ロースをカットして、カツレツの粉を両面にまぶして振りかけるだけである。ロース1枚60gカツレツ粉10g程度での商品化。
手切りでロインをカットしても、パートさんでも難しくない作業である。
味のバリエーションとしては、カツレツ粉、香草焼き、スパイス焼きなど多めの油で揚げ焼きするタイプの商品を品揃えすると良い。

実は、CCロインやMMロインなど、輸入豚ロースが売れるタイミングがある。
それは、景気が良くないタイミングや、生活者が食費にかけるお金が出せないタイミング、豚の相場が高く値入がとれにくいタイミングなどである。
店内加工をすることで、利益率が改善することも要因の一つであり、商品化が容易であるため、利益改善のアイテムとして活用されやすい。
今、この商品が売れ始めているのは、所得が下がっていると言う現実の裏返しであると考えられる。生活者が購入しやすい商品を、しっかりと品揃えして、競合に負けない売場作りを行なうと良い。

即食お肉惣菜

ミート惣菜コーナーでは、冷惣菜でローストビーフやローストポーク、焼豚、焼鳥、フライ商品でとんかつやコロッケ、から揚げなど、精肉での惣菜にバリエーションが出てきた。
惣菜売場に負けないこだわりのお肉が売りとなるため、ブランド牛や銘柄豚など精肉でも販売している商品を使った商品展開が、リピートにつながっている。
商品の一部に、ハムやソーセージ、ベーコンの品揃えや、吊しベーコン、焼豚などに焼き色をつけて惣菜にして提供するパターンも増えている。
この加工品を使用して、サラダやおつまみメニューに商品化することで、仕入れリスクと在庫リスクを軽減する商品展開を行なっている店舗もある。

即食お肉惣菜
お肉惣菜 ベーコンとポテサラピリ辛ソース 298円/P

銘柄ポークを使用したベーコンをカットし、ローストビーフサラダでも使用しているポテサラとサラダを併せて、ベーコンとポテサラのサラダを展開。
アクセントにピリ辛ソースをかけると、オリジナルのポテサラが完成する。
ソースはバリエーションをつけることができ、ガーリックソース、ブラックペッパー、シーザーサラダ風など水平展開することが出来る。
お肉惣菜の価格帯は1人前298円までがベスト。
大容量パックを品揃えするよりも、少量多品種で、種類を多く品揃えすることが選ぶ楽しさ、次回への期待感が高くなる。
ベーコン以外にも、ハムやボロニアソーセージ、サラミなども展開アイテムとしては面白い。

店内でバラベーコンやボロニアソーセージなど、メーカーの業務用ハム・ソーセージ・ベーコンの商品化を行なっている店舗は、安定して加工品の売り上げが付いていることと思う。
最近ではOEM先で、精肉で使用している銘柄肉を使用した、加工品を展開している企業も出てきており、メーカー任せでは無く、自社の在庫として製造して展開しているパターンもある。
PB商品は、こだわりの製法や着色料、添加物不使用など、こだわりを出すことが出来る。
一方で、在庫リスクを伴うため、今までメーカー任せだった在庫や、日付管理、食品ロスに対する意識が高まり、結果的に持続可能なSDGsの観点で仕事をすることになっている。

インバウンド!訪日外国人を精肉に取り込め!

コロナが5類になってから、インバウンド需要が急速に回復してきている。
日本政府観光局(JNTO)によると、2023年10月の訪日外国人旅行者数(推計値)は251万6500人で、2019年比0.8%増(2019年実数:249万6568人)と報告されている。
実は、アフターコロナで初めて2019年の実数を上回った月となったのである。
2023年1月から10月までの累計は1989万1100人(2019年比26.1%減)で、年間2000万人に留まらず、2500~3000万人も視野に入ってきたと考えられる。
 2019年との違いとしては、中国からの訪日人数が25万6300人で、2019年比64.9%減と大幅に減少していることがある。
一方、韓国が63万1100人(2019年比219.9%増)、台湾が41万3701人(同2.7%増)、米国が21万1900人(同38.2%増)、香港が17万9300人(同0.7%減)となっている。

インバウンド!訪日外国人を精肉に取り込め!
資料:日本政府観光局(JNTO)訪日外客数(2023年10月推計値)より

https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20231115_monthly.pdf

円安もインバウンド需要を大幅に伸ばしている一因となっている。
例えば、輸入牛肉は円安の場合は、為替の影響で日本で販売する価格は高くなり、日本に住んでいると損していることばかりに目が行ってしまう。
しかし、海外から見ると円安は日本に旅行に行くと円高の時よりも、旅行代金もホテル代も食事代も為替で安くなるということである。
円安と叫ばれるようになる前までは、1ドル110円前後だったので、それが1ドル140円になったとすると、海外から見ると1ドル30円分、およそ80%程度の支払いで済むことになる。
さらに、米国や豪州など工場で働くワーカーの賃金は、年収1500万円以上になっていることも多く、この時点で、日本の平均年収の3~4倍の賃金格差があり、海外の人にとっては、日本への観光は相当魅力的に見えていると思われる。

その中で、ホテルの部屋のみ需要やおつまみ需要は大きな売上を作る一つの施策にすることが出来ると考えられる。
精肉では、即食の簡便惣菜やサラミやジャーキーなどの酒の肴、そのまま食べることが出来るピンチョスのような商品も、今後は品揃えをして、インバウンド需要をしっかりと捉えていきたい。
特に、観光地として人気の東京大阪京都だけで無く、旅行ルートに入っている長野、富山、石川、海外からの直行便も出ている北海道、福岡などは、特にPOPなどで英語表記や韓国語表記をすることで、需要を喚起することが出来る。

海外への和牛の輸出量が年々増加していることもあり、日本旅行の一つの目的が日本食や本物の日本の和牛を日本で食べることであったりもする。
その中で、和牛ローストビーフや和牛ジャーキーがスーパーで購入出来るとなると、新たな需要を喚起することが出来るので、しっかりと取り組んでいきたい。

既存販路や商売にとらわない精肉

商売はオフラインの量販店の精肉での現金商売から、オンラインのネットスーパーで電子マネー決済に変化を遂げており、もしかすると、近い将来スーパーマーケットは必要なくなるかもしれない。  
しかしながら、リアルタイムでの商品を目で見て選んで、美味しい香り、試食が出来るなど、ネット上では出来ない体験が、スーパーマーケットの精肉では出来る。
今まで当たり前と思い込んでいる精肉業界のシステムや、販売形態、常識は一度取り除いて、本当に売れる商品が何か、売れる環境が何か考える時間を設けてもらいたい。
店内はスマホの撮影禁止となっている企業が多いが、見た目のこだわった映える商品が売れる時代、むしろ撮影して拡散してもらった方が、多くの顧客を集客でき、売れる店舗となるのではないかと思う。
イタリアのイータリーでは、店内の撮影はもちろん、どんどん拡散してほしいとスタッフも話す。「こんな商品がこの見せにあるなら買いに行く!」という心理が働くからである。
今まで、当たり前と思っている常識を変えて行くことが出来なければ、日々の売上も、私たちの生活も変わらない。変化を恐れず、新しい取り組みをどんどん取り入れて精肉から量販店を変えて次のステージに向かいましょう。