3月に売込むこの商品
卒業、年度末など日本では年度が変わる最後の月となる。
地域の幼稚園や学校の行事を知ることで、ハレの日メニューの売り逃しのないように、事前準備が大切な月となる。
幼稚園の卒園式には、子どもの好きな唐揚げやハンバーグなど、小中高になると、ステーキなど少し高いハレの日メニューを提案する。
3月後半は、新年度に備えて、引っ越しや新たな職場での準備などバタバタすることも多いため、簡便メニューやミート惣菜メニューを充実させることで、売上を確保していくことが出来るようになる。
【牛肉】
外気温がまだ上がっていない春先は、焼肉需要が高くないため、バラ部位は焼肉への商品化ではなく、スライスして牛丼用で展開すると良い。
大手牛丼チェーンは、ショートプレートを使用して牛丼を作っている。バラ肉の脂肪の旨さなども調理後のうま味に溶け込むため、家庭での調理もバラ肉を使用することで、本格的な牛丼を作ることが出来る。牛丼チェーンのショートプレートのスライス厚は1.3mm。バラ肉が絶妙に美味しい厚みである。小袋の牛丼のタレを添付して、牛切り落しと一緒に商品化する。紅ショウガや玉葱などを関連販売すると、牛丼をやってみたくなる消費行動が起こる。
牛丼のタレなしの切り落しも一緒に販売し、家庭にあるすき焼きのタレや自家製調合の牛丼のタレで楽しむ消費者にも対応すると良い。
【豚肉】
国産豚ロースを使用した厚切りトンテキ用を販売する。厚みは3cmで迫力のある商品。
豚ロースのリブ側を使用して商品化する
。スジがあるカブリ側をグローブのように2~3cmほどの切れ込みを入れる。このグローブカットをすることで、火の通りが遅い脂肪部分にもしっかりと火が通り、脂肪の甘さが際立つようになる。
B級グルメがブームとなったときに四日市名物のトンテキが一気に有名になった。
その後、外食店で広く展開されるようになり、認知度は高くなった。
古くは戦後間もない頃から三重県四日市市で労働者のスタミナ料理として愛されてきたローカルフードであるが、そのトンテキに、再び火がつき始めている。
10年近く前のトンテキブームの頃には、市販の「とんてきのタレ」などはほとんど販売されていなかったが、今回は市販のタレなども増えており、関連販売しやすくなった点が、量販店でも販売するきっかけとなっている。
【鶏肉】
国産鶏肉焼鳥盛り合わせの冷凍真空パック。
昨年需要が高まり、工場での生産が追いつかなくなるほど、人気が出ている商品である。2023年は冷凍コーナー定番商品として品揃え必須である。串刺し焼鳥は、以前、タイや中国の輸入物が多かったが、国内製造が出来る工場が出来てから、国産鶏肉を使用して少し高め設定の価格でも売れている。
冷凍真空パックのため、購入してそのまま家庭の冷凍庫で保管も出来る優れものである。
冷凍商品は、肉がパサパサで冷凍焼けしている印象があるかもしれないが、その印象がある人は、随分時代が乗り遅れている。
かつて冷凍庫にそのまま入れて緩慢凍結していたため、細胞壁が壊れてドリップが多く出たりしていた。しかし、エアーブラスト方式(空気凍結)だけでなく、リキッド方式(液体凍結)やプロトン凍結(電磁波冷風凍結)など様々な急速冷凍の技術が進歩している。刺身を凍結して解凍しても、生の刺身と遜色ない味が出せる技術である。
【簡便商品】
国産豚肉肩肉を使用した焼肉を提案する。
今まで、バラや肩ロースを使用した焼肉が一般的であったが、肩肉は味があって美味しいことや、スライサーで商品化出来るメリットがあり、ふぞろいの焼肉には最適な部位である。脂肪のトリミングは、切り落しを作るときよりも、やや多めに残すことで、美味しい焼肉になる。
3mm厚、脂肪5mmアンダーを目安に商品化すると良い。味付けは、人気のガーリックペッパー焼や山賊のタレ、レモン味など、定番の味から、新フレイバーまで水平展開が可能となる。
トレーは高蓋のトレーを使用すると、立体的になり、ボリューム感を出すことが出来る。売場での陳列もインパクトが出る。
陳列場所は高さを出しても影響の出ない、平台がオススメである。
ミート惣菜を売り逃さないブランディング
売り手もミート惣菜と惣菜の線引きが難しい畜肉惣菜。
当然、消費者は精肉の惣菜かデリカの惣菜かは知るよしも無く、どちらでも良い話である。
ミート惣菜の方が比較的後発である企業が多く、精肉部分に惣菜加工スペースがリニューアルとともに出来てきた。
精肉のミート惣菜は、お肉に特化した惣菜であるが、惣菜とのくくりは徐々に薄れており、きっちりと店舗内で話されていない企業は、ほぼ似たような品揃えとなっていたりする。
ミート惣菜が売れないと思っている精肉は、惣菜と同じような品揃えで、惣菜よりも肉肉しい商品となっていたり、価格が高かったり様々である。
惣菜があるにも関わらず、あえて精肉で惣菜を買う購買動機は何かというと、惣菜よりもお肉が美味しくて価値があるかどうか、満足できるかどうかではないだろうか。
ポイント① ノンブランドのお肉を使用している惣菜とは一線を画する、精肉で扱うブランド肉を使用した商品であること。
ポイント② 家庭で調理するのが難しい商品であるかどうかである。
ポイント③ 調理は惣菜よりも研究して美味しく仕上げる!
半身揚げは比較的大きなフライヤーが無ければ調理する事が難しい。
油調時間は骨周りまで火が通った状態で、揚げすぎていない調理時間を研究することが大切である。(調理前の商品温度や作業場温度、フライヤーの設定温度によって、時間が変わるので、ここでは記載しない。)精肉で販売している鶏肉を使用することで、消費者のお肉に対する安心感が増す。しっとりとジューシーに仕上げることがポイントとなる。
注意点としては、店頭で数時間販売した状態でもパサパサになること無く、ジューシーさが保たれているかである。
スチコンの場合も含めて、加熱時間はできたてでは無く、出来た状態から数時間経過した時に、美味しく食べることが出来る化である。
さらによくするには、その状態から電子レンジで再加熱したときに美味しく食べることが出来るかどうかに掛かっている。家に帰ってからのレンジ加熱で美味しくなければ、リピート商品ともならない。
「ディスカウント販売の終焉」
安い日本と先進国の中で揶揄されるほど、日本の物価は安い。日本で暮らしていると全く感じる事がなく、むしろ物価が高くなりお肉が買えないという風に感じる消費者が増えている。
一方、世界全体の食肉需要は、現在も増加傾向で推移している。日本の人口が減少に転じているが、世界人口は増加していることはニュースでも取り上げられているのが、その一因である。
世界全体の食肉需要を見ると、2024年には「家きん肉」が1億3,300万トンと最も需要が多くなり、次に「豚肉」が1億2,800万トン、「牛肉」が7,500万トン、必要になると、OECD-FAOの予測が出ている。
注目すべき点は、直近20年で「家きん(ほとんどが鶏肉)」の需要が倍増していることにある。
出典:農林水産省WEB「(1)世界の食料の需給動向と我が国の農産物貿易 イ 食料需給をめぐる今後の見通し」
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h27/h27_h/trend/part1/chap1/c1_2_01_2.html
今後も世界人口は増加し続け、特に鶏肉の需要が高い開発途上国の人口の増加率が高いことを想像すると、より一層、鶏肉の需要は高くなると考えられる。
現在、海外から輸入している鶏肉の多くは、タイやブラジルである。近い将来日本以外でも需要が高まることにより、鶏肉の価格は上昇、日本は牛肉や豚肉同様に鶏肉も他国に買い負けをして仕入れが困難になると想定し始めなくてはならない。
特に、鶏肉は手頃な価格、健康的なイメージ、低脂肪、宗教的問題の少なさ等のプラス要因により、先進国だけでなく、開発途上国でも増加が見込まれる。
新型コロナウイルスによって、一時期輸入鶏肉の入手が難しくなった時期があった。
外食産業も含めて、鶏肉が逼迫し国産鶏肉に重要が集まった。2022年冬に猛威を振るった鳥インフルエンザ流行時には、逆に国産鶏肉が不足し、定番で販売する鶏肉を調達することすら困難になった。
一時的な需給状態とはいえ、今までのように、鶏肉を安売りして販売出来る状況ではなかったことは言うまでも無い。
これからの外部環境を想像すると、輸入鶏肉に関しては、短期的には困ること無く輸入は出来るものの、中長期では、価格の上昇、仕入れの問題も課題となると予想される。
国内鶏肉は、鳥インフルによる影響など、季節要因で増減するものの、提携農家や様々な仕入れ先との良好な関係作り、定期的な仕入れを行なっておくことが必要となる。
SDGsの観点からも、店舗の近隣農家からも仕入れを行ない、社会への貢献という課題にも同時に取り組み始めることが望ましい。
ただし、生産量の限られた近隣農家の鶏肉は、特売だからといって、急に増羽出来ない。つまり、今までのようなブロイラーの特売での販売方法では、物量が確保出来ない。
エシカル消費が謳われる近年、無理なディスカウントは消費者ニーズとは逆行するということである。
適正な価格で、近隣農家の鶏肉の価値を売場で表現する方法で、消費者満足を得なくてはならない。
時代の変化に対応したリスキリング
精肉の商品化は、鶏肉では袋から開けてトレーパックに商品化したり、豚肉や牛肉をトリミングしてスライスして盛り付けるなどが主流で、行なってきた。
しかし、「ミート惣菜」を精肉に取り入れたことにより、フライヤーやスチコン、グリドルなどの惣菜で使用していた調理機材を使えるようにならなくてはいけなくなった。
今までのノウハウだけではなく、新しく求められる技能や技術を身につけていく必要がある時代となってきた。
Z世代が社会進出してきた現在、今までのように、職人や先輩の背中を見て育てたり、一生懸命頑張ってお金を稼ぐという感覚は薄くなった。
ドラマや映画もインターネットで1.5倍速で観たり、ニュースなども、まとめサイトで情報を一度に得るという手法で育ってきている。
いわゆる、「タイパ(タイムパフォーマンス)」を意識した情報収集である。
また、働くコトへの関心は、社会貢献という部分に意識が向いている。
同じ畜肉を販売するにしても、どのような環境で育ったのか、循環型農法で育てられた商品であるかなど、切り口が変わってきている。
その面でも、考え方の一新をバイヤークラス、経営層も行なっていく必要があることに着目しなければならない。
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