1月に売込むこの商品

近年、ハレの日に力を入れない傾向が強くなっているが、2023年正月はwithコロナではあるものの、コロナ禍からようやく解放され、久しぶりに親族が集まる対面正月が想定される。
おじいちゃんやおばあちゃんが、子どもや孫のために、少し奮発して「すき焼き」や「しゃぶしゃぶ」を中心に夕食を作ることを想定。
地方の量販店は特に、2018年以来の「大容量すき焼きパック」が売れるタイミングとなる。
昨年や、一昨年とは品揃えやトレーの発注にも気を付けて計画を立ててもらいたい。
特に、トレーの発注を1年目や2年目にさせている場合は、年末年始期間に関しては、任せきりにならないよう十分配慮が必要となるので気を付けたい。

【牛肉】

国産黒毛和牛肩ロースすき焼き用 1480円/160g

年始を飾る初売りは、「黒筋トレー」を用いた「すき焼き用」や「しゃぶしゃぶ用」の「ハレの日メニュー」を中心に展開する。綺麗なバランや寿バランを一緒に入れて「ハレの日」を演出することもポイント。
年始一発目の牛肉の作業はノーマルスペックの「和牛肩ローススライス」がオススメ。
売場を一気に「すき焼き用」で作り上げるのに、スライス商材から「ネック側」の切り落しまで、幅広く商品を作ることが出来る。
「和牛肩ロース」は、リブ側は「肩ロース芯部分」を見せる面としてしっかりと盛り付ける。
「ロース部位」を購入するよりも割安に芯部分を購入することが出来る、「肩ロース」の目玉部分である。
中央部分は、「ザブトン」を魅せる商品化を行なう。
ネック側になるにつれて、肉質は硬くなるため、気持ち程度薄くすると良い。
ノーマルスペックのネック付きの場合は、「和牛切り落し」や「小間切れ」へ商品化して、年始は綺麗な商品を展開する。
年始商材については、年末から商品を持ち越さないことが大切である。
加工日が前年日付となると、鮮度感が落ちるだけで無く、一年の最初から古い商品を売っているという印象が続いてしまうため、気を付けたい。
年末年始になると、「分厚い肉の方がすき焼きは旨い!」と言う理屈で作業量を減らそうと、すき焼き用スライスを通常よりも1-2mm分厚くする作業者がいる。地域にもよるが、すき焼き用は2mmより分厚くすると、火の通りに時間がかかり、食べにくくなるため通常通りの厚みで商品化する。

【豚肉】

カナダ産豚肩ふぞろい焼肉(イチオシ本格焼肉)158円/100g

味付け商品の定番となりつつある「ふぞろい焼肉」は、味のバリエーションが増え売場を活性化させている。売れる売場の傾向としては、単なる焼肉のタレや塩だれなどの味付け商品ではなく、有名焼き肉店監修のタレなど、こだわりのタレを使用することで付加価値を見いだしている。
販促シールやPOPを使用して、商品の魅力や特徴を伝えることも売上に左右していると言える。
商品化は、比較的原価の安い「ボンレスバット・キャピコラバット」などを使用し、スライサーで焼肉大の大きさへカットする。
タレは揉み込み全体にタレの色が付くようになじませる。見た目には、刻みネギや白ごまなどをトッピングするだけでも、印象が大きく変わるため、少しの努力を惜しまないように商品化する。
トレーは高蓋にすることで、ボリューム感が出るだけで無く、蓋にタレが付かないため綺麗な商品化に見えることもポイントとなる。蓋をする際に、タレや指紋で汚れないように気を付けて商品化する。

【精肉生食】

「生食カテゴリ」で勢いを伸ばしているのが「馬刺し」。特にハレの日には食べたくなる商品の一つ。年始商戦にはぜひ品揃えしたい馬刺しであるが、店内加工するには、生食用の別室が必要である。最近では冷凍スライス済みスキンパックなども出回っているため、比較的扱いやすくなった商品の一つである。
馬は、牛のと畜場とは異なり、馬専用のと畜場がある。また、牛の体温よりも馬の体温の方が高く、雑菌が繁殖しにくいという性質を持っている。牛や豚と異なり、反芻をしないため、体温が高く菌を保持しづらいと言われている。
別名「桜肉」とも言われるが、馬刺しという言葉の方が近年一般的である。
売場では法律の問題で表現しにくいが、低カロリー、低コレステロール、低飽和脂肪酸で、鉄分、カルシウム、ビタミンA、ビタミンEが豊富という、栄養素としても優れた畜種である。

国産鮮馬刺し盛り合わせ 2580円/150g

馬肉そのものが和牛のように単価が高いため、価格訴求するようなアイテムではない。
そのため、折り箱や品位を落とさないような商品化をした盛り付けで、売場にも高級感を持たせることが重要である。「馬刺し」の販売で、部位を販促シールやことPOPで掲示することも安心感のある販売方法となる。牛肉にない部位としては、真っ白なコーネとフタエゴがある。
「コーネ」は、「たてがみ」とも言われ、馬肉の中で人気のある部位。
脂分とゼラチン質で構成されており、刺身で独特の食感と甘みが特徴である。
「フタエゴ」はあばら部分の三枚肉。牛肉でいうバラの部分であり、コリコリとした食感で、刺身やユッケで食べることが多い。
食べ方は、馬刺し用のたまり醤油に、すりおろしニンニク、すりおろし生姜を好みで付けて食べるため添付する。

知っておきたい豆知識としては、国内の生産量で一番多いのは熊本県で日本の生産量の4割を締める。福島、青森、福岡などでも生産されている。ただし、日本で流通している馬肉の内の6割は輸入に頼っており、カナダやアルゼンチン、ポーランド、メキシコなどから輸入されていることも知っておきたい。
しかし、世界的にも馬に関しては、コロナの影響や動物愛護の観点からも、生産量は減っているのが現状であり、今後大きく生産量が増える畜種ではないと考えられる。

【ミート惣菜】

ローストビーフにぎり寿司5貫 398円/P

薄くスライスした「ローストビーフ」をシャリに乗せ、好みのソースで仕上げて完成させたローストビーフにぎり寿司。
「ローストビーフソース」は醤油ベースの、粘度が低いものが多いので、粘度の高いソース・スパイスの効いた山賊焼のたれや甘めの照り焼きソースなどが合う。
ローストビーフソースを別添してつけダレ提案でも良い。
トレーは高級感のある黒金を用いた蓋付きトレーを使用する。タレが蓋やトレーに付かないよう綺麗に商品化することで、ロス率が大幅に減る。

牛タン拡販のタイミング到来

2021年後半から輸入牛肉の輸入量が激減し、出回り量が減ったことにより輸入牛肉の相場が高騰したことは記憶に新しい。
2022年に入り夏頃から、徐々に輸入量は回復の兆しを見せ始めている。
相場に関しては、高騰して余剰となり始めている在庫を消化していくため、一時期に比べるとやや落ち着きを取り戻し始めているが依然高い状況が続いている。
2023年以降で、少しずつ価格や物量含めて回復する話は出ているが、過剰な円安、日本の輸入牛を購入する価格が安いために、外国に買い負けをする現実は解消しない。
適正な価格で販売し、付加価値を付ける販売方法は今後も続けてい句必要がある。

出典:農畜産業振興機構 畜産振興部「食肉の需給動向(令和 4 年 8 月)」

https://www.alic.go.jp/content/001184539.pdf

輸入牛肉とともに、相場が動くのが内蔵。一時は価格が高すぎたため、量販店での販売を見合わす企業も出ていた牛タンが、再び売場に戻ってきている。
牛タンの再販売には、売場で牛タンの存在感をアピールする必要がある。
そこで、大きく目立つPOPと販促シールをしようした売り込みを行なう。
牛タンの商品化は、定番の焼肉カットにすることで、焼肉スタートアップメニューの牛タンを拡販する。

縦長の鰻トレータイプの場合は、多段ケースであれば、シールが目立たないため、売場は平台で行なうことで商品価値が上がる。
商品価値を上げるには、トレー、販促物、商品化だけでなく、販売する場所も含めた総合的なコーディネートが必要となる。今一度、トレーや販促シールも見直してもらいたい。

押さえておきたい最新動向「牛肉ユッケ」

牛肉の生食を提供することが困難になった現在では、生食コーナーはローストビーフや馬刺しが主流となってしまった。
一部外食店では、まだ提供を続けている場合もあるが、ほとんどの場合、外食でも提供が困難になっているのが現実である。
提供方法を模索し始めた企業努力もあり、非加熱食肉製品でユッケをコンシューマパックで販売を始めた企業も出ている。
牛肉生ハムにすることで、生食基準をクリアしている。厳密には、ユッケ風という方が正しいかもしれないが、食べたい欲求を満たしてくれる商品であることは間違いない。

さしみーと牛ユッケ生ハム 798円/P

冷凍コーナーで牛肉が50g(別添タレ12g)で、798円で販売することが出来るため、割高感はあるが、家庭でユッケやユッケビビンバなども楽しめる奇抜な商品である。
味も、かつて提供していた牛肉ユッケと大差なく食べることが出来るため、今後の生食需要に一石を投じるアイテムになりそうである。
牛肉ユッケに関しては、各地の保健所ホームページを見てもらうと、生食の基準が記載されており、基本的にはかなりハードルが高い。
写真の商品のように、生部分をきちんと処理すると、低価格で販売出来ないことは一目瞭然である。
量販店においても、生食を提供する際には、厚生労働省の生食の衛生基準に則り、法律に適用した生食用加工品作業を行なってもらいたい。
アウトパックで商品を仕入れる際にも、温度管理、鮮度管理は精肉商品の中でも、十分に意識して扱ってもらいたい。

「癸卯」という うさぎ年に一歩抜きに出る

2023年 癸卯(みずのとう)という兎年は、「今までの努力が花開いて、実り始める」という縁起の良い年を表す、新たな一年となる。新型コロナによって様々な環境が変化し、精肉は相場や安定供給が難しい現実に直面。困難なコロナ禍を過ごしている。
しかし、畜産業全体の創意工夫が新たな商品や提案により実りを作り始めていることからも、業界が一歩前に進んでいるという様に感じる。
年始商戦には、やはりハレの日メニューを展開して、新たな気持ちで飛躍の年になるよう、夕食には和牛ですき焼きを食べ、酒の肴に馬刺しや牛ユッケを楽しむ食シーンを提案する。
販売側が、きちんとペルソナを想像しながら、食シーンを思い浮かべられなければ、売れる物も売れない。食シーンを想像した、商品化、品揃え、売場作りを、2023年も提案してもらいたい。