「精肉とは何か?」

精肉の部門の作り方

精肉売場とは、「牛肉、豚肉、鶏肉、挽肉」の精肉素材。と、「肉半製品と加工肉(ハムやソーセージ)」の専門の売場である。
最近では「内臓肉、羊肉、鴨肉」なども定番アイテムとして販売している店舗も多い。
通常、「肉」とは「筋肉」で、自分の意思で動かせる部分の肉のことであり、骨に、「腱」などで繋がって居る。「内臓」は、自分の意思によって動かせない部分、副交感神経で活動している部分で、その可食部分を一般的「内臓肉」と呼んでいる。
精肉部は、それぞれの食肉原料を納品し、バックヤード(作業場)で、料理して食べやすいように、スライスや焼肉用などにカットして店頭で販売する。
食肉のカットの方法や種類は、基本的には、「料理」に沿った形で「精肉」を製造することである。米国式カット、豪州カット、や英国カット、仏蘭西カット、など、それぞれの国には独自の分割やカットの方法がある。それは、国によって料理が違うからである。
食肉のカット方法は、その国の料理に連動して作られているのである。
また、「スライスや手切り商品」ありきで売場作りをするわけではなく、お客様のニーズに合わせたアイテム群を品ぞろえすることが重要である。
そういった考えから、以前はスライスやステーキだけだった売場に、オードブルとして食べられる「生食」アイテムや、「衣付き」のフライの油に投入すれば簡単にトンカツ等が食べられる半製品、個食「鍋」、最近では「電子レンジ対応」アイテムなど、時代に応じて商品化が多様化してきている。
そのため、現代の食生活に見合った商品を作ることが最も重要な精肉部門の使命である。
食生活に見合った商品化は、例えば、九州でも宮崎県であれば「鶏の生食」が売場に多く並ぶ。甲府や、福島、五戸では、「馬刺し」などが、売り場に並ぶ、そういった商品化は、地域によって違うので、今回は省略し一般的な精肉の作り方に特化する。

精肉売場では大きく分けて、先にも述べた「牛肉、豚肉、鶏肉、挽肉」と「半製品、加工肉」に大きく分類される。
さらに、「料理用途別」に分類することでお客様が買いやすい売場作りとなる。その一例が以下のリストの通りである。

料理用途別
牛肉 ステーキ
焼肉・バーベキュー
すき焼き・鉄板焼き
切落し・小間切れ
しゃぶしゃぶ・冷しゃぶ
豚肉 とんかつ
生姜焼き
スライス
切落し・小間切れ
しゃぶしゃぶ・冷しゃぶ
鶏肉 正肉
切身・唐揚げ
焼鳥
挽肉 ハンバーグ
餃子
半製品 衣付系
粉付系
タレ漬け系
野菜入りキット系

 

それぞれの特徴に見合った商品化と品揃え、カット方法、SKUを考え、最も効率の良く売上を稼ぐことが出来る構成比で、商品化数量を決め、売場作りを行うと、売上を効率的に稼ぐことが出来る。
この構成比は、総務省の家計調査などで公表されている、各地域の牛豚鶏の消費数量に近いと、その地域の食生活に見合っているわけである。
売り場は、まず、地域の消費に見合った畜肉ごとの尺数を経産し、それに、自社の戦略、コーナー作りなど色々な要素で、売り場を決めていく。

畜種ごとの主なグレードと部位

【牛肉】
大きく分けて国産牛肉と輸入牛肉がある。
日本人は特に日本のものが良いという意識があり、国産のものに特化して購入する消費者は特に輸入肉を懸念する傾向にある。
いわゆる「国産志向」の消費者で、たとえTPPで安価な肉が輸入されたとしても、この層は揺るがない購買層である。
さらに国産牛は、ハレの日には必要な高級な「和牛」のカテゴリと平日でも購入しやすい国産牛の「ホルス」や「交雑牛」に分類される。
それぞれ毎日品ぞろえする必要はないが、常においておく主力のブランドを軸に、地域の特性やイベントごとなどに合わせて高級なアイテムや特売に合わせた安価なアイテムを品ぞろえすると良い。
輸入牛肉は、「豪州産」と「米国産」が大きな割合を占めるが、カナダやニュージーランド産なども競合との差別化で品ぞろえしても良い。
以前は豪州や米国の牛肉も単に「豪州産牛肉」や「米国産牛肉」で販売している店舗も多かったが、最近はその中でも「豪州産アンガス牛」「米国産牛プライム」など輸入牛肉の中でも差別化、ブランド化をして品ぞろえするようになってきている。

国産牛 和牛 黒毛和種
希少和種
国産牛 交雑種
ホルス他乳牛
輸入牛 米国産 プライム、チョイス
アングレ
豪州産牛 グレイン、アンガス
グラス、ショート
その他輸入牛 輸入牛

 

部位では、ロースやサーロイン、肩ロースなどの高級部位は比較的何にでも使えるため、厚切りのステーキから焼肉、スライス、しゃぶしゃぶにも商品化することが可能となる。

「バラ部位」は焼肉にすることが多いが、「肩バラ」に関しては焼肉にすると硬いため、薄切りや鉄板焼き用に商品化する。
「バラ」とは、アバラ骨に付いている肉部位で、「カルビ」と表示できるのは、「バラ部位」を使ったものだけに表示できるので、「モモカルビ」など、一部間違った表示もあるので注意したい。
「カルビ」とは、韓国語で「あばら骨」のことで、あばら骨についているのが「カルビ」だからである。
「肩・モモ部位」は、「ランプ」や「みすじ」など一部希少部位を除いて、比較的肉質が硬いため「切落しやスライス」、「しゃぶしゃぶ」にすることが多い。
牛肉は、手切りで厚く食べられるところは「ステーキ」で。
ステーキの厚さでは硬いが、焼き肉の厚みだと食べられるところは「焼き肉」で、
スライサーで、薄く切れば、「すき焼き・しゃぶしゃぶ用」に。
長く煮込めば美味しく食べられるものは「煮込み用」で、それ以外堅い部分など、カットして残った部分などは、スライスにも手切りにもできないので「ミンチ」にして、挽肉料理にする。
そういう肉の活用を行うのが精肉の仕事である。

牛枝肉の格付けは歩留等級と肉質等級で表示が決まります
牛枝肉の格付けは、食肉卸売市場および食肉センターにおける牛枝肉の公正な取引が行われるようにするため(社)日本食肉格付協会(JMGA)が定めたもので、全国統一されています。
「歩留(ぶどまり)等級」と「肉質等級」の組み合わせで、全部で15種類あります
歩留等級
ロース芯の面積、ばらの厚さ、皮下脂肪の厚さ及び半丸枝肉重量の4項目の数値を計算し決定します。歩留等級の区別は、下表のとおりで「A」「B」「C」の3等級に決定されます。

等級 歩留
A 部分肉歩留が標準より良いもの
B 部分肉歩留が標準のもの
C 部分肉歩留が標準より劣るもの

 

肉質等級 
肉質等級は、脂肪交雑・肉の光沢・肉の締まり及びきめ・脂肪の光沢と質の4項目で決定されます。

1.脂肪交雑 霜降の度合で表します。B.M.S.という判定基準で決定します。

■肉色及び光沢の等級区分
等級 B.M.S.
かなり良いもの No.8~No.12
やや良いもの No.5~No.7
標準のもの No.3~No.4
標準に準ずるもの No.2
劣るもの No.1

 

2.肉の光沢 肉色については、牛肉色基準で、光沢は肉眼で判定して等級が決定されます。

■肉色及び光沢の等級区分
等級 光沢
かなり良いもの かなり良いもの
やや良いもの やや良いもの
標準のもの 標準のもの
標準に準ずるもの 標準に準ずるもの
劣るもの 等級5~2以外のもの

 

3.肉の締まり及びきめ 肉眼で締まり及びきめを判定し、等級が決定されます

■肉の締まり及びきめの等級区分
等級 きめ
かなり良いもの かなり細かいもの
やや良いもの やや細かいもの
標準のもの 標準のもの
標準に準ずるもの 標準に準ずるもの
劣るもの 粗いもの

 

4.脂肪の色沢と質 脂肪色については、牛脂肪色基準、光沢及び質は、肉眼で判定して等級が決定されます。

■脂肪の色沢と質の等級区分
等級 光沢
かなり良いもの かなり良いもの
やや良いもの やや良いもの
標準のもの 標準のもの
標準に準ずるもの 標準に準ずるもの
劣るもの 等級5~2以外のもの

 

肉質等級の決定 肉質等級は、脂肪交雑・肉の色沢・肉の締まり及びきめ・脂肪の色沢と質の4項目のうち、最も低い等級に格付けされます。

 

等級の表示 
等級は、歩留等級肉質等級を下記の表示区分によって連記表示する。
規格の等級と表示

歩留等級 肉質等級
A5 A4 A3 A2 A1
B5 B4 B3 B2 B1
C5 C4 C3 C2 C1

 

【豚肉】
豚肉のグレードは、あまり分けられていないが黒豚(バークシャー種)や赤豚(デュロック種)、金華豚など特徴のある銘柄豚を除いて、多くは「白豚」であることが多い。
一般的には、LWDなど「三元交配」、これにハイポーをかけた「四元交配」などを作るために、それぞれの豚(二元や三元、四元)が国産豚として出荷されるから、白豚というカテゴリの豚が一般的に縛りなく広く流通しているである。
牛肉同様に輸入豚ももちろん存在する。
多くは米国産やカナダ産がチルドで流通しており、ヨーロッパ(デンマークやイタリア、ハンガリー)などの豚は冷凍で流通している。
米国やカナダの豚をはじめ日本の生産者を守るため、関税がかけられる。そのため、比較的輸入豚肉の店頭価格は国産豚肉に近く設定されるような価格で日本に輸入されてくるのである。
最近では、PEDなどの影響で豚肉の出回り量が少なかったこともあり、ヨーロッパの冷凍豚肉も量販店で売られることが多くなった。
そのかわり、同じ単なる豚肉ではなく、ハンガリーの国宝豚の「マンガリッツァ豚」やスペインの「イベリコ豚」など品種に特徴を持った豚肉を輸入して販売している。
これによってチルドの輸入豚肉との差別化を図って展開し、売場にメリハリをつけることが出来たわけである。

【鶏肉】
鶏肉は「地鶏と銘柄鶏、ブロイラー」が日本の量販店では主流である。
2本足で歩くものを、家禽類(ポートリー)とよび、鴨や、感謝祭から売り場に出てくる七面鳥や、ダチョウ、などがある。
輸入鶏(ブラジル産など)も出回っているが、チルドケースで販売するとドリップの量が多いため、業務用スーパーなどで2kgの冷凍で販売されていることが多い。
「地鶏の価格は100g398円前後のラインになるため、品ぞろえ(見せ筋)程度の展開をしている店舗が多い。主力は銘柄鶏、ブロイラーでその割合によって、競合との差別化を明確化している。
「銘柄鶏」の多くは、品種というよりは餌をブロイラーと変えたものや、特殊なサプリメントを給餌したもの、産地や鶏舎を指定する、飼育期間を長くしたブロイラーなどを「銘柄鶏」とうたって販売している。
鶏肉の特徴としては、牛・豚肉よりも安価なため、牛肉や豚肉の相場が高くなると消費者は鶏肉を購入する傾向にある。外食も、食材原価を下げるために鶏肉を使う事が多い。
これは、日本に限らず全世界的に、牛豚の相場が上がると鶏肉の相場と出回り量が減る傾向にある。

商品管理とオペレーション

PC(プロセスセンター)や完全社外から購入するアウトパックを除いて、先にも述べたように、原料で納品されバックヤードでトレーパックに商品化して店頭へ陳列する。
キット商品やPCセンターから納品された商品は鮮度管理を徹底するため、すぐに店頭へ陳列するか、店頭へ陳列できない在庫は冷蔵庫へ保管する。
キット商品の多くは野菜入り、であったり、見栄えを特に注意しなければならないものが多いため、中に入っている野菜などが偏らないように注意しなくてはならない。

納品された原料は伝票と相違がないか検品し、冷蔵庫に日付を管理して在庫する。
国産牛肉に関しては「牛個体識別番号」の管理をするため、記帳したり機械への入力、スキャンなど行い適切に処理を行う。
冷蔵庫では日付、品質、温度管理を徹底して行い管理する。
管理は、社員だけでなく、パートさんやアルバイトにも徹底し、意識づけしなくてはならない。近年、コンビニでのアルバイトの不祥事も多く、以前よりも従業員全員への意識徹底が求められている。