4月に売込むこの商品

新学期や新年度、新しい生活が始まり新規一転する春は、精肉売場も、気分一新でレイアウト変更をすると良い。
一般的に春夏、秋冬で焼肉売場や鍋売場などを設置することや、模様替えすることが多いが、期の変わり目にも変化が見られると消費者としても、新たな気分で買い物をすることが出来る。
特に、4月は新たにお弁当や朝食、夕食を自分で作るなど、意識の変化が大きく変わるタイミングのため、そこに合わせた商品提供、コト販促なども行なうと良い。
また、春先から花見や少しずつ外出する機会も増え、4月月末からゴールデンウィークに向けたアウトドア提案も、少しずつ行なっていくコトが重要である。
アウトドア用の焼肉商材も顔出しして、春夏商戦を強化していく。

【牛肉】

春先から徐々にアウトドアでも使える「焼肉商材」の展開を強化していく。
近年、ソロキャンプなどもSNSで人気が出てきており、夏以外でもアウトドアを楽しむ人が増えている。
カセットボンベや薪を適宜使用して、本格的なキャンプを行なっているが、本格的なBBQというよりも、食べたいものを外で調理しているという印象が強い。
インドアでの焼肉、アウトドアでの焼肉を、誰でも楽しめる商品展開を行なうことで、競合よりも選ばれる店作り、商品作りを行ないたい。

米国産牛ハラミ・タン焼肉コンビ 680円/100g

 焼肉で注文する鉄板メニューである、牛タン、牛ハラミのセット商品。
「牛タ」ンの価格が一時期よりは落ち着いてきているものの、数年前から考えると高騰した状態が続いている。「ハラミ(アウトサイドスカート)」も安くはないが、タンよりは安価に提供出来る。
そこで、タンとハラミを合わせて販売することで、上昇した売価が比較的安く見えるセット販売を行なう。
ハラミを多めに入れると利益がしっかりと残る。
ネギ塩だれを20%かけたものは、原価率を下げるコトが出来る。
タレは味付け商材という意味合いだけでなく、牛肉だと原単価を下げることが出来るため、上手く活用するとよい。
「アウトサイドスカート」を「ハンギングテンダー(サガリ)」に変更して、「サガリ・タン焼肉コンビ」にすると、さらに利益が出やすくなる。
※量販店での表示は法律上、「ハンギングテンダー」は「サガリ」と表示しなければならないため、注意が必要である。

【豚肉】

 お弁当や夕食の一品に使える商材で、購入しやすいのは豚肉である。
豚肉は継続して購入しやすく料理のバリエーションが出しやすい畜種でもある。
特に、お弁当商材としては、加工品が使われやすいが、精肉商品でも焼くだけなど簡単な調理のものであれば活用される。

国産豚バラ野菜巻き(おくら)用 598円/1P

「豚肉の野菜巻き」は以前からも精肉で販売されているが、リバイバル商品で再度注目が集まっている。
冷凍のジャガイモやインゲン、にんじん、アスパラガスが以前は多かったが、最近ではヘルシー志向と言うこともあり、店内加工で生野菜を使用して、オクラなど巻いて商品化が行なわれている。
味付けはシンプルにスパイスで十分なため、小袋のスパイスを添付した商品化としている。
 オクラは特に女性に人気の商品で、豚バラを食べる背徳感をオクラが相殺してくれている。
オクラの星形の断面が見えることも、なぜか食欲をそそらせる一工夫である。

国産豚バラ野菜巻き(玉葱、なす、トマト、大葉)用 1000円/1P

野菜巻きは、単品での訴求だけでなく複数野菜のセット商品も人気である。
トマト、なすは豚バラスライスを巻き付ける従来のタイプでの商品化を行なうが、玉葱は輪切りの1つずつに豚バラスライスを巻き付けていく。
大葉はロースステーキタイプの商品化を行なうことで、見た目の異なる野菜巻きを作ることが出来る。

 家庭でも作れるような一品であるが、家庭のまな板を豚の脂肪で汚したくないなど、消費者ニーズと相まって、売上を伸ばしている。
また、冷凍の野菜巻きと異なり手作り感が出ていることも、主婦のニーズをがっちりと捉えている。
メリットも大きいが、手間暇が、他の商品に比べるとかかってしまい、オペレーションのデメリットは否めない。
また、原材料表示も一括表示に入れる必要があるため、最初の一歩を踏み出すにはハードルが高い。しかしながら、ローカライズされた昨今の地域密着型の売場作りを想像すると、手の空いた時間に、ファン作りを行なう姿勢は商品に見せると努力が必要である。

【ローストビーフ】

「ローストビーフ進化論」で様々な進化を遂げている「ローストビーフ・シリーズ」である。

ベビーリーフのローストビーフサラダ 498円/1P

 ターゲットを女性に絞り、動物性たんぱく質を同時に摂取することが出来る商品。
サラダの野菜は何でもよいと言うことでは無く、女性の志向に合わせてベビーリーフを使った商品化がポイント。商品設計時点で、ターゲティングを明確にすることで、今まで曖昧であった、
「ローストビーフサラダ」に結着をつけた形である。
購入者は若いビジネスパーソンを想定したことで、商品の中身がより具体的に絞られた。
ローストビーフは、サラダとのバランスを考え、パサつき感や歯ごたえが出ないよう極力薄スライスで商品化。ベビーリーフを巻いて食べることが出来るように、スライスは広げて乗せている。
ドレッシングは店舗で様々な小袋展開していれば、同梱の必要は無い。

商品化での重要なポイントは、商品設計時にどのような消費者、生活者が購入し食べるかを想定することである。
ペルソナを設定することで、具体的にどのような食材やスライス厚、量目が良いかなど、考えながら商品設計することができるようになる。

進化形簡便味付け商品

タレ漬け商品は、焼いて一品完成の時代から、調理して混ぜる系へと進化を遂げている。
しかも、先々で水平展開して、カテゴリ化出来る予感のする混ぜる系味付け商品である。

米国産牛豚バラ味付け肉 798円/400g

 米国産牛ショートプレートと豚シートベリーを一緒にスライスし、ガーリックソース、コーンをトッピングして商品化する。
牛肉単品での商品化は今までも販売していたが、牛豚ミックススライスでの商品化も行なう。
牛肉のみスライスした場合よりも、価格面で安く提供することが可能となる。
輸入牛の相場が高く、牛肉単品で商品化していると、値入を下げるか、パック単価を上げる必要がある。その部分を、豚肉を混ぜることで回避していく。

 今までのタレ漬け商材は、焼いて一品を完成させるタイプのものが多く、もちろん、この商品も焼いてそのまま食べることは出来る。
商品を焼いたフライパンに、ご飯を入れるとガーリックビーフライスに仕上がる。
味付け焼肉から主食の炭水化物を作る素材、調理素材の一部を販売するという、簡便メニューの一部の販売というカテゴリになる。
このカテゴリは、今までの味付け商材の発想から一歩抜きに出た商品化である。
日本ハムの「中華銘菜」や味の素の「Cook Do」と同じように、家庭で出せない味やもっとおいしく夕食メニューを作ることを助けるカテゴリに近い。
「進化形簡便商品」である。

進化しているのは簡便部分だけではない。
牛豚ミックスでの商品化は、味付け商材だけで無く、切り落し商材や小間切れでも商品化可能である。牛肉を使用した商品で、売単価を下げる一つの手段として今後活用出来る。牛豚を切り落しで一緒に商品化することに抵抗がある方もいるかもしれないが、すでに牛豚焼肉セットや牛豚合挽ミンチでミックスした商品は精肉に存在している。
表示に関しては、比率の多い順に記載する必要があるが、今後の精肉の商品に風穴を開ける手段となりそうである。

「Z世代 が求めるタイパを攻める」

「タイムパフォーマンス」略して「タイパ」という消費行動に注目が集まっている。
コストパフォーマンスをコスパという費用対効果に対して、タイパは時間対効果ということである。
わかりやすく言うと、動画の視聴速度を1.5倍速で見ることが最適と感じ、より多くの情報を短時間で得る、まさに時間対効果、時間効率である。
実は以前から、この消費行動は存在しており、それを解消する商品として、野菜入りキット商品などの時短商品や味付け商材の簡便メニューと言った商材がある。
ターゲットは、共働きで、料理にかける時間が多くとれないパーソンを想定している。

Z世代のタイパは、時間に追われる時短型ではなく、今すぐに楽しみたい、待ちたくない、と言った効率性を追求した効率型と考えられている。
Z世代はデジタルネイティブな部分があり、日常的に効率的にスマホやタブレットで情報を即座に入手できる環境から、そのような消費行動を行なっていると思われる。
「Z世代向け」の商品としては、「ミート惣菜」や、「レンジ対応冷凍一品料理」などがある。
すぐに食べたい消費行動は、テイクアウトや宅配でも需要があることは周知の事実であるが、それを一気に浸透させることとなったのが、奇しくも新型コロナであった。

タイパ商品の代表格としては、ミート惣菜でローストビーフやローストポークと言った、即食商品である。調理時間を短縮してそのまま食べることが出来る上に、美味しいのは当たり前という一石二鳥。さらに、ボリューム感とコスパも兼ね備えた商品であることが売れる鍵となる。

ローストビーフとローストポークの満足セット 598円/P

ローストビーフとローストポークが入っている満足感は、単品商品よりも高くなり、購入につながる。
注意が必要な部分がある。

  1. 購入層が、Z世代よりも高い場合:囲い込みを行ない、リピートにつなげていくことで、売上を定着化させていく。今までの販売戦略で、顧客満足を高めていく。
  2. 購入層が、Z世代の場合:一つの商品に対するこだわりや執着心が低く、商品をリピートしてもらうのではなく、似たような、別の商品を定期的に改廃し、いろいろ楽しみたいという消費行動を満足させる必要がある。

Z世代が社会進出をはじめているため、新たな消費行動を理解し無ければならない。新しいタイパ志向の消費者への対応は、今後の精肉売場にも大きく影響すると予想される。

効率重視しながらも地域に密着

日本の所得が二極化し、比較的所得が少ない層が人口の過半数を占めているのは、テレビやニュースでも知っての通りである。そのため、家族の場合は共働き、単身であっても仕事はしているため、コスパとタイパを兼ね備えた商品が必要となることは容易に理解できる。
いずれも、効率を考えた消費行動であるため、ターゲットがどのような層であるかを理解した上で、売場作りを考えていく必要がある。
人口が顕著に減少している地方では、特に商品のターゲティングが明確に示されていないと、ロス率が上がる。パック重量やパック価格などは、全店同じ設定、売場も同じ時代ではなく、世帯構成なども考えた売場作り、商品化を行なっていかなくてはならない。
働き方改革や人が集まりにくい環境下、企業もコスパとタイパを生かした売場作りを実践したい