2月に売込むこの商品

この冬は販売する商品の手当や、相場高に、苦慮している精肉が多いと思う。
新型コロナに加えて鳥インフルエンザの影響が、結果的に畜肉の生産に大きく影響してしまっている。持続可能な畜産事業、精肉を考えた商品化や売場作りを推進し、時代に合わせて、生産から販売、地域の生活者まで、誰一人取り残さない精肉を考えていきたいと思う。

【豚肉】

国産黒豚(バークシャー種)肩ロースしゃぶしゃぶ用 398円/100g

 2月の売上のベースはホットメニューの王道「しゃぶしゃぶ」で作る。
ただし、「松竹梅戦略」の「松」にあたるアッパーの黒豚は、システムトレーではなく、扇トレーなど見た目にも異なるトレーを使用することで、アイキャッチとインパクトを与える。
トレーをあえての縦に置くことで、売場での印象ががらりと変わる。
 商品化は、スライス取りして、透明カップなど用いて立体的に盛り付けることで通常豚との差別化を図る。トレー代もやや高めになるため、商品化もその価値が伝わるように工夫することが必要である。
 黒豚の品種はバークシャー種で、「四つの足と鼻、尾」の6カ所が白い豚である。
「六白」としてブランド化されている黒豚もある。
日本の量販店では、最近は「黒豚」よりも「イベリコ豚」などに注目が集まっているが、海外向け輸出では日本の黒豚は人気が出てきている。
「イベリコ豚」が注目されるのは、「黒豚」よりも安く、バラや、肩ロースの部位別に購入できるところが利点であるが。
近年消費者から指名される打ち出し方は、単なる銘柄ではなく、品種など明確に差別化があるものである。そのため、三元豚や四元豚の様に、バークシャー種という品種を前面に打ち出して提案すると良い。

国産豚ヒレ肉スパイスステーキ用 580円/200g

豚ヒレステーキが売れている。
スパイスを周りに付けた商品の商品化は、まな板が汚れるため、懸念されがちであったが、平成時代のリバイバルブームに乗った形で、スパイスステーキに人気が出ている。
 商品化は、ヒレ肉一本の状態で、スパイスを周りにやや強めにまぶしてから、包丁で2cm厚にカットする。断面にスパイスが付かないように商品化するのがポイントとなる。
まな板が汚れるため、作業後には一度まな板を洗う必要がある。そのため、作業の一番最後に商品化すると良い。
スパイスは、業務用のステーキ用のスパイスだけでなく、粒の粗いブラックペッパーや香草焼の粉でも商品化が出来る。
 関連販売として、ステーキソースや焼肉のたれなど陳列するだけでも、買い上げ点数アップが望める。

(関連販売)
たれコーナー、調味料コーナーが充実し始めていることもあり、関連販売でたれを陳列することが少なくなった。
しかし、どのタレと合わせるのがおいしいのか、どの調味料がオススメなのか、実は消費者は迷っている。販売側としては、「お好みのタレでどうぞ」というのが常套文句であるが、品数が多くなればなるほど何を購入すればいいのかわからない。
関連販売が出来ない場合は、「○○タレと一緒に食べるのが、お肉屋さんチーフのオススメです!」のようなコト販促が、消費者ニーズを捉えた売場作りである。

【鴨肉】

京都府産京鴨ムネ鍋用 598円/100g

寒い冬の定番ホットメニューの鍋で、アッパーな畜肉の一つが「鴨肉」である。
2月は消費が冷え込むタイミングであるが、ホットメニューのマンネリから、少し他のものを食べてみようかとなるタイミングであるため、少量でも楽しめる鴨肉をこのタイミングで拡販する。
「鴨肉」は、ムネ肉をロースと呼ぶ事もあるが、部位表示としては、ムネに該当する。
商品化が難しいと思われがちであるが、チルド鴨肉は脂肪面を外側(上側)にしてカットすれば綺麗に切れる。
盛り付けは、日本の和柄の「青海波」のようにすると綺麗に見える。
カットした端は、比較的脂肪が多く残りがちであるが、鴨の脂肪はおいしい出汁が出るため、捨てずにパックに盛り付ける。
モモ肉がある場合は、「ムネモモミックス」した商品を作ることも面白い。
鴨鍋は醤油ベースのだしを使用することが多いが、濃縮スープの個包装を同梱したり、鴨鍋のたれを関連販売すると良い。

【ミート惣菜】

黒毛和牛ローストビーフ寿司 880円/1P

黒毛和牛バラ肉を使用したローストビーフをシャリに巻いたローストビーフ寿司。
大葉を間に挟み、少しだけいくらを散らすことで高級感が出るだけで無く、高く販売することが出来る。外食の肉割烹では定番となっている肉寿司であるが、量販店では認定生食用食肉取扱者や生食ルームでの加工が必要となるため、ハードルはあるものの、特に地域的に所得が高いエリアでは購入の可能性の高い商品である。
トレーは黒金の高級感のある蓋付きトレーを使用する。
たれはローストビーフソース、レホールを入れる。トレー内にたれや調味料を同梱する場合は、ラベルシールにたれの原材料表示は別途表示、もしくは、たれの原材料表示もラベルシールに記載する必要がある。
トッピングでは、今回いくらを散らしているが、キャビアやトリュフなども外食の肉割烹では定番となり、SNSで広く一般的になっている。購入した消費者が、SNSにアップすることも想定した、綺麗な商品化が鍵となる。

バレンタイン用手ごねハンバーグ

2023年2月14日バレンタインデーは火曜日でウィークデーである。
依然としてコロナ感染者は多いものの、行動制限などは比較的緩和されているため、外食ディナーの選択肢は昨年よりは多くなると想定される。
しかしながら、ウィークデーということもあり、比較的家族やパートナーと過ごす時間を大切にする生活者も多い曜日周りのため、バレンタインの訴求はしっかりと打ち出していきたい。
バレンタインと言えば、チョコを渡す習慣が日本ではあるため、ワインと一緒に楽しむ大人の夜、また、ファミリーは愛情を込めた洋食ディナーを想定して、メニュー構成を考える。

和牛俵型手ごねハンバーグ2個セット 1280円/300g

ワインに合うディナー、ファミリーで食べる夕食も含めてハンバーグステーキは最適なメニューである。
そこで、手ごねハンバーグを俵型にした、外食店でも人気の俵型ハンバーグを提案する。お肉は、高級感の出る和牛、安価な輸入牛など多くのグレードで作ることで幅広い層へ拡販できる。
スライスの端材もハンバーグに混ぜ込んで、しっかりと利益商材になるよう取り組みたい。素材によって、細引き、粗挽きと食感や味を楽しめるように調整出来るのも、インストアでの商品化の醍醐味である。
黒毛和牛のトリミングした脂肪を少し混ぜて、歩留率を上げることもポイントとなる。和牛100%であれば、細引きでハンバーグに仕上げる。あか牛など赤身率の高い牛出あれば、10%程度脂肪を混ぜてあか牛100%ハンバーグとして販売出来る。
国産牛や輸入牛を使用する場合は、牛100%ハンバーグが価格的に高くなると感じれば、豚肉との合挽にしてハンバーグを作る。「牛:豚=7:3がハンバーグの黄金比」と言われている。輸入牛であれば、和牛脂入りハンバーグなどもおいしいハンバーグとして仕上がる。
バレンタインのハンバーグはハート型というのも売場が華やかになるため、アイキャッチ商品として品揃えしておく。

押さえておきたい最新動向「逼迫の鶏肉」

鶏肉が鳥インフルエンザのために逼迫している。量販店で販売されているブロイラーと呼ばれる鶏肉は、約7週間(45日~55日程度)で出荷される。2ヶ月あれば回復すると勘違いしている方も多いが、ブロイラーを産むための親鳥(PS)やさらにその親である原種鶏(GP)も同じ鶏であるため、簡単に回復するわけではない。
2022年10月末から鳥インフルエンザが猛威を振るい、11月25日現在防疫措置対象が、11都道府県17事例(20農場3施設)で約289万羽となっている。例年よりも、早い段階で鳥インフルエンザウイルスが野鳥の死骸や糞から検出されており、農水省からも農場防疫対策の徹底の通達が出ている。

鳥インフルエンザについて詳しい情報は、農水省ホームページ(https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/know.html)を参照していただければ良いが、日本ではこれまで、鶏肉や鶏卵を食べて、鳥インフルエンザウイルスに感染した例は報告されていない。また、鳥インフルエンザウイルスは加熱すれば感染症が無くなるため、万一食品中にウイルスがあったとしても、食品を十分に加熱して(食品全体が70度以上)食べれば感染の心配はない。
秋から冬にかけては、養鶏場の視察などが防疫の観点から行なっていない農場がほとんどであるのは、このようなウイルスの持ち込みを最大限減らすためである。
十分に注意をしていても、野鳥や渡り鳥などを媒介にして、鳥インフルエンザの影響が出てしまう。

サスティナブルな畜産業界の将来を考えると、定期定量が調達しやすい鶏肉だからといって、今までのように安売りするのではなく、付加価値を付けた販売方法を検討する必要がある。

銘柄鶏ムネ肉焼きつくね用 358円/180g

居酒屋や焼き鳥屋では定番となっている、つくねを鶏肉の付加価値商品として提案する。
冬場につみれを店内で商品化している企業は多く、そのつみれをハンバーグ型にして大葉を巻き付ければ簡単につくねとして商品化が出来る。
今までの商品の延長線上で出来る、簡単オペレーションである。
トッピング用の卵黄は、業務用の殺菌された凍結卵黄が販売されているため、リスクのある生卵を使用しないことがポイントである。トッピングとしては、卵黄以外にも照り焼きのたれや明太マヨなども、居酒屋メニューとして認知度が高く人気商品である。
ムネ肉を100g48円で安売りすることも売場活性につながるが、付加価値を高めた販売方法も合わせて考える必要がある。
この冬のように数量がそろえられない時に、どうしようもない生産者にそろえられないことをクレームするのでは無く、限られた商品で別の利益確保の方法で、生産者から販売者までタッグを組んで販売してもらいたい。
最終的に消費者である生活者が求めているものは、安い商品ばかりではなく、「食べる幸せ」であったり、食に対する「価値」であると意識してもらいたい。

量販店鎖国時代の終焉

今まで、量販店では店内写真撮影禁止などで、情報の拡散を恐れた鎖国の時代であった。
しかし、スマホ社会となり、SNSを通して消費者が店を紹介して客数が増える時代となっている。
国内外で、SNS映えを狙った売場作りは、むしろ店内スタッフがどんどん撮影してくださいとアピールする時代となっているのである。
中小のスーパーではスタッフが、SNSで商品の発信をしているのも、現代ならではの販促と言える。
消費者も、商品化が美しく、接客が良ければ、積極的に拡散してくれるし、対応があまりにも酷ければ炎上もする。まさに、誠実に商売をしなければ生き残れない時代となっている。
そこには、消費者の価値が単純に価格だけでなくなっていることを意味している。
しかし、量販店側は未だに価格だけに価値があると信じている。
そのため、今回の鳥インフルエンザのように、自然の猛威が振るったときにも、商品が無ければ対応できないという事態になってしまっている。価格訴求のみの特売は商品が揃わなければ売上が作れないからである。

今回は、鳥インフルエンザの影響で、国内鶏の調達が著しく低下し、新型コロナの影響で輸入鶏の調達も不安定となり、ダブルパンチを食らった精肉となってしまった。
しかし、エシカル消費の現代では、確かに価格訴求も必要であるが、「倫理的な人や社会、環境に配慮した消費行動」を取るようになっている。
近い将来、価格訴求だけで環境に配慮していない企業は、社会から淘汰されることも起こるかもしれない。
激動の環境変化の中、生き残りをかけた精肉維新が今始まろうとしている。